朝一番のストレッチでカラダを目覚めさせる。
冷えを感じたら、20の「温活」でポカポカ。
肩こり・腰痛改善のための「ゆったり太極拳」
寝たままできる。シャキッと目覚めるためのストレッチ10選。
椅子の上でテレビを見ながら脂肪燃焼!
女性の更年期症状を和らげるためにできること。
肩甲骨の「クセ」を正して肩こりを改善!
「大胸筋の中央」を深掘りするトレーニング。
  • 公開:

A判定だからって安心してない? 健康診断「5つの誤解」

毎年おなじみの健康診断についての誤解を、健診のプロである三井記念病院総合健診センター長・石坂裕子先生が解く。

毎年受診するがゆえに、結果に対して間違った思い込みをしたり、面倒なあまり受診すること自体を軽視してはいないだろうか?

なじみ深い健康診断についてのそんな間違いを正してくれるのは、健診のプロである三井記念病院総合健診センター長・石坂裕子先生だ。

健診なんて意味がない、は大間違い。

「なかには健診なんて意味がない、という意見もありますが、それは大間違いです」と言う石坂先生。

「私たち専門家は各項目の検査結果を元に、年齢や被験者の遺伝的背景、生活習慣などさまざまな情報を加味して生活習慣病を中心とした疾患リスクを判断します。皆さんもただ受診するのではなく、ちゃんと意味があるものと捉えて受診してください」

誤解①「A判定が多いから健康体。これで安心!」

健診結果のややこしい数字の横に並ぶAやBの判定。とりあえずAが多いからオレって超健康体!…って、思っていて大丈夫ですよね?

「前提として、健診の全検査項目は生活習慣病のリスクを予測するうえで意味があります」と言う石坂先生。

「それを踏まえてあえて言うなら、20代~30代前半の間は持病や遺伝性の疾患がない限りはA判定が多ければ生活習慣病リスクは少ないと考えていいでしょう。

30代半ばあたりからは、家庭を持って生活環境が変化したり、責任ある仕事を任されるケースが増えていきます。また飲酒の機会や不規則な時間の食事が多くなったり、それに伴い運動習慣が減ることも。健診結果は若い時よりも悪くなるケースが多いと思われます。

そうなると判定だけではなく、血圧や血糖値、尿酸値、脂質代謝などの数値の中身を確認する必要があります」

つまり、判定で一喜一憂していいのは若い間だけなのだ。もちろん若い世代もB判定が多かったり、C判定があれば要注意。

誤解②「気になるのは、体重よりも体脂肪率!」

ダイエッターの間では「大事なのは体重より見た目」が最近のお約束だ。健診結果も体重より体脂肪率を気にする向きも多いのではないか。

「それは違います。体重こそ最初に見てほしい項目なんです。前回、前々回の健診結果と比べて顕著に体重が増えていたら要注意です。カラダの中で明らかに何かが変わったサインだと思ってください」

これには思い当たる節のある方もいるはず。

「次に、体重増に伴い変化した数値を探します。多くの場合、体重が増えると血圧や血糖値、尿酸値、脂質代謝の数値も悪化する傾向があるので覚えておきましょう。それらの増え方次第では数値が正常の範囲でも、生活習慣病の注意喚起を行うケースが多いと思います。

メタボ健診で胴回りのサイズが重視されるのと同じく、通常の健診では体重もさまざまな判断材料のポイントとなります」

もちろん体脂肪率も大事。しかしまずは体重の変化をチェック。体重にこそカラダの変化が表れる。併せて血圧などの数値も確認を!

誤解③「すべての検査結果が気になります」

なかには健診結果が書かれた用紙を受け取ると、その数値を目を皿のようにして細かくチェックしてしまう心配性もいるだろう。しかし専門家でなければそこまで気にする必要はありません、と石坂先生。

「もちろん一つ一つの数値も大事ですが、各々を細かくチェックし、そこに潜んでいるリスクを判断するのは私たち健診医の仕事。

先にも申しました通り、大抵の場合20代~30代半ばまでは判定を、30代半ば~40代は体重増とそれに伴う各検査項目をチェックすれば問題ないでしょう。

40代後半~50代に差し掛かるとさまざまな疾患を自覚し始めたり、健診結果にも表れてくる時期ですので、該当する項目は前回の診断結果とよく見比べ、医師の指摘をよく聞き、今後の方針を話し合うことが必要になってきます」

つまり健診結果は世代ごとにまず見るべき項目があるということ。木を見るより森を見る、の精神で。数字を細かく見る前に世代ごとの結果の見方を知っておこう。

誤解④「健診結果は信用できない!」

趣味は筋トレで、毎年コンテストに向けて体重をコントロール。食事はプロテインを中心にタンパク質と野菜を多めに摂取。

ここまで意識高くやっているから、健診結果にいろいろ書いてあっても気にしない。自分の感覚しか信じられないんだよね。

「時期によって体重の増減が大きかったりプロテインを日常的に摂取していると、腎機能の数値が上がることもありますし、激しいトレーニングを繰り返すことでAST、ALTの値が異常値になったり、尿酸値が上がって高尿酸血症のリスクが高まることも。

どんなに筋トレで鍛えて健康体に見えても、そうしたケースは少なくないため、過信することなく、健診の結果はちゃんとチェックしていただきたいですね」

カラダに対して意識高い系なら、なおさらのこと健診をおろそかにするべからず。異常値が出た場合はプロテインの摂取や筋トレを少し休むよう勧められる可能性もある。

異常値を見逃すべからず。鍛えるのと検査結果は別物、なのだ。

誤解⑤「健診はどこで受けても変わらない!」

転職したばかりで、今年は以前の職場で指定された病院とは違う機関で健診。そこで検査結果を見てみると、ある項目で数値は去年とほぼ同じなのに、なぜかA判定からB判定に…。こんなことってあり?

それが、実際にある話なのだ。実は健診を行う医療機関や健診施設によって、判定の基準となる検査項目の基準値が異なる場合があって、各検査項目の「基準範囲」が機関や施設ごとに異なることがその理由だ。

基準範囲を簡単に説明すると、健康であると判断された人のうち95%の人が示した数値。しかしその基準個体をどこまで含めるかがそれぞれ異なることから、基準値にもバラつきが出てしまうのだとか。

基準範囲を新しくガイドライン化し、全国で共用化する動きもあるというが、まだ実現には至っていない。以前と受診機関が変わって基準値に疑問を抱いても、そういう事情があるということ。あまり気にせぬよう。

取材・文/黒田創 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 取材協力/石坂裕子(三井記念病院総合健診センター長)

初出『Tarzan』No.784・2020年3月26日発売

Share
Share