「サラダ油」の名前の由来は?身近なアブラの知らない話。

日本生まれの食用油・サラダ油。ゴマ、ナタネ、トウモロコシなどの植物から作られており、動物性の油と違って冷えても固まらず、ドレッシングにも揚げ物にも使える。果たしてどのように生まれたのか。そもそも、サラダ油の「サラダ」って、何?

取材・文/黒田 創 取材協力・資料提供/日清オイリオグループ

初出『Tarzan』No.906・2025年7月3日発売

身近なアブラの知らない話

サラダ油の原料とは?

サラダ油は日本農林規格(JAS)によって規格が定められている。規格に沿った原材料を使い、諸条件を満たし、かつJAS認定工場で作られた物でなければ「サラダ油」は名乗れない。

原材料として認められるのはゴマ、サフラワー、菜種、綿実、大豆、ヒマワリ、トウモロコシ、こめ、ブドウの9種。細かく見ると2種類以上のJAS食用植物油を混合して作る調合サラダ油などの分類がある。また、オリーブオイルは単体だとサラダ油の規格から外れてしまう。

サラダ油の原料

外国にもサラダ油はある?

日本では食用油全般を指すほど馴染みのあるサラダ油だが、海外でもそうなの?

「海外には食文化に応じたさまざまな食用油があります。世界ではパーム油が最も多く使われていますが、欧州ではヒマワリ油も一般的。サラダ油は日本生まれの言葉であり、海外では菜種油のように原料名に“油”をつけて呼ぶことが多いようです」(日清オイリオ・松山綾さん)

油っこくない油が受け入れられた訳。

お馴染みのキャノーラ油も、1992年に最初の商品が登場した時は驚きをもって迎えられた。

「この頃は健康志向の高まりにより、油にネガティブなイメージも持たれていた時代。そんななかで品種改良した菜種、キャノーラ種を使った油を“油っこくない油”として大々的に宣伝し、食品パッケージでは用いられることが少なかった青色を使うなど、画期的な売り方をしました。それが結果的に世間の健康志向とマッチ。今ではスタンダードな食用油になりました」

サラダ油の「サラダ」って?

サラダ油のサラダって?

1920年代、発売当初の《日清サラダ油》と広告。発売当初の容器は瓶や缶だった。サラダ油は日本人の間に浸透し、いまや食用油の代名詞に。

昔の日本では食用油を主に揚げ物に使っていたが、西洋では塩や酢を加えて野菜にかけ、ドレッシング代わりにしていた。国内でもそうした精製度が高く、冷やしても固まらない良質の食用油を1924年に〈日清製油〉(現日清オイリオ)が開発。《日清サラダ油》として販売した。

サラダ油は、まさにサラダにかける油として誕生したのだ。

「サラダ味」の由来はサラダ油?

スナック菓子などでよく目にする「サラダ味」。実はこれもサラダ油に由来するという。

サラダ油が一般家庭で広く使われるようになった1960〜70年代頃、複数のお菓子メーカーがサラダ油で揚げて塩味を付けた商品を“サラダ味”と呼んだのが始まりとされているとか。

サラダ油なくして、日本の食文化なし。

日清サラダ油

《日清サラダ油》販促品として販売されたマヨネーズメーカーの広告。家庭でマヨネーズを作るのも、サラダ油がもたらした日本の食の変化のひとつだろう。

約100年前に生まれたサラダ油は、その後の日本の食生活を変えたと言っても過言ではない。

「サラダ油はそのハイカラな名称もあって、広く受け入れられ人気商品となりました。時を同じくして西洋からさまざまな料理が伝わり、その派生として日本独自の洋食も生まれましたが、そうした料理にサラダ油は不可欠の存在だったはず。いまや料理や嗜好によって食用油を使い分ける時代ですが、その大元にサラダ油があることを知っていただければ幸いです」