初心者向けか、超老舗。安心できる漢方薬剤師がいるお店。

漢方屋を訪れてカラダの悩みを相談するということはつまり、カラダについて考える時間を作る、ということと同義。少しハードルが高く感じるかもしれないが、アテンドしてくれる漢方薬剤師がいれば、より安心して不調と向き合うことができる。今回は漢方初心者向けの店舗と、歴史の長い老舗店舗をそれぞれ1軒ずつ紹介しよう。

取材・文/鍵和田啓介(菊岡漢方薬局)、河合萌花 撮影/吉松伸太郎(LAOSI)、渡邉佳子(菊岡漢方薬局)

漢方を試しに買いに行く

〈LAOSI〉漢方薬を味方に心身を整える第一歩。

LAOSI

渋谷区神山町に店を構える〈LAOSI〉は、客のリクエストに応じて1包から購入できる漢方薬店。ここで漢方薬剤師を務める松浦尚子さんは、ご実家も漢方薬局とあり、幼い頃から漢方に慣れ親しんできたそう。

LAOSI 松浦尚子

松浦尚子さん/漢方薬剤師。薬剤師と漢方薬剤師の資格を持ち、〈LAOSI〉の立ち上げから携わる。「難しいといわれる漢方も、実はシンプルです」と話すと、初心者にもわかりやすく図表を用いて説明。遠方から来られる方には全国発送にも対応し、継続的なフォローアップを行っている。

「漢方と聞くと“怪しい”とか“本当に効くかどうかわからない”といったイメージを持つ方も多いですが、実は先人たちの多くのトライアンドエラーを礎にした、統計の医学です」と、最初に教えてくれた。そして「食事などの生活習慣を整えれば、漢方薬は決して長く飲み続けなくてもカラダは改善に向かいます」と、アドバイス。漢方薬を1包から購入できるのはその表れでもあり、店頭では漢方薬に限らず生活習慣へのアドバイスも送っている。一度購入した方を対象とした、オンラインサポートも好評。漢方薬を購入する以外にも、オリジナルの漢方薬膳茶のテイクアウト利用もおすすめだ。

LAOSI

「あくまで漢方はサポート」と話す松浦さん。カウンセリングでは、食習慣から睡眠、仕事のスタイルなどを丁寧にヒアリング。プライベートな空間で話をしたい人は、予約制のカウンセリングやオンラインも可能。

LAOSI

LAOSI

代々木公園駅から徒歩約6分。漢方薬の処方や販売の他、店内でブレンド茶などが頂ける。店名には「先人の知恵」という意味合いを込める。12:30〜17:00(月・水・日曜・祝日定休)、営業時間以外で予約制のカウンセリング等に対応。WEBサイト

〈菊岡漢方薬局〉奈良の歴史ある薬局で触れる、漢方の伝統と革新。

菊岡漢方薬局

目指すのは、元暦元年(1184年)から800年以上続く〈菊岡漢方薬局〉だ。JR奈良駅から歩くこと20分。いにしえの街並みが残るならまちの一角に、〈菊岡漢方薬局〉は奥ゆかしく佇む。中にお邪魔すると、多種多様な漢方とともに出迎えてくれたのは、24代目店主の菊岡泰政さんだ。菊岡さんによれば、奈良と漢方は想像以上の深い縁で結ばれているという。

菊岡漢方薬局

奈良のシンボル、東大寺の北北西に位置する正倉院には、数々の宝物と一緒に60種類の生薬が収められている。店内では、その生薬をはじめ、漢方の歴史がわかる資料が数多く展示されている。

「漢方という言葉自体は、江戸時代に生まれました。だけど、もとを辿れば、飛鳥時代から奈良時代にかけて、遣隋使や遣唐使が命懸けで中国に渡り、仏教と一緒に持ち帰ってきたもの。それが平城京を中心にして、全国に伝わっていきました。その後、国内で独自に発展していくなか、オランダから輸入された蘭学、つまりは西洋医学と区別するために漢方と呼ばれるようになったんです。その意味で、奈良は日本の伝統医療の起点と言えるかもしれません」

そのような土地で先祖代々営まれてきた〈菊岡漢方薬局〉はしかし、伝統を守ると同時に、新しい取り組みにもチャレンジしている。それはハードルが高いと思われがちな漢方のイメージを払拭するためにほかならない。

菊岡漢方薬局

お店の奥では、江戸中期から受け継がれてきたという味のある百味簞笥が。現役で使用されており、引き出しの中には生薬が収納されていた。

実際、お店では漢方以外にも、奈良産の大和当帰を配合したオリジナルハーブティーなどを販売するほか、漢方の知識に基づくオリジナルのカレー粉作りのワークショップまで定期開催している。

確かに、東京から奈良までは近くない。しかし、ここまで初心者に開かれた、“下から目線”で漢方の魅力を発信する場所も珍しい。そんな〈菊岡漢方薬局〉で真摯な相談に乗ってもらうことは、不調にぴったりの漢方に出合うための近道と言えるかもしれない。

菊岡漢方薬局

菊岡さんに作ってもらった葛根湯。煎じ薬の場合は、これをティーバッグに入れて販売するという。葛根湯ティーバッグ1袋550円。

菊岡漢方薬局

菊岡漢方薬局

520年にわたり奈良の三条通りで営まれた後、2002年に現在の場所に移転。カレー粉作りのワークショップの参加費は1人3,300円〜。事前予約が必要なので、詳しくは公式サイトで確認しよう。奈良市中新屋町3、9:00〜18:00、月休。WEBサイト