• パンよりご飯! 朝からタンパク質! 食欲をコントロールする8つのセオリー
FOOD
2019.11.13

パンよりご飯! 朝からタンパク質! 食欲をコントロールする8つのセオリー

犬

放っておけば、どこまでも“食べたい”が亢進する秋。どうしたら食欲をうまく抑えることができるのか。8つの最新理論から、食欲との付き合い方を探ってみよう。

1. ダイエットの潮流は今、脂肪燃焼より食欲の調節だ。

「体脂肪を燃やしましょう」

かつてはダイエットといえば、この謳い文句が主流だった。

ところが、現在はこの考え方が疑問視されている。だって脂肪組織はそもそもエネルギーを蓄積するためにある「臓器」。いったん蓄積されたものをやれ燃やせそれ燃やせ、と言っても無理がある。それよりも食欲を適度にコントロールして余分な体脂肪を溜め込まないようにする方が簡単じゃね? こうした潮流が支持されつつある。

そこで食欲に関わるホルモンを見てみると、なんと食欲増進に働くのはグレリンというホルモンただ1つ。その他はすべて食欲抑制に働く。ってことはグレリンを制すれば食欲を制することができる! というシンプルな事実を頭に入れておこう。

食欲コントロールに関わるホルモンとは?
食欲コントロールに関わるホルモンとは?/食欲に関わるホルモンは消化管や脂肪細胞などからさまざまな種類のものが分泌されている。今のところ分かっている食欲増進ホルモンはグレリンのみ。その他はすべて抑制方向に働く。

2. 朝と昼にごはんを食べると、安定して満腹感をキープできる。

“ニッポン人の魂”的なおセンチ話は置いといて、ごはん食と食欲に関するこんな実験がある。

朝と昼に続けてごはん食(炭水化物60%、タンパク質15%、脂質25%の高糖質食)を食べるグループと、パン(炭水化物25%、タンパク質15%、脂質60%の高脂肪食)を食べるグループを比較すると、前者の方が明らかに食後の満腹感が増すことが分かった。

朝食を欠食して昼にごはんを食べた場合と昼にパンを食べた場合でも、やはりごはんの方が満足感が高い(ごはん食は一般的な比率の食事、パン食は高脂肪食)。つまり、ごはん中心の適正脂肪食の方が満腹感が長続きして次の食事で食欲が暴走するリスクが低い。高脂肪食で満腹感が増すというのは大いなる誤解なのだ。

食欲を満足させるのは高脂肪食よりごはん食
食欲を満足させるのは高脂肪食よりごはん食。/ごはん食は炭水化物が60%、脂質25%、タンパク質15%の比率。パン食は脂質60%、炭水化物25%、タンパク質15%の高脂肪食。カロリーは同じに設定して比較した。
森谷敏夫 糖尿病48: 761-770, 2005

3. そもそも生き物は安静時に食欲を感じるようにできている。

敵もいないし、ここは安全。お腹が減ったし、餌を食べてエネルギーを溜め込むなら今のうち!とばかりに、生き物はグダグダな生活をしているほど必要以上の食欲が湧くものらしい。

それを証明するラットの実験がある。運動するグループとまるで運動しないグループでは当然、後者の方が体重が重い。さらに1時間以内の運動をするグループとまるで運動をしないグループでは、後者の方が1日のエネルギー摂取量が多い。つまり、バクバク食って太るのだ。

1時間以上運動するグループは1日のエネルギー摂取量が増えるが、運動によるエネルギー消費量で相殺されるので体重が変わらない。安静時は食欲が増す一方、動けば食欲に必要以上に振り回されないということだ。

ネズミもヒトも安静時に太りやすい?
ネズミもヒトも安静時に太りやすい?/ストッパーをつけたトレッドミルでネズミを運動させた実験。まったく運動しないグループは最も体重が重い。1時間以上で体重は一定に。5時間以上では疲労でエネルギー摂取量が激減。
Mayer et al., Am. J. Physiol., 177, 544 The American Physiological Society, 1954

4. 男性より女性は運動による食欲コントロールが難しい?

食欲が散らかったり暴走するのは男も女も等しく同じ、というわけではない。実は食欲を増進させるホルモン、グレリンの分泌の仕方には性差がある。

男性と女性の肥満者に運動でエネルギー消費をさせつつ、全体のエネルギー収支をプラマイゼロにした食事をさせた場合と、運動しながら全体のエネルギー収支がややマイナスになる食事をさせた場合を比較した。

男性は前者も後者もグレリンの分泌量に変化はなかった。これに対して女性はどちらもグレリンの分泌量が基準値より増えた。グレリンは本来、運動によって抑制されるが、女性の方がその効果が期待しにくいということ。妊娠・出産のためにエネルギーを確保するためと考えられるが、この性差は見逃せない。

グレリンの分泌量には男女差がある。
グレリンの分泌量には男女差がある。/男性は運動のエネルギー消費と食事のエネルギー補給がマイナス収支となってもグレリンの分泌量は変わらない。女性はグレリンの量が上がるので減量中も食欲が落ちないままだ。
Todd et al. Exerc. Sport Sci. Rev. 38: 25-30, 2010

