大阪城から夢洲へ。〈Brompton〉で築く新たなコミュニティ

イギリスの自転車ブランド〈Brompton〉が、2025年大阪・関西万博でUKパビリオンと協働して「未来のコミュニティとモビリティ」をテーマとした体験型イベントを開催。その様子をレポートします。

文/白川 学 写真提供/BROMPTON JAPAN

〈Brompton〉を知っていますか?

イギリス・ロンドンで一台ずつ手作業で組み立てられる〈Brompton〉は、独自の折りたたみ機構と高い走行性能を兼ね備え、都市移動に最適な自転車として長年にわたり支持されてきた。

最大の特徴は、驚くほどコンパクトに折りたためる構造と、街乗りに十分な快適さ。玄関の隅にすっきりと収まり、電車や車にも気軽に持ち込める。それでいて、都市の移動をストレスなくこなせる走りを持っている。

1975年に開発が始まり、現在もロンドンの工場で熟練の職人が一台ずつ手組みを行う。そのクラフトマンシップこそが、工業製品でありながら“モノ”としての魅力を放つ理由のひとつだ。

ただの折りたたみ自転車ではない。日常にささやかな豊かさを添えてくれる道具。それが〈Brompton〉である。

EXPO 70から万博会場・夢洲へ。

〈Brompton〉が主催し、大阪を舞台に行われたスタンプラリー形式のサイクリングイベント「Brompton Urban Challenge – in Osaka」。自転車に乗って大阪城公園を出発し、中之島公会堂、淀川、常吉大橋公園の3カ所のチェックポイントを経て、夢洲まで約20kmの道のりを巡っていく。

この日はあいにくの空模様。果たして無事夢洲までたどり着くことができるのだろうか。

参加者はユニオンジャックとブロンプトンのロゴが入った真っ赤な手拭いを身につけて万博会場を目指す。この一体感もグループライドの醍醐味。

中之島公会堂に着くころには、ポツポツと雨が降り始めていた。普段なら歓迎しない雨も、火照った体を冷ましてくれる今日は、むしろ心地よい。

普通の旅行ならきっと足を運ばない場所を走れるのも、自転車旅の醍醐味だ。住宅街の細い道を、風を切って颯爽と駆け抜ける。

常吉大橋公園にたどり着いたとき、雨は勢いを増し、全身を叩きつけてきた。それでもペダルを踏む足は止まらない。ゴールの夢洲は、もうすぐそこだ。

筆者のライフスタイルでは、日常生活で自転車による長距離移動はほとんどなく、せいぜいレンタルサイクルで2〜3km走る程度。だからこそ「20kmも走れるだろうか」という不安があったが、ペダルをひと踏みすると、そんな気持ちはすぐに吹き飛んだ。

この日最初に乗ったのは、スタンダードモデルの「Cライン」(約26万円〜)。

まず驚かされたのは、コンパクトな車体からは想像もつかないほど力強い走りだ。〈Brompton〉のホイールは16インチ(一般的なシティサイクルは26〜27インチ)とかなり小ぶりだが、踏み込んだ力がそのまま推進力に変わる感覚がある。

チェックポイントを巡りながら、各所でQRコードをスキャンしてスタンプを集めていく。2カ所目の淀川では自転車の乗り換えがあり、今度はチタン製の軽量モデル「Tライン」に乗せてもらった。

Cラインも十分に快適だったが、さすがはフルチタン。車体の軽さがペダルを踏み込むたびに感じられ、スピードに乗るのも早い。

淀川から夢洲まではあっという間だった。雨足が強まるなかでも、参加者同士の会話が弾み、距離が縮まっていくのを感じる。自転車を通じたコミュニティは、こうして自然に生まれていくのかもしれない。

都市と人をつなぐ〈Brompton〉の可能性。

ライド後には、英国パビリオンでディスカッションイベントが開催された。テーマは「自転車による自由な移動が、都市と人のつながりをどう変えていくか?」。

登壇者は以下の4名。

  • クリス・ウィリンハム氏(Brompton Chief Marketing Officer)
  • 矢野大介氏(Brompton JAPAN Country Manager)
  • キャロリン・デービッドソン氏(2025年大阪・関西万博 英国政府代表)
  • 落合友樹氏(バイシクルポッドキャスト「Radio Rueda」主催/MC)

キャロリン氏は、雨の中でライドを走りきった参加者を労いながら、
「イギリスらしい天気のなか、楽しんでいただけたのでは?」とユーモアたっぷりに会場を沸かせた。

〈Brompton〉は、都市生活における移動の自由を広げ、人と人、街と街のつながりを自然に生み出す。そんな可能性を、改めて感じる一日となった。

ディスカッションの詳細は、以下のPodcastからも聴くことができる。

旅先で自転車に乗る機会は、そう多くない。限られた時間のなか、ついタクシーや公共交通機関を使い、せわしなく移動してしまいがちだ。

けれど、自転車なら、その街の空気、匂い、人の表情細かな景色を足で、肌で感じながら、旅を「点」ではなく「線」で巡ることができる。

しかも〈Brompton〉なら、折りたたんで小ぶりなキャリーケースほどのサイズに収まる。持ち運びも簡単で、旅の相棒としてこれほど頼もしい存在はないだろう。