“隠れ扁平足”に要注意。正しいアーチを取り戻す足裏エクササイズ。

7割が扁平足といわれる現代人。崩れた土踏まずは姿勢や腰痛、膝痛にも直結する。形成外科医・桑原靖先生が教える、正しいアーチを取り戻す足の再生メソッド。

取材・文/井上健二 イラストレーション/仁太郎 取材協力・監修/桑原 靖(足のクリニック表参道院長、形成外科医)

初出『Tarzan』No.910・2025年9月11日発売

教えてくれた人

桑原靖(くわはら・やすし)/足病専門医。足のクリニック表参道院長。埼玉医科大学医学部卒業後、同大病院形成外科で外来医長、フットケア担当医を務めた後、日本では数少ない足専門クリニックを開院。日本フットケア・足病医学会評議員。

“カラダの土台”こと足裏から、歪みのないカラダ作りを!

「カラダのどこかに歪みがあるなら、おそらく土台となる足のどこかに発端がある。足元から整えない限り、歪みのないカラダは手に入りません」(形成外科医の桑原靖医師)

とくに注意すべきは、足裏のアーチである「土踏まず」が崩れること。 足の骨は片足28個。サイズも形も異なる骨が巧みに嚙み合い、足裏に2つのアーチ=土踏まずを描く。

足の複雑で精緻な作りを知る。

足側面

親指側から見た右足のアーチ。甲(舟状骨)を頂点に、指の付け根(中足骨)と踵(踵骨)で強固な三角アーチ(トラス構造)を作っている。5本の指にそれぞれこの三角アーチがあり、中足骨の横断面で半円アーチを描いて連なる。

足真上

右足を真上から見る。足首(足関節)は距腿関節と距骨下関節という2つの組み合わせだが、足には他にもMP関節、リスフラン関節、ショパール関節がある。MP関節は爪先立ちで曲がるところ。リスフラン関節から先が前足部だ。

1つ目は足の甲を頂点に、5本それぞれの指の骨が作る5つの三角アーチ。2つ目は、その三角アーチの断面がドーム状に連なる半円アーチだ。この2大アーチが状況に応じて足の骨格を自在に緩めたり締めたりしているから、バランス良く立ったり、踏ん張ったりできるのだ。

でも、理想の土踏まずの持ち主はわずか。多くはアーチが下がって緩んだままの扁平足だ。靴底の内側が削れていたり、「ズー」「ザー」と地面を擦る音を立てて歩いたりしているなら、扁平足かも。坐って確認するとアーチがあるように見えるのに、立って荷重するとアーチが消える“隠れ扁平足”も多い。

足には主に3つのタイプがある。

理想

扁平足

甲高

桑原先生のクリニックを受診する人の中で適切な足アーチがある理想形は全体の約1割止まり。アーチが下がった扁平足は全体の約7割と大多数を占める。残る2割はアーチが高く、反りすぎている甲高(ハイアーチ)。甲高も着地時の衝撃をうまく受け止められない。

「しかもアーチの下がり具合には左右差があるのが普通なので、余計に土台の歪みが上へ波及してトラブルを起こしやすい。若いうちは股関節の柔軟性が高く、アーチが処理できない衝撃や変形を受け止めますが、加齢で股関節が硬くなると、膝や腰などに足から衝撃や変形が伝わり、歪みや痛みが生じます」

扁平足の多くは生まれつきだが、インソールでアーチを復元すれば、歪みが軽くなり膝痛や腰痛も改善するケースは少なくない。この他、健全な土踏まずと足を保つためのエクササイズにもチャレンジしよう。

靴底の減り方で足のタイプがわかる。

靴底の減り方

歩行時は踵の外側から着地するから、踵のやや外側から靴底が減るのが正常。内側が減るのは扁平足、外側全体が減るのが甲高、中心が減るのは足首が硬く前足荷重がひどいタイプ。減り方の左右非対称は足の左右差を反映。

ヒラメ筋ストレッチ(左右各30秒×2〜3セット)|足首を柔らかくする。

ヒラメ筋ストレッチ

  1. 右膝を床についてしゃがみ、左足を前に出す。
  2. 両手を左膝で重ね、左膝と左爪先をまっすぐ前に向ける。左膝を両腕で抱えながら、上半身を少しずつ前屈して左膝に体重をかける。
  3. 左足の踵を床につけて、左側のふくらはぎをストレッチして30秒キープする。左右を変えて同様に行う。

腓腹筋ストレッチ(左右各60秒キープ×2~3セット)|足首を柔らかくする。

腓腹筋ストレッチ

  1. 壁際に向き合って両足を揃えてまっすぐ立ち、左足を半歩後ろに引く。左膝と左爪先をまっすぐ前に向ける。
  2. 両手を壁につき、右膝を曲げ、左足の踵を床にしっかりつけ、左側のふくらはぎをストレッチして自然に呼吸しながら60秒キープする。左右を変えて同様に行う。

タオルギャザー(左右各60秒×1~2セット)|足指の筋力アップ。

タオルギャザー

  1. 床にフェイスタオルを縦に敷き、椅子に坐って両足でタオルを踏む。
  2. 両膝を腰幅に開いて90度曲げ、両手を太腿の上に置く。
  3. 左足の指の付け根を曲げ伸ばししながら、タオルを手前に引き寄せる。左右を変えて同様に行う。

NG OK

指先だけでの動きにならないように、土踏まずをしっかり大きく使いながらタオルを寄せる。

フロントランジ(左右各5回×2~3セット)|歩幅を広げて足の負担を減らす。

フロントランジ

  1. 両足を揃えてまっすぐ立ち、両腕を胸の前で組む。
  2. 上体をまっすぐにしたまま、左足を大股1歩分前に踏み出し、右膝を床に突き刺すように左膝が90度ほど曲がるまでしゃがむ。左膝を爪先より前に出さず、左膝を内側にも外側にも入れない。
  3. 左足で床を蹴って元に戻る。左右を変えて同様に行う。

腰ひねりストレッチ(左右交互に各15秒×2~3セット)|骨盤の動きを引き出す。

腰ひねりストレッチ

  1. 壁に背を向け、半歩離れてまっすぐ立つ。両肘を曲げ、両手を胸の前で構える。
  2. 腰をひねり、上体を壁に向けて両手で壁をタッチ。自然に呼吸しながら15秒キープ。
  3. 元に戻って左右交互に反復する。腰から下は固定して行う。