
教えてくれた人
石井好二郎(いしい・こうじろう)/同志社大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科教授。今号で解説するのは身近な有酸素運動、ジョギングがもたらすさまざまな健康効果。
世界一座っている時間が長い国・日本。
勤勉が理由か怠け者ゆえなのか、とにかく日本人は世界一座っている時間が長い国民。6万人以上の日本人を追跡した研究では、1日7時間以上座っているグループは7時間未満のグループより死亡リスクが高く、9時間以上座っている人は7時間グループよりさらに死亡リスクが高いことが分かった。
でも走ればリスクを相殺できる、と言うのは同志社大学教授の石井好二郎さんだ。
「長時間座っていても有酸素能力が高い人は死亡リスクが低いという研究があります。1日10時間座っている人でもジョギング程度の身体活動を1日20分していると死亡率はグッと下がります」
運動時間が座位時間の悪影響を相殺する。
北欧とアメリカで実施された研究。座位時間が1日8時間で中強度身体活動が1日0分の人の死亡リスクが1とした場合の比較。
Sagelv EH, et al. Br J Sports Med. 2023
ジョギングの上下動が脳に良い影響をもたらす。
ジョギングの効果はそれだけではない。最近の研究では走って頭を上下動させることが脳の機能に影響することが報告されている。
「ネズミの実験では頭の上下動で認知症に関わる幻覚症状が抑制されたり、ヒトの実験では1日30分の上下動が血圧に好影響を及ぼすことが分かりました」
ヒトの実験は座面が上下に動く椅子を使って行われたが、この上下動の動きはジョギングに相当する。頭部に衝撃が加わり、脳内の細胞の間にある間質液が流動することが脳機能の維持や調節に繫がると考えられているらしい。
軽いジョギング程度の運動では着地時に頭部に衝撃が伝わり、脳内の間質液が流動し、脳細胞に物理的刺激が加わる。その結果、脳機能に好影響が及ぼされるという。
Ryu Y, Sawada T, et al: iScience. 23(2):100874, 2020
ちなみに、下の図はWHOが掲げている「ヘルシー・ストリート・インデックス」で、心身や環境に好ましい街路の条件。どうせ走るならこうした環境でカラダや脳をリフレッシュさせよう。
心身の健康に好ましい10の街路条件。
WHOが提唱するヘルシー・ストリート・インデックスは車中心の社会から歩行者中心の社会にシフトするための指標。この条件を満たすスコアの高い街路ほど評価が高い。