研究者が解説!生成AIにまつわる7つの疑問。

最近巷で話題の「生成AI」。分野次第では高IQ集団〈MENSA〉を超える知性を持つともいわれる。一度使ったらもう手放せない…けど、結局その正体って何なの?素朴な疑問に専門家が答えます。

編集・取材・文/川端浩湖 イラストレーション/ICHASU 取材協力・監修/今井翔太

初出『Tarzan』No.905・2025年6月19日発売

生成Aiとの賢い付き合い方
教えてくれた人

今井翔太(いまい・しょうた)/AI研究者。東京大学博士(工学)。2025年より北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)客員教授。生成AIにおける強化学習の活用の研究を行う。趣味のゲームの経験が人工知能研究のきっかけになる。

自分だけのドラえもんがいる時代がやってきた!

生成AI

ちょっと前までは夢物語だったAIとの対話が、今や当たり前になった。それでも「生成AIって何?」という人はまだ多い。生成AIとは、リクエストに応じて文章や画像などをサクッと作ってくれるAIのこと。特に2022年に登場したChatGPTは、自然な対話ができるAIとして一気にブレイク。「研究者にとっても衝撃でした」と話すのは、AI研究者の今井翔太さんだ。

今井さんによれば、生成AIについては誤解もあるという。「AIの中にネットの情報が詰まっているわけでなく、集めたデータは学習用。AIは人間の脳をまねたシステムで答えを出しています」。

今、どんなことでもAIにとりあえず聞いてみる人が増えている。まさに、“ドラえもん的な使い方”だ。「何でも解決してくれる相棒がいてくれたらいいのに……」。その未来、もう来てます!

生成AIの歴史をざっくり振り返る。

1956年

【はじまり】
人工知能(AI)という言葉が誕生。人間の脳の代わりになるものを作りたいという夢のスタート。

1960〜1970年代

【第1次AIブーム】
初期のAIが登場。コンピューターを使って推論や探索ができるようになる。

1980〜1990年代

【第2次AIブーム】
知識を詰め込んだAIが質問に答える「エキスパートシステム」が普及。
しかし、手作業で知識を教えるのは限界が……。

2012年頃〜

【第3次AIブーム】
人間の脳のしくみを模したディープラーニング(深層学習)が飛躍的に進化。AIが自ら学習できるようになり、画像認識や音声認識などの精度が大幅に向上。

2022年頃〜現在

【第4次AIブーム到来!】
生成AIが本格登場。2022年11月にリリースされた対話型AI『ChatGPT』がブームの火付け役となり、文章、画像、音声、動画など多様なコンテンツを自動生成する技術が普及。

AI研究者・今井翔太さんに聞いてみた! 生成AIの7つの疑問。

仕事の効率化からプライベートなお悩み相談まで、何でもござれの生成AI。一体どんなヤツなのか、素朴な疑問を専門家に直撃!

Q1.“的確な答え”が返ってくる理由とは?

言葉を打ち込むと、答えがスパッと返ってくる。この瞬間、生成AIの中では何が起きているのだろう。「しくみはシンプルで、“穴埋め問題”をハイスピードで解いているようなもの。入力された言葉をヒントに、次に続く言葉は何がふさわしいかを予測しています」。

Q2.人間と同じように忘れることもある?

人間の脳をコンピューター上でマネしているのが生成AI。じゃあ、忘れることもあるの?「実はAIも人間のように学んだことを忘れることがあります。これを破壊的忘却と呼び、AI研究の世界では課題のひとつ。忘れずに学び続けるAIが模索されています」。

Q3.今後、生成AIはどうなっていく?

数年後には、デジタル空間での作業はほぼAIがやる時代が来るという。「仕事で利用する場合、人間がやるべきこととAIに任せていいことを、今のうちから整理することが大事。変化のスピードは加速する一方なので、自分も変わり続ける意識を持つことが重要です」。

Q4.どうしてそんなに賢いの?

生成AIが賢いのは、大量の学習をこなしているから。「人間でいうと、延々とドリルを解きまくる受験勉強のようなもの。ウェブ上にある膨大なデータを取得して“穴埋め問題”を作り、それをAIにひたすら解かせています。文字数にして数兆字というレベルです」。

Q5.話しかけるときの基本ルールはある?

生成AIへの質問の仕方(プロンプト)に悩む人も少なくない。「そこまで気にする必要なし。生成AIの進化スピードがとにかく速く、1〜2か月後には良いといわれていた手法が通用しないことも。難しく考えず、どんどん試しながらコツを摑む方がいいでしょう」。

Q6.生成AIと良い関係を築くには?

頼れる相棒として付き合うにはコツがある。「使えば使うほど、AIがユーザーの好みに合わせて最適化され、自分の聞き方もレベルアップします。使用している生成AIサービスにメモリ機能が搭載されていれば、設定をオンにしておくと自分好みになっていきます」。

Q7.結局、どのサービスを選べばいい?

生成AIサービスの選択肢は一気に増加中だ。「言語生成AIに限って言えば、どれも基本のしくみは同じですが、得意分野や使い勝手に違いがあります。迷ったらChatGPTを選べば間違いなし」。どのサービスも進化中。常に更新されていくものだと心得ておこう。

分野 サービス名 こんな人におすすめ
言語生成 ChatGPT 幅広い用途でAIと対話したい。
Gemini Googleとの連携を生かして活用したい。
Claude 丁寧な応答や長文要約を効率化したい。
画像生成 DALL·E 独創的な画像を手軽に生成したい。
Midjourney 美しいイラストや絵画を作成したい。
Stable Diffusion 無料で自由に画像生成を楽しみたい。
音声生成 VOICEVOX 日本語の自然な音声を無料で作りたい。
動画生成 RunwayML 動画編集の可能性を広げたい。
Synthesia 手軽に説明動画を作成したい。
コード生成 GitHub Copilot 効率的にコードを書きたい。
CodeWhisperer 無料でコード生成AIを試したい。