居酒屋は焼きおにぎりよりチャーハン。外食で始めるオイルファースト。

油から先に摂るのがオイルファースト的食事の鉄則。どんなシーンの食事でも迷わないよう、オイルリッチな食べ順を提案しよう。今日から始めるべし!

取材・文/井上健二 イラストレーション/岡村亮太 取材協力・監修/河村玲子(管理栄養士)

初出『Tarzan』No.906・2025年7月3日発売

外食で始めるオイルファースト
教えてくれた人

河村玲子(かわむら・れいこ)/1985年、東京都生まれ。メンタル&フィジカルサポートスーパーバイザー。全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会認定パーソナルフィットネストレーナー、管理栄養士。同志社女子大学卒業、大手フィットネスクラブを経て、独立。カナダで管理栄養士トレーナーとして活動し、ニューヨークでピラティスを学ぶ。フィジカルとメンタルに加えて栄養面でも専門的な指導が行える稀有な存在として人気。

最初が肝心!外食では“食べ順”を考える。

主菜や副菜などから血糖値を上げない脂質(オイル)、タンパク質を先に摂り、最後に主食のご飯やパンなどの糖質を控えめに食べる。このルールさえ頭に入れておけば、いつでもどこでもオイルファーストは手軽に行える。

ここではファストフード店、居酒屋、コンビニなど、外食でよく立ち寄る場所でのメニューの選び方、食べ順を考えてみたい。むろん、テイクアウトして食べる「中食」でも、自炊する「内食」でも、考え方はまったく同じである。

裏技的に覚えておきたいのは、ミックスナッツ(アーモンド、クルミ、ヘーゼルナッツ)やカカオ70%以上の高カカオチョコレートの活用術。どちらも低糖質&オイルリッチだから、食事の20〜30分前に摂っておくと、それだけでオイルファーストになる。

とくにサンドイッチのように、主食、主菜、副菜がオールインワンになっている場合、事前の摂取で血糖上昇を抑える効果が期待できる。

基本の考え方。
  1. 低糖質・オイルリッチなアイテム。
    例:ミックスナッツ、高カカオチョコ
  2. 油とタンパク質が多い主菜と副菜。
    例:唐揚げ、ツナサラダ
  3. 最後に糖質。
    例:ご飯半分、パン(小)1個

コンビニは唐揚げからスタート。

コンビニでのオイルファースト

食べる順番。
  1. 唐揚げ
  2. ゴボウサラダ
  3. 茹で卵・納豆
  4. 春雨スープ

コンビニは国民の台所。何でも揃う。

低カロリーな食事が“神”だと盲信していると、おにぎり2個+野菜ジュースといった食事をしかねない。それは確かに低カロリーだが、脂質もタンパク質もロクに摂れない反面、糖質が100g以上も一挙に入って食後高血糖に陥る。反動で血糖値が下がりすぎる血糖値スパイクが起こり、すぐさま空腹に陥る。

血糖値を上げずに食欲を満たすため、レジ横のホットコーナーから唐揚げなどの揚げ物をチョイス。衣の厚みにより糖質量は変わるから、あらかじめネットで調べて、なるべく低糖質なものを買いたい。さらにマヨネーズやオイルで和えたサラダを食べたら、茹で卵や納豆などでタンパク質を上乗せ。

おにぎり1個でも糖質量の上限をオーバーするので、カーボラストで糖質を摂るなら、春雨スープくらいに留めておきたい。

牛丼店はサラダ+ドレッシングで準備運動。

食べる順番。
  1. サラダ(オイル入りドレッシング)
  2. チーズ牛丼(ご飯超少なめ)
  3. お茶

丼物は主食、主菜、副菜の三重奏なうえに、主食のご飯に糖質が多すぎる。デフォルトの丼ご飯だと糖質が1食80gを超えるので、仮にカーボラストにしても血糖値が跳ね上がりやすく、肥満の引き金になりかねない。

ご飯はできる限り少なめにするのが大前提。牛丼の牛肉は脂身が特徴のバラ肉。オイルファースト的には望むところだが、そこへチーズをプラスしたり、肉をマシマシにしたりすると、一層たくさんの脂質とタンパク質が摂取できて血糖値の急激な上昇が避けられる。

