
〈Brompton〉を知っていますか?
イギリス・ロンドンで一台ずつ手作業で組み立てられる〈Brompton〉は、独自の折りたたみ機構と高い走行性能を兼ね備え、都市移動に最適な自転車として長年にわたり支持されてきた。
最大の特徴は、驚くほどコンパクトに折りたためる構造と、街乗りに十分な快適さ。玄関の隅にすっきりと収まり、電車や車にも気軽に持ち込める。それでいて、都市の移動をストレスなくこなせる走りを持っている。
1975年に開発が始まり、現在もロンドンの工場で熟練の職人が一台ずつ手組みを行う。そのクラフトマンシップこそが、工業製品でありながら“モノ”としての魅力を放つ理由のひとつだ。
ただの折りたたみ自転車ではない。日常にささやかな豊かさを添えてくれる道具。それが〈Brompton〉である。
EXPO 70から万博会場・夢洲へ。
〈Brompton〉が主催し、大阪を舞台に行われたスタンプラリー形式のサイクリングイベント「Brompton Urban Challenge – in Osaka」。自転車に乗って大阪城公園を出発し、中之島公会堂、淀川、常吉大橋公園の3カ所のチェックポイントを経て、夢洲まで約20kmの道のりを巡っていく。
この日はあいにくの空模様。果たして無事夢洲までたどり着くことができるのだろうか。
筆者のライフスタイルでは、日常生活で自転車による長距離移動はほとんどなく、せいぜいレンタルサイクルで2〜3km走る程度。だからこそ「20kmも走れるだろうか」という不安があったが、ペダルをひと踏みすると、そんな気持ちはすぐに吹き飛んだ。
この日最初に乗ったのは、スタンダードモデルの「Cライン」(約26万円〜)。
まず驚かされたのは、コンパクトな車体からは想像もつかないほど力強い走りだ。〈Brompton〉のホイールは16インチ(一般的なシティサイクルは26〜27インチ)とかなり小ぶりだが、踏み込んだ力がそのまま推進力に変わる感覚がある。
チェックポイントを巡りながら、各所でQRコードをスキャンしてスタンプを集めていく。2カ所目の淀川では自転車の乗り換えがあり、今度はチタン製の軽量モデル「Tライン」に乗せてもらった。
Cラインも十分に快適だったが、さすがはフルチタン。車体の軽さがペダルを踏み込むたびに感じられ、スピードに乗るのも早い。
淀川から夢洲まではあっという間だった。雨足が強まるなかでも、参加者同士の会話が弾み、距離が縮まっていくのを感じる。自転車を通じたコミュニティは、こうして自然に生まれていくのかもしれない。
都市と人をつなぐ〈Brompton〉の可能性。
ライド後には、英国パビリオンでディスカッションイベントが開催された。テーマは「自転車による自由な移動が、都市と人のつながりをどう変えていくか?」。
登壇者は以下の4名。
- クリス・ウィリンハム氏(Brompton Chief Marketing Officer)
- 矢野大介氏(Brompton JAPAN Country Manager)
- キャロリン・デービッドソン氏(2025年大阪・関西万博 英国政府代表)
- 落合友樹氏(バイシクルポッドキャスト「Radio Rueda」主催/MC)
キャロリン氏は、雨の中でライドを走りきった参加者を労いながら、
「イギリスらしい天気のなか、楽しんでいただけたのでは?」とユーモアたっぷりに会場を沸かせた。
〈Brompton〉は、都市生活における移動の自由を広げ、人と人、街と街のつながりを自然に生み出す。そんな可能性を、改めて感じる一日となった。
ディスカッションの詳細は、以下のPodcastからも聴くことができる。
旅先で自転車に乗る機会は、そう多くない。限られた時間のなか、ついタクシーや公共交通機関を使い、せわしなく移動してしまいがちだ。
けれど、自転車なら、その街の空気、匂い、人の表情細かな景色を足で、肌で感じながら、旅を「点」ではなく「線」で巡ることができる。
しかも〈Brompton〉なら、折りたたんで小ぶりなキャリーケースほどのサイズに収まる。持ち運びも簡単で、旅の相棒としてこれほど頼もしい存在はないだろう。