街をあげてランナーとつくりあげる。名古屋ウィメンズマラソン。

2025年3月9日(日)に「名古屋ウィメンズマラソン2025」が開催された。43の国と地域から参加した1万5804人のランナーが、バンテリンドームナゴヤを発着地点として名古屋市内を巡るコースを出走。多くのボランティアや名古屋市地元の支援、〈ニューバランス〉チームの計らいによって大会は大いに盛り上がり、大成功に終わった。本大会を「支える人」「観る人」「走る人」にフォーカスして、振り返ってみよう。

取材・文/河田愛歌 撮影/須田マリザ(スチル)、鈴木ショーン・ショウスケ(動画)

名古屋ウィメンズマラソン2025を「支える」人たち

毎年、国際女性デーがある3月に開催される「名古屋ウィメンズマラソン」。世界で最も規模の大きい女性ランナーのための大会だ。14回目を迎える今年のテーマは「つながろう、ゴールの先で」。

大会当日は名古屋市内に大規模な交通規制がひき、地域をあげての大イベントとなるのが恒例。今年もたくさんのボランティアによる協力のもと大会が行われた。

名古屋ウィメンズマラソンの様子

その数、個人が5000名、団体が2000名の参加があったという今回のボランティア。街の至る所には、背中に「GO WOMEN」と文字が記されたジャケットを着たボランティアスタッフが大勢いた。

名古屋ウィメンズマラソンのスタッフ

女性をエンパワーメントする本大会でしか見られない光景だろう。彼らは走者が安心して走れるよう、コース整理やランナーの誘導、手荷物預かりなどを行う。広大な会場とレース内で、名古屋に不慣れな海外や県外から参加したランナーに親切な応対で接する姿が印象的だった。

また、並走してくれるランニングドクターや救護チームの存在も目立つ。出会ったのは、名古屋大学からボランティアで参加したスポーツ医療学科の学生たち。万全を期すボランティアスタッフの多さと地元の学生を交えた地域をあげた手厚いサポートに驚かされた。

名古屋ウィメンズマラソンのボランティア

学生を含む1000人ものメディカルボランティアが参加。学生たちは体調の悪いランナーに付き添い、車椅子で救護所へ搬送することも。

名古屋ウィメンズマラソンのメディカルドクター

ランニングドクターは一般ランナーとコースを走り、ランナーの健康に問題が発生した場合は初期対応にあたる。

今回のレースを先導したのは、市民マラソン大会では珍しい女性ばかりで構成したペースメーカーたち。走行タイムを記したシルバー色のバルーンを片手に、正確なペース配分で参加ランナーをゴールへと導いた。

彼女たちの経歴はさまざま。現役学生や元陸上競技経験者、特別なトレーニングはしなくともとにかく走ることが得意だという強者も。

名古屋ウィメンズマラソン、マラソンEXPOの様子
名古屋ウィメンズマラソンの参加者

ゴールまで残り10kmを切る地点のエイドステーションでは、愛知大学の生徒たちが声援と共にエナジードリンクとミネラルウォーター、名古屋特産品のういろうやブドウ糖などを配布するコーナーを設置。

彼らの給食や給水のサポートや負傷者へのケア、そして「頑張ってください」という声援は、大いにランナーたちを鼓舞し背中を後押したはずだ。

名古屋ウィメンズマラソンのエイドステーション
名古屋ウィメンズマラソンのエイドステーション

そして「名古屋ウィメンズマラソン」といえば、大会名物のおもてなしタキシード隊。フィニッシャーを祝福し、ゴール地点で記念品を渡してくれることで知られている。

おもてなしタキシード隊のメンバーは自薦または他薦でオーディション選考を経て選ばれた性別や国籍、年齢や経歴もさまざまな50人。終始ホスピタリティ溢れた対応で、写真撮影も快く応じてくれる。名古屋市出身者や在住の人も多く、ランニング経験者も選出されていた。

レース前日から終了まで、バンテリンドームナゴヤ内ではマラソンEXPOと称して、さまざまな企業のブースやフードトラックが出展。特設ステージでは、〈ニューバランス〉契約アスリートの田中佑美選手や名古屋を拠点に活動するモデルたちが出演したファッションショーも開催された。

名古屋ウィメンズマラソンの参加者

EXPO会場で開催されたデクレアウォール。入場者は誰でも黄色い用紙にメッセージを記入でき、好きな場所に貼り付けられる。

名古屋ウィメンズマラソンで開催されたファッションショー

ファッションショー「GO RUNWAY × GO WOMEN~Run your way.~」のテーマは健康とスポーツ、自分らしくあること。

〈ニューバランス〉のブースでは、限定品の販売のほか、出走者の名前を一覧にしたコーナー、目標や応援メッセージを書き込めるデクレアボードも設けられていた。会場内がたくさんの思いで埋め尽くされ、大会にかける意気込みが伝わってくる。

42.195kmのコースは、バンテリンドームナゴヤから名古屋城、MIRAI TOWERなど名古屋の名所を巡り、再びバンテリンドームナゴヤに戻るというもの。道幅が広い道路は走りやすく、空が大きく開けた市内は風が抜けて気持ちがいい。

25km地点の大津通りでは、水色のフラッグを手にランナーたちへコールドスプレーやチョコレートを提供しながら声援を送る大盛り上がりで大声援を送る一団が。東京から大会運営に駆けつけた〈ニューバランス〉の営業チームだ。

コールドスプレーはランナーたちに好評で、膝やふくらはぎへの処置を希望する人が続出、一時列をなすほどに。〈ニューバランス〉陸上チームのスタッフとランニングコーチたちは、応援メッセージやフルマラソンへの思いを綴った白いフラッグで応援に参戦。

