「体重増加 = 肥満」は間違い! 自分でできる肥満の判別法を知ろう
取材・文/井上健二 イラストレーション/しりあがり寿 取材協力/菅波孝祥(名古屋大学環境医学研究所教授)
(初出『Tarzan』No.756・2019年1月4日発売)
体重よりも問題。太るとは無駄な体脂肪が溜まること
今頃おそらくあちこちで「寝正月で3kg太ったから、ダイエットしなきゃ!」といった会話が交わされているはずだが、医学的に言うと体重の増加=肥満ではない。肥満とは、体脂肪が過剰に溜まった状態。ダイエットで落とすべきなのは体重ではなく体脂肪量なのである。
とはいえ体脂肪量を直接測るのは難しい。
「電気抵抗で体脂肪率を推定する家庭用の体脂肪計は、個人的な変化を見るにはいいですが、個人差が大きく肥満判定には向かない」(名古屋大学環境医学研究所の菅波孝祥教授)
そこで肥満の判別には身長と体重から求めるBMI(下の公式参照)を使う。
BMIと標準体重の求め方
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)。標準体重=身長(m)×身長(m)×22。身長170cmで体重75kgなら、BMIは75÷1.7÷1.7≒26。BMI25以上なので肥満と判定される。もっとも死亡率が低いのはBMI22。そこから逆算する標準体重が死亡率はいちばん低い。身長170cmなら1.7×1.7×22≒64kg。
日本肥満学会ではBMI25以上を肥満と定義する。これに当てはまると体脂肪の過剰蓄積が疑われ、死亡率は右肩上がりで上昇し続けるからだ。
痩せ過ぎも不健康なのでBMI18.5以上〜25未満に収めるべき。ベストなのは、身長から逆算してBMI22の標準体重を目指すこと。統計上、BMI22のときがいちばん病気に罹りにくいのだ(下グラフ)。
体重を落とそうと躍起になった挙げ句、無理なダイエットを行うのは愚の骨頂。体脂肪と一緒に筋肉が落ちて代謝が下がり、リバウンドが起こる。だから筋肉量を反映する体脂肪を除いた体重(除脂肪体重)を落とさず、体脂肪量のみを絞るのが理想なのだ。
体脂肪計で体脂肪率が下がっている様子を確認しながら、ダイエット+運動で体重を落とそう。
BMI25以上で死亡率が上がる
BMI25以上が肥満で痩せることが求められるのは、25以上だと死亡率が右肩上がりになるため。一方、痩せ過ぎも太り過ぎと同じように健康リスクがある。死亡率が最も低いのは痩せても太ってもいないBMI22。
教えてくれたひと
菅波孝祥さん(すがなみ・たかよし)/名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野教授。医学博士。基礎研究と臨床研究を繫ぎ、生活習慣病治療に繫がる研究を担う。京都大学医学部卒業。京大、東京医科歯科大学を経て現職。