5. より満腹感が得られるのは、脂質ではなく糖質である。

2番目のキーワードでご紹介したように、脂質の量が一般的なごはん食の方が、高脂質食のパン食よりも満腹感を得ることができる。つまり、人は脂質でお腹いっぱいになるのではないことが分かった。

その逆に、摂取することで明らかに満腹感が得られると分かっている栄養素が糖質だ。血液中の糖質、グルコースと食欲の関係を見てみよう。

グルコースを摂取した後、30分後には食欲を促すグレリンの量が急降下。1時間後には最低レベルまで落ちて、低い状態が摂取後2時間以上続く。それだけお腹いっぱい状態がキープされるのだ。糖質制限の名のもとにごはん抜きの食事を習慣にすると、時を選ばず食欲に振り回されることになる可能性も。

グルコースがグレリンに与える影響
グルコースがグレリンに与える影響/糖質を摂取すると胃からのグレリンの分泌が抑制され、食欲が低下する。糖質の影響を受けないプラセボのグループは、いつまでも食欲が満たされないままというデータが。
Nakagawa E. et al. 2002改変

6. ベジファースト? いいや、プロテインファーストがベター。

過食を防ぐなら、まず野菜から食べよという食べ順メソッドが一時流行した。でも必ずしもこの方法が有効とは限らない。

野菜に含まれる食物繊維が胃に届けられ、胃が伸張する刺激が迷走神経を介して満腹中枢を刺激する。だから、野菜から先に食べるとたくさん食べられないという理屈。ところが胃を切除しても満腹感は得られるので、この説を否定する声もある。

むしろ野菜を先に摂ると、その後に口にする糖質の吸収が抑制されるので、グレリンの量が低下せず食欲も旺盛なまま。なので、糖質同様、グレリンを抑制するタンパク質を先に摂り、次に糖質、最後に胃を膨らませるために野菜を摂るという順番で。ベジファーストより少ない量で満腹感を得られそうだ。

食欲調整のための新たな食べ順のススメ
食欲調整のための新たな食べ順のススメ。/まずはタンパク質を食べてから糖質を摂って血糖値を緩やかに上げ、グレリンの働きを抑えて食欲をなだめる。最後に野菜の繊維を摂って、胃を物理的に満たすという食べ順もありだ。

7. 朝の食欲が子どもたちの体力とメンタルの強さを養う!

早稲田大学の柴田重信教授が行っている東京・港区の食育推進計画に、興味深いデータがある。小・中学生の朝食の実態調査で、肉類、魚、卵、乳製品、大豆製品の5つのタンパク質をどう組み合わせているかを調べたところ、乳製品だけという割合が36%、卵+肉の組み合わせの洋食派が24%、魚+大豆製品の組み合わせの和食派が5%という数値が割り出された。

どんな組み合わせにしろ、朝からタンパク質を摂っているグループは摂らないグループより、総じて成績が良く、体力も高かった。さらに興味深いのは、和食スタイルでタンパク質を摂っている子どもたちは成績、体力、メンタルのいくつかの項目がとくに優れていたこと。子どもは和朝食で育てるべし!

小・中学生の朝食と心身の健康度の関係
小・中学生の朝食と心身の健康度の関係/不安になったりイライラしにくい。普段から疲れにくい。体力に自信もある。勉強が好きで、理解度も高く成績も良好。こうした結果が出た子どもの朝食は和食だった。理由は不明だ。
港区学校教育食育推進計画策定委員会報告書(委員長、柴田重信)2018年度

8. 人は思い込みによって食欲亢進ホルモンを分泌する。

最後にハーバード大学のユニークな実験を紹介しよう。被験者を2つのグループに分け、一つのグループに「高カロリー」というラベルを貼ったミルクシェイクを、もう一方のグループに「低カロリー」のラベルを貼ったミルクシェイクを飲んでもらった。実はどちらも同じ360キロカロリーのドリンク。

そう、これは心理的な思い込みが食欲にどう作用するかという実験。その結果、前者はラベルを眺めているときにグレリンが上昇し、飲んだ後はグレリンが低下して満腹感で満たされた。後者はグレリンの量がほとんど変わらなかったという。

つまり、ダイエット食と謳われた食物で食欲は抑えられない。いっそ最初から大好物を口にした方が食欲は抑えられるかも?

思い込みによるグレリンの分泌量の変化
思い込みによるグレリンの分泌量の変化/偽りのラベルを観察している間、「高カロリー」グループは期待値が高いせいか、グレリンが急上昇。ところが飲んだ後は罪悪感のためかグレリンが急降下。人の思い込みってスゴイ。
Crum, AJ. et al., Health Psychology 2011

取材・文/石飛カノ 取材協力/森谷敏夫(京都大学名誉教授)、柴田重信(早稲田大学理工学術院先進理工学部電気・情報生命工学科教授)

初出『Tarzan』No.776・2019年11月7日発売

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