そのうえでサラダを追加し、卓上のオイル入りドレッシングを汁だくでかけて食べ終えてから、おもむろに牛丼に取り掛かろう。

味噌汁も欲しくなるが、牛丼自体に塩分が多いのに、そこへしょっぱい味噌汁が加わると、塩分過多で血圧が上がりやすい。無料かつ無糖かつ塩分ゼロの緑茶で我慢。

居酒屋はとりあえず乾杯、からの野菜料理。

居酒屋でのオイルファースト

食べる順番。
  1. ハイボール
  2. ナムル
  3. トマトスライス(マヨネーズ)
  4. アジフライ
  5. 厚揚げ焼き
  6. 焼き鳥(皮、ぼんじり、ももetc.から1本)
  7. チャーハン(シェア)

「とりあえず」の乾杯習慣は、血糖値を抑える。ビールや日本酒のような醸造酒は、お酒自体に糖質が入っているので、糖質を含まないウィスキーのソーダ割りか、焼酎の水割りで乾杯しよう。

前菜は野菜料理から。ゴマ油で和えたナムル、マヨネーズをつけて食べるトマトやタマネギスライスなどをテーブルに並べる。

続いて主菜コーナー。魚介類なら刺し身よりもフライ、豆腐なら冷や奴よりも厚揚げ、焼き鳥なら胸肉やささみよりも皮やぼんじりなどをオーダーする。これで脂質とタンパク質がきちんと摂れる。

お腹に余裕があるなら、しんがりに糖質を。油を含むものの方が血糖値は上がりにくいから、あっさり系の茶そばや焼きおにぎりではなく、油で炒めて作るチャーハンをセレクト。みんなで仲良くシェアして食べよう。

イタリアンのパスタやピザは最後にサーブしてもらう。

イタリアンでのオイルファースト

食べる順番。
  1. スパークリングワイン
  2. エスカベッシュ
  3. カプレーゼ
  4. ミラノ風カツレツ
  5. カルボナーラシェア

休日、朝練後にランニング仲間とイタリアンで優雅にブランチ……なんてときも、オイルファーストを忘れない。

昼飲みが許されるなら、糖質をほとんど含まない辛口のスパークリングワインで乾杯。前述のように、これで血糖上昇を抑制する。

前菜はエスカベッシュ(素揚げした魚の酢漬け)やカプレーゼ(トマトとモッツァレラチーズのサラダ)などなど。カプレーゼにはオリーブオイルをたっぷり回しかけて。主菜は、油もタンパク質も摂れるミラノ風カツレツ、鶏肉とポルチーニのクリーム煮など。

普通は主菜の前に出るパスタやピザは、カーボラストでお終いにサーブしてもらう。パスタなら脂質がしっかり摂れるカルボナーラやボロネーゼ、ピザなら生地が薄いローマ風で4種のチーズを使ったクワトロフロマージュなどを頼んで友人たちと分ける。

焼き肉はやっぱり牛タンから。

食べる順番。
  1. 上牛タン
  2. 豚カルビ
  3. 牛カルビ
  4. チョレギサラダ
  5. クッパ(ご飯シェア)

今日はがっつり肉が喰いたい! そう思い立ったら、近所の焼き肉店へGO。

赤身は脂質が少ないから、脂質をたんまり含む部位をメインにオーダー。上牛タン、牛や豚のカルビ(バラ肉)、上ハラミなどである。一般的には「上」が付く方が、霜降りで脂質リッチなケースが大半。薄切りのカルビはサンチュで巻いて食べ、野菜も忘れずに摂取する。

ホルモン好きなら、マルチョウ(小腸)、ミノ(第1胃)、ギアラ(第4胃)といった脂っこい部位を頼む。いずれも味付けは、甘味料の入ったタレや塩ダレではなく、塩胡椒とレモンでシンプルに。

締めは、クッパかビビンバ。お店によって違いはあれども、冷麺よりご飯モノの方が総じて糖質量は少なめ。それでも1人前を完食すると血糖値は上がりやすいので、2〜3人でシェアして自分には少なめによそおう。

ハンバーガーにかぶりつく前に…。

ハンバーガーショップでのオイルファースト

食べる順番。
  1. サラダ(オイル入りドレッシング)
  2. ダブルチーズバーガー
  3. 無糖ドリンク

主役のハンバーガーは、事前に栄養成分をチェックし、糖質量40g未満のものを。

ただし、ハンバーガーは、サンドイッチや牛丼と同じように、主食(バンズ)+主菜(ビーフパテ)+副菜(野菜)がオールインワンになっている。いきなりかぶりつくと、血糖値は上がりやすくなる。

