「カラダをいたわって食事をすれば、もうそれは漢方」タレント・ 麻木久仁子さんさんの漢方術。

大病を患い、東洋医学へ傾倒。 麻木さんが考える、漢方の魅力とは?

取材・文/山梨幸輝 撮影/石渡 朋 スタイリスト/恩田暁代 ヘア&メイク/新地琢磨(Sui) 衣装提供/ヨーガンレール

初出『Tarzan』No.895・2025年1月23日発売

Profile

麻木久仁子(あさぎ・くにこ)/1962年生まれ。バラエティ番組で“クイズ女王”として活躍。国際薬膳師や国際中医師などの資格も所持する。著書に『ゆらいだら、薬膳』(ジェイブックス)など。
Instagram:@kunikoasagi

楽しく健康的な食事は、〝後天の精〟を高めるんです。

検準1級を持つインテリタレントとして、多くのクイズ番組で八面六臂の活躍を見せた麻木久仁子さん。近年は漢方や薬膳をはじめとする東洋医学を探究中だ。

「きっかけは10年ほど前。立て続けに脳梗塞と乳がんを患ったんです。早期発見で大事には至らなかったのですが、不規則な時間に適当なものを食べていた生活を見直すきっかけになりました。栄養学やヴィーガニズムなどのさまざまな理論を調べて、一番惹かれたのが東洋医学。最初はスピリチュアルな学問という偏見があったけど、実際はかなり理屈っぽいんです。でも、そこがむしろ性に合っていて(笑)。学んでいると医食同源などの四字熟語がよく出てくるのも漢字好きな私が惹かれた要素。それからは東洋医学にどっぷりです」

“やるならとことん”な麻木さんらしく、その後、数年で国際薬膳師や中国の医学を扱う国際中医師の免許を取得。日々の心身への向き合い方も一変したという。「漢方の利点は、病気の一歩手前である未病を重視すること。心やカラダの小さな変化にも気を配るようになりました。例えば、寒い日に手や耳が冷たくなったことに気づいたら、生姜などのカラダを温める食材を摂って、もし寒けがあるなら葛根湯などの漢方薬に頼る、といった具合です」 体重が安定し、大きく体調を崩すこともなくなったという。

日頃、意識しているキーワードは、“精”だ。「精には2種類あって、その足し算で人の生命力が決まるんです。例えば、どれだけ酒やタバコを嗜んでも長生きする人は、生まれつきの“先天の精”が多い。逆に、虚弱な体質だったとしても、日頃の心がけで高められるのが“後天の精”。人間の命は不平等で理不尽だからこそ、毎日の小さな積み重ねが大事なんだなと。漢方を通してそんな当たり前のことに気づけました」

最大の変化を聞くと、「食事がより楽しくなった」との答え。カラダが欲している料理をじっくり考えるようになったためだそう。麻木さんのSNSに日々投稿される健康的で色とりどりの料理を見ると、その楽しさが伝わってくる。

麻木さんがSNSに投稿した薬膳料理。どれも本格的。

気血を補うとされるナツメを使った参鶏湯

整腸作用が期待できる切り干し大根のきんぴら

きのこと高麗人参のカレー

生薬の蓮子入りのお粥

「私の考えでは、カラダをいたわって食事をすれば、もうそれは漢方。よく知らない人には“苦いものを食べないといけないんでしょ?”と言われますが、決してそんなことはありません。極端な話、寒い日にコンビニで温かい飲み物を手に取るだけで、“漢方人”の第一歩です。もちろん、突き詰めたくなったら東洋医学の世界を探究するのもおすすめ。人間のカラダは宇宙のように奥深い。四字熟語で言うなら、“天人合一”なんです」