万能な植物「ホーリーバジル」は、モダンなサムギョプサルと香り高いバスソルトに。|9月のハーブ・ホーリーバジル

聖なる植物として宗教儀礼や祭祀に世界中で珍重されてきたホーリーバジルは、ゆえに神秘的な印象が先行しているかもしれません。そういったイメージだけではなく、シンプルにハーブとしての魅力も知って欲しいと〈ハーブスタンド〉の平野優太さんは言います。現代のハーブとの付き合い方を提案してもらう連載「ワンモア・ハーブ」第11回は、ホーリーバジルについて。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 料理/阿部匠海

ホーリーバジル

ホーリーバジルは、インドでは「神聖な植物」として愛されているボタニカルです。伝統医学であるアーユルヴェーダにもよく活用されています。植物の中でも特に作用に優れているとされる「アダプトゲンハーブ」のひとつ。心身のバランスを整え、免疫力をサポートすると言われています。

僕はお料理やお茶として活用するのがすごく好きで、特に花穂がついた時期のホーリーバジルを好んで使います。穂紫蘇のように花を外して使うのもおすすめ。甘い香りが非常に良いです。

タイ語ではガパオ/カッパオと呼ばれ、タイ料理のガパオライスは、ホーリーバジルに由来します。肉料理全般と合いますが、甘い香りを活かしお菓子に使うパティシエさんもいますね。生のまま使うと少しスパイシーさやエキゾチックな雰囲気もあり、同時に甘みもある。定番のバジルと同じようにトマトと合わせてももちろん美味しいです。

「ホーリー」と名がつくように、神聖な儀式や行事にも用いられるため、スピリチュアルな印象も強いかもしれません。ですが、それは効能効果も高く特別な植物として珍重されてきたことの裏返し。ぜひ先入観なしに、肉と炒めて食べてみたりお茶を楽しんでみてください。知るほどに、美味しくて万能な植物として、素直に生活に取り入れたくなるはずです。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
サムギョプサル 焼きホーリーバジル

ー材料ー(2人前)

豚バラ肉厚切り 300g
塩、胡椒 少々

コチュジャン 30g
ライム 5g
オイスターソース 5g

ホーリーバジル 葉の部分 40〜50g
オリーブオイル 少々
塩 少々

サンチュ 10枚程度
唐辛子1〜2本 好み
にんにく生 好み
キムチ 好み

ー作り方ー

ホーリーバジルの葉、花穂を茎から外す。

直火にかけ、オリーブオイルで和えながら、少し火を入れる。焦げないように。

コチュジャンに、ライム、オイスターソースを加えて混ぜ、ホーリーバジルの花穂も散らしておく。

塩胡椒した豚バラ肉をフライパンでカリッと焼く。

サンチュに豚バラ肉、ホーリーバジル、コチュジャンなど好みの調味料を乗せて食べる。

タイ料理のイメージの強いホーリーバジルですが、今回は韓国料理に使ってみました。サムギョプサルは、エゴマなどの葉と食べるのが一般的ですが、どうやら今はバジルと一緒に食べるのが流行っているそう。より香りの強いホーリーバジルは、豚肉の脂を中和して、さらに美味しさが増すように思います。生では少し硬く感じるので、直火で炙ってみてください。焦げ付かないように軽くオイルをかけて油の膜でコーティングする一手間を惜しまずに。より香りも立ち、柔らかくなって食べやすくなります。

●「使う」
ホーリーバジルのバスソルト

―材料―

・エプソムソルト 100g
・乾燥ホーリーバジル 大さじ2
・天然精油(バジル系やシトラス系) 1〜2滴(なくてもOK)

入浴剤に使うエプソムソルトを用意する。

ドライのホーリーバジルを砕きながら混ぜる。あまり細かくなりすぎないように。

入浴剤として使われるエプソムソルトに、ドライにしたホーリーバジルを混ぜたもの。すごくナチュラルで優しい入浴剤。なので、多ければ多いほど香りは豊かになります。もしもより強い香りを求めるならば、濃縮された精油を垂らすのもアリです。砕いたハーブがお風呂の中で残留物になりやすいので、パックに入れて使ってみてください。

9月のハーブスタンドの様子

富士山も8月下旬に山閉めを迎え、一足早く秋の気配が濃くなってきました。遅れて顔を出す夏のきのこに続き、秋の果実も熟しはじめています。