「夫がずっと家にいると疲れる」はなぜ?|専門家に聞く「疲労の正体」vol.9

どうして人間は疲れるのか? 頑張る男子くすぶりくんの漫画と疲労の専門家・梶本先生の解説をテーマごとに読めば、謎が解ける! 今回は、「ストレスと疲労の関係」について。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/沼田光太郎

初出『Tarzan』No.797・2020年10月8日発売

梶本修身
(イラスト左)梶本修身先生/東京疲労・睡眠クリニック院長。元大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。疲労研究の第一人者として多数の著書やテレビなどのメディアで情報を発信。
(イラスト右)働き盛りの33歳・くすぶりくん/本名は、クスブリヒカル。仕事に追われながら、日々起こるささいなことにいちいち反応し、ヘルメットから煙をプスプスと出してくすぶることがクセ。
専門家に聞く「疲労の正体」|人は“アウェイ”で疲れる

アウェイのストレス環境で自律神経が疲弊。

くすぶりくん(以下:く) とまあ、今回は姉の話なんですけど。先生、ストレスと疲労って関係あるんでしょうか?

梶本修身先生(以下:梶) ストレスは自律神経を疲弊させます。自律神経には交感神経副交感神経の2種類がありますが、ストレス時は常に交感神経を昂らせている状態なんです。

く 交感神経と副交感神経がバランスよく働いていると疲れにくいんですね。じゃあ、姉の場合、もっと副交感神経を働かせるようにすればいいんだ。

梶 それが難しいんです。よく交感神経をアクセル、副交感神経をブレーキといいますが、アクセルのペダルはあってもブレーキペダルはないんです。自律神経のトータルのパワーは決まっていて、交感神経のペダルの踏み具合で副交感神経のパワーが決まるんですよ。

く 交感神経の働きを抑えるってことですね。どうすればいいんでしょう。

梶 安心できる環境では交感神経の働きが抑制されて副交感神経が優位になります。

く え、ってことは? 姉は自宅にいてストレスが溜まってるわけだから…自宅が安心できる環境じゃないってことですか。

梶 その可能性はありますね。

く でも、姉夫婦は仲がいいんですよ。

梶 家族といえども、ずっと一緒にいたらストレスになるかもしれないですね。ホームとアウェイという考え方でいうと、アウェイの環境では交感神経が働きますから。

専門家に聞く「疲労の正体」|人は“アウェイ”で疲れる

く 自宅がホームじゃなくてアウェイ??

梶 家族がホームとは限りません。リモートワークや自粛モードで夫と子どもが終始家にいる。そのことで奥さんの生活リズムが狂って、うつになる人も増えています。

く 確かに。姉ちゃ…姉は旦那が会社に行ってるときはサンバのオンラインレッスンにドハマリしてるって言ってました。仕事してる旦那の横で、さすがにそれできないよな〜。

梶 今まで一人の空間がホームだったのに、夫がいつもそこにいることでアウェイの状況になっているんです。ホームというのは自分にとって居心地のいいスペースを作るということ。それは安全で安心で快適な場所です。夫がいることで安全かもしれないけれど安心と快適がないんです。

く うーむ。姉ちゃんのサンバタイムのために、ときどき義兄さんを釣りにでも誘い出すか。