免疫力をアップさせる。1日の生活習慣シュミレーション【夜編】

小さな正しい習慣を毎日やり続けることで、免疫パワーは蓄えられる。24時間、免疫に優しい生活を始めよう。

取材・文/井上健二 イラストレーション/泰間敬視

初出『Tarzan』No.788・2020年5月28日発売

眠りで免疫強化。アクティブからリラックスモードへ。

一日の生活で何より重視したいのはメリハリ。

夕方までは極力アクティブに動き、日が落ちたら照明を落とした環境でのんびり穏やかに過ごす。これが明暗に合わせた体内時計のサイクルに沿った暮らしで、自然免疫は高まりやすい。

ゆったりリラックスできたら、自律神経が交感神経から副交感神経優位へと切り替わる。副交感神経がオンになると、免疫細胞がパトロールモードになり、リンパ節を出て体内を巡り、外敵や感染した細胞を攻撃してくれる。

そして時間をかけて入眠の準備をして、質の高い眠りへ導こう。

「睡眠時間をなるべく長く確保し、血管を緩める時間を長く取るほど、毛細血管は増えやすくなります」


【19:20】牛肉、牡蠣など亜鉛と鉄分が豊富な食材を夕飯に取り入れる。

ミネラルも免疫と関わる。亜鉛は免疫細胞の新陳代謝をサポートし、鉄分は酸素を細胞に運ぶ手助けをしてくれる。牛肉には亜鉛と鉄分、牡蠣には亜鉛が豊富。多彩な食材でミネラルを補おう。

【20:00】お笑い番組で涙が出るほど笑う。

笑うと免疫力がアップする

笑いは身近なようで案外奥深く、最新の研究では笑いで免疫力が上がるというリポートもある。2018年、大阪国際がん研究センターは、落語や漫才などを鑑賞したがん患者全体で、免疫細胞の増加傾向が見受けられたと報告している。

免疫細胞の数をただカウントするだけでは免疫力は測れないけれど(「まんがで学ぶ、免疫にまつわる17のキーワード」を参照)、他にも緊張や抑うつ、疲労といった項目で改善が見受けられているから、笑いを日常に取り入れるのはストレスを減らして免疫力を高めるうえで決して無駄ではない。

【20:30】リビングの照明を落とす。

暗くなると朝、脳で作られたセロトニンからメラトニンというホルモンが生じ、体内時計が正確に時を刻むのを助ける。光を浴びるとメラトニンが減るので照明は落として。

【20:35】シャワーではなくぬるめのお湯で浴槽入浴する。

ぬるめの湯で浴槽入浴

40〜41度のぬるめのお湯で額から汗が流れるまで15分ほど浴槽入浴すると、体温が上がって血流も良くなり、免疫細胞が働きやすくなる。シャワーで済ませるのはもったいない。

【21:00】お風呂上がりにリンパマッサージ。

お風呂上がりは免疫細胞を運ぶリンパの流れが良くなっている。そのタイミングでやりたいのがリンパマッサージ。リンパが流れるリンパ管は、血管と違って循環しているわけではなく、手足にある末端のリンパ管は閉じている。

そこから下図の矢印のような流れがあり、最終的に鎖骨下の静脈に合流する。この流れに沿い、手のひらを滑らせながらマッサージしてリンパの流れを促進。リンパ管は皮膚の比較的浅いところを走るので、軽くさするだけで十分効果的。

リンパマッサージのやり方
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①まずは免疫細胞が待機するリンパ節をマッサージ。リンパ節は全身に600〜700もあるが、なかでも重要な耳下、頸部、鎖骨、腋の下、肘、鼠径部、膝裏などをターゲットにする。上から下に向かって順番に3秒(3カウント)ほどかけて両手の指先で優しく数回ずつ押す。

②上のイラストでリンパの流れる方向を確認しながら、手足の末端から近くのリンパ節に向かい、手のひらでリンパを優しく押し流していく。

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③仕上げに、リンパの8割が通るお腹の深いところにある「乳び槽」をマッサージ。手では刺激しにくいので、仰向けで腹式呼吸。乳び槽は横隔膜の近くにあり、腹式呼吸で刺激されやすいのだ。両膝を立てて仰向けになり、両手を胸に添え、ヘソの上に重めの本を置く。吸気に合わせて本が上がり、呼気に合わせて下がるのを確かめながら、鼻からゆっくり息を吸い込み、鼻から息を吐き出す腹式呼吸を2〜3分行う。

【21:30】スマホやパソコンを断ちブルーライトをカット。

スマホやパソコンを操作すると脳が興奮するので寝付きが悪くなるのは当たり前。またスマホなどから出る紫外線に近い光(ブルーライト)は、メラトニンを抑えてしまう。

【21:45】趣味の時間を過ごす。

嫌なことが忘れられる趣味に没頭すると、その間は悩みから自由になれる。仕事や人間関係と関わりなく、一人で楽しめる趣味の時間を過ごすとストレスが軽減。免疫力が高まる。

【22:30】眠る前に白湯を飲む。

睡眠中はどうしても水分を失う。朝イチの水分補給も欠かせないが、眠る前に先手を打って水分を補う心掛けも必要。白湯ならカラダを冷やさず眠りを邪魔しない。

【23:40】10・20呼吸を行う。

現代人は交感神経がいつも優位で、浅い呼吸がクセになりがち。それでは暗くなってもすっと眠れないから、交感神経を副交感神経へ切り替え、深いリラックスモードへ入るべき。

そのために役立つのが10秒(10カウント)で息を吸い、2倍の20秒(20カウント)で息を吐き出す「10・20呼吸」。ポイントは横隔膜をしっかり上下させ、吸う息の2倍かけて息を吐き出すこと。きつく感じるなら6秒吸って12秒吐くから始め、段階的に「10・20呼吸」に近づけよう。

10・20呼吸のやり方
10・20呼吸

①照明を暗く落とし、呼吸のみに集中できる環境を整える。椅子やソファに坐り、両手をヘソの下に重ねる。下腹をゆっくり絞るように、鼻から息を吐き切り、お腹を凹ます。

②下腹と肛門の力を抜いて、ゆっくり10秒(10カウント)数えながら、少しずつ下腹を膨らませて自然に鼻から息を吸っていく。

③首から胸にかけてゆっくり力を抜くと、自然に鼻から息が漏れる。そのまま肛門をやんわり閉じ、ゆっくり20秒(20カウント)数えながら、さらに鼻から息を吐く。下腹に溜まった空気が骨盤の底から押し上げられて、背骨を1つずつ下から上へと上るイメージで下腹を徐々に絞り、最後は息を吐き切る。気持ちが落ち着くまで②③を繰り返す。

【23:50】眠くなってから寝室へ。

眠くなってから寝室へ

読んで字の如く、寝室は眠るためのスペース。眠くもないのにゲームをしたり、スマホを弄ったりするのはルール違反。寝室=眠る場所と脳に刷り込むために眠くなってから寝室へ。