その前に食べたいのが、サラダ。ランチタイムなら、サラダも選べるお得なセットがある。オイル入りのドレッシングをかけたら、ベジファーストではなくオイルファーストになるのだ。間違ってもフライドポテトを頼まないこと。揚げ物ではあるものの、糖質も劣らず多い。

飲み物は無糖のコーヒー、紅茶、ウーロン茶、ゼロ系コーラなど。野菜ジュースやオレンジジュースはヘルシーそうだが、果糖などの糖質が多いので避けるべき。

ホテルブッフェは洋食系を攻める。

ホテルブッフェでのオイルファースト

食べる順番。
  1. オムレツ(ケチャップなし)+ウインナー
  2. ツナサラダ
  3. ヨーグルト(ジャムなし)
  4. クロワッサン+ブラックコーヒー

好きなものを好きな順番で食べられるブッフェこそ、オイルファーストの楽園。脂質もタンパク質もより摂りやすいから、和食系より洋食系で攻めるのが正解である。

スターターは、たっぷりの卵液とバターで作るオムレツ。中身が指定できるなら、チーズやハムを加えてタンパク質をプラス。サイドには、脂質もタンパク質も多いウインナーを添える。糖質を含むケチャップはパスする。

野菜は葉野菜+オイルドレッシングで摂ってもいいけれど、ツナサラダならタンパク質がさらに増量できる。デザートは糖質が気になるフルーツ入りではなく、無糖のヨーグルトで。糖質まみれのジャムやドライフルーツをトッピングするのはNGだ。

これで満腹なはずだが、まだ食べたいなら糖質少なめ・脂質多めのクロワッサンを1個だけ。食後はブラックコーヒーで決まり。

キャンプ飯はいきなり真打ち・肉や魚から。

食べる順番。
  1. 鮭ハラス
  2. ブロックベーコンの燻製
  3. ナチュラルチーズの燻製
  4. 豚スペアリブ
  5. 野菜焼き(ピーマン、タマネギ、椎茸etc.)
  6. 焼きトウモロコシ

キャンプのお楽しみといえば、やはりバーベキュー。

通常は真打ちの肉や魚に先立ち、野菜やきのこなどの前座から焼き始めるのが常だろう。でも、オイルファースト的にはそれらは後回し。いきなり真打ちにご登場願う。鮭ハラスやベーコンは脂が乗っており、良質なタンパク質も補えるから前座に最適。キャンプ飯らしく、即席で燻製にするのも悪くない。それに続くのは、脂もタンパク質も摂れるチーズや豚スペアリブなどなど。

魚も肉もひと通り食べ終えたら、野菜やきのこなどを焼く。油はたくさん摂ったから、こちらは塩胡椒で素材の旨みを味わう。

締めのカーボラストは、キャンプ飯らしくちょっとした非日常がエンジョイできるもので。醬油とバターを塗ってこんがり焼いたトウモロコシを、家族や仲間と分かち合って食べるのもいいだろう。

ステーキ店は良質な脂が摂れる部位を。

ステーキ店でのオイルファースト

食べる順番。
  1. サーロイン
  2. 付け合わせ(ブロッコリー、ホウレンソウ)
  3. コンソメスープ
  4. ロールパン1個

ご褒美飯ならステーキ店へ。

基本原則は、焼き肉店と同じ。選びたいのは、ヒレ肉のような脂質の少ない赤身肉ではなく、良質の脂質が摂れる部位。きれいにサシが入ったA5ランクの和牛サーロインステーキがベストだ。

焼き具合はウェルダンでもレアでもお好みでいいけれど、味付けは塩胡椒かワサビ醬油で。糖質が入っているステーキソースは断固パスしてほしい。

付け合わせの野菜は、糖質を含むジャガイモではなく、糖質をほとんど含まないブロッコリーやホウレンソウを。ニンジンは糖質がやや多いけれど、付け合わせに軽くつまむくらいなら、血糖値の上昇を気にする心配はない。

スープは、糖質も入る濃厚なポタージュより、糖質の少ないコンソメに。パンを少し食べるなら、バターを分厚く塗りまくる。