ランニングコーチは大会前日に行ったシェイクアウトランでランナーたちと名古屋市内を並走。参加者たちのレース前の緊張をほぐしてカラダをリラックスさせ、レースに集中できるように調整を行った。レース中は様子を見守りながら、適宜アドバイスを伝え、いるだけで頼もしさを感じる存在感を放っていた。

雲ひとつない快晴のなか大会を「観る」人たち

今回、東海テレビは名古屋ウィメンズマラソンを世界選手権の代表権をかけたレースとして実況中継した。当日は早朝6時台のニュース番組で、野口みずきさんが出演して一般参加のランナーへの応援を呼びかけるなど、大会応援ムード一色に。

2002年には名古屋ウィメンズマラソンの前身となる「名古屋国際女子マラソン」で優勝した野口さんは、東海テレビ陸上部のYoutubeチャンネルでもMCを勤めている。レース前日の22時台には、東海テレビ「ランナーズハイ」で、大会前の食事や過ごし方、過去の失敗談だけではなく、大会の楽しみ方や見どころまでを紹介。

そういった発信の影響もあるのか、コース沿道には参加者の家族や友人はもちろん、多くの名古屋に住む人たちも観戦に訪れていた。思い思いに応援して、普段とは違う街の表情を楽しむ。大会自体が、地域に根付いていることが伺える。

32km地点に設けられたのは「エクストリームチアゾーン」。あと残り10kmを切ったランナーたちへ送られるのは、これまで以上の熱烈なエール。愛知淑徳大学のチアリーディング部「レンジャーズ」は、笑顔で次々とスタンツやリフトの技を繰り広げ、走者とオーディエンスを魅了しながら演技を行う。

その数百メートル先には、名城大学の応援団吹奏楽部が生演奏で応援用メドレーを披露。THE BLUE HEARTSの『TRAIN-TRAIN』などを爆音で演奏しつつ、ランナーに手を振ったり会釈をしたりしてパワーを送っていた。最後のラストスパートに向けて力を振り絞るランナーにとってはいい刺激になり、大いに励みになっただろう。

愛知淑徳大学のチアリーディング部「レンジャーズ」
名城大学の応援団吹奏楽部

年々進化する大会で、今年「走る」人たち

本大会のフルマラソンの制限時間は7時間。1万5337人がフルマラソンを完走し、その達成率は全体の97%だったという。ランナーの中には母国の国旗をつけたウェアで参加したり、ヒジャブを被って走る人も。韓国や中国、タイなどのアジア圏やヨーロッパ、北米、南半球などからの参加者も確認できた。

世界中から集まり、思い思いに走る姿からは、昨今のランニング人気の高まりが見て取れる。楽しみながら走るランナーが多く、ポジティブなムードに溢れているのが名古屋ウィメンズマラソンらしい。

大会前日のシェイクアウトランのコースは、ホテルヒルトン名古屋から街のシンボル中部電力MIRAI TOWERが見える公園オアシス21まで。往復約4kmを走行した。

大会開催中、〈ニューバランス〉名古屋のショップでは、そんなランナーたちのために大会にちなんだコンテンツが繰り広げられた。エントランスには、出走者の名前とタイムが表示されるがあり、人気のフォトスポットに。

記念写真を撮る名古屋ウィメンズマラソンの参加者

大会限定Tシャツと完走者に贈られるフィニッシャーTシャツに日付などが入れられるカスタムや、ファイテンが提供している足湯に、プロによるフットマッサージが受けられるコーナーも。

名古屋ウィメンズマラソンの参加者

〈ニューバランス〉名古屋店内に登場したバースペースとDJブースではリカバリードリンクがサーブされた。

〈ニューバランス〉名古屋店内
〈ニューバランス〉名古屋店内

好評だったのは、徒歩5分先にある「CRED SPA SAUNA」のサウナと水風呂。昨年オープンしたばかりの1階に36名入浴可能な大型サウナと水風呂、外気浴スペース、2階に5部屋の個室サウナと水風呂、ととのい室を有する人気スポットだ。ランナーが疲れを癒し、自らをセレブレートしてお互いを讃えあう。そんなアフターランを楽しめる充実の内容だった。

「CRED SPA SAUNA」のサウナ
「CRED SPA SAUNA」の水風呂

「世界最大の女子マラソン」としてギネス世界記録に認定されている、名古屋ウィメンズマラソン。80年代初頭から女子選手のオリンピックや世界陸上のマラソン代表選考会として開催されてきた歴史ある大会だが、2012年にランニングファンの期待に応えるため、女性限定の大規模フルマラソンにリニューアルしたという経緯がある。名古屋市内のコースはアップダウンが少ないため走りやすく、記録を狙いやすい。プロランナーが走るエリートレースを残しつつ、制限時間を7時間に設定してマラソン初心者でも十分完走できることが特長。

多くの女性に開かれ、走ることで女性であることに誇りを持ち、周囲をエンパワーメントできる意義深い大会なのだ。「いつかマラソン大会で走ってみたい」と思っているランナーは、是非来シーズンにエントリーをして参加することをオススメしたい。

名古屋ウィメンズマラソンの様子
Information

「名古屋ウィメンズマラソン2025 」
開催日時:2025年3月9日(日) 9:10スタート(※終了しました)
コース:バンテリンドーム ナゴヤ発着、日本陸上競技連盟、WA/AIMS公認コース

Newbalanceウィメンズランニング特設サイト
HP:https://shop.newbalance.jp/lp-running-nwm.html

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