その行動が肺を苦しめていた!今すぐやめたいNG習慣4選。
日常生活のふとした動作が、肺を苦しめる原因になっていたかも?今回は肺にとってネガティブな呼吸習慣を4つ紹介する。毎日当たり前に繰り返しているその行動が、息苦しさや呼吸のしづらさを悪化させている原因かもしれない。
取材・文/井上健二 撮影/園山友基、小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾、村田真弓 取材協力・監修/奥仲哲弥(前国際医療福祉大学医学部呼吸器外科教授)、宮崎雅樹(みやざきRCクリニック理事長) 撮影協力/UTUWA
初出『Tarzan』No.886・2024年8月22日発売
目次
NG行動その1|お風呂のお湯を追い焚きする。
ベランダのプランターでハーブを育てている、ビジネスホテルは大浴場付きに必ず泊まる…。そうした人たちに、ぜひ気をつけてほしい肺の病気がある。「肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)」だ。
肺NTM症は、抗酸菌の中で結核とらい菌(ハンセン病の元となる細菌)以外の細菌で起こるもの。その9割くらいはMAC菌と呼ばれる細菌が原因なので、肺MAC症と言われることもある。
自覚症状としては長引く咳、痰、体重減少など。場合によっては咳とともに血が出る喀血、痰に血が混じる血痰といった症状が出ることもあるとか。
肺NTM症は結核などと違い、人から人へ移る心配はない。でも、一度感染してしまうと体内に居座り続けて、薬剤が効きにくいので、治療しても治癒に至らないことが少なくない。
「肺NTM症の原因菌は、非常にありふれた細菌。プランターなどの土壌の他、キッチンや浴室など水回りに生じた“ぬめり”、循環している浴槽のお湯から揮発している成分などにも含まれています。肺が弱いタイプが日常生活での感染を防ぐには、不要な土いじりを控える、浴槽のお湯を毎日替えるといった対策が考えられます」(宮崎医師)
NG行動その2|スポーツ応援やカラオケで声を出しすぎる。
食べカスや唾液が誤って肺に入り肺炎を起こす誤嚥性肺炎は、モノを咀嚼して咽頭→食道→胃へと導く嚥下機能が落ちるのが大きな要因。
嚥下機能を保つには、カラオケで熱唱して喉を使って鍛えるのも悪くない。週4回のカラオケで、嚥下機能と食べ物を嚙み砕く咬合力が高まったという報告もある。
ただし、推計患者数1000万人にも達する喘息患者の場合、カラオケの歌いすぎには注意が求められる。
「歌うときには、鼻や口と肺をつないでいる気管支を大量の空気が行き来します。そうした刺激を繰り返し受けていると、喘息で生じる気管支の炎症が治まりにくくなるのです。空気を吹き込んで鳴らす管楽器の演奏も、同じように喘息には決してよくない。趣味でサックスを吹いているとおっしゃる患者さんに、演奏を控えてもらったところ、喘息の症状が軽くなったというケースもあります」(宮崎医師)
バスケットボールやサッカーといった熱狂系スポーツの声出し応援のやりすぎも、気管支にはあまりよくない。仮に喘息の治りが悪くて悩んでいるのなら、贔屓チームの応援も、なるべく声を出さずにサイレントで行った方がよさそう。
NG行動その3|紙タバコの代わりに新型タバコを吸う。
タバコは肺の天敵。喫煙すると、肺のほとんどの病気の発症リスクが上がる。なかでも気になる肺がんの発症リスクは、タバコを吸う人は非喫煙者と比べて男性で約4.8倍、女性で約3.9倍にもなる。
新型タバコ(加熱式タバコ、電子タバコ)は従来のタバコよりヘルシーそうなイメージがあるけれど、それは実態を伴わない虚像。
「新型タバコでも肺の病気全般のリスクは上がる。喫煙者はいますぐ禁煙してください」(宮崎医師)
加熱式タバコの中身は、紙巻きタバコと同じタバコの葉。ニコチンを含む。タバコの葉を使わない電子タバコは、国内製品はニコチンを含まないけれど、発生するエアロゾル(空気中の微細な粒子)に有害なホルムアルデヒドを含んでいる。
タバコがやめられないのは、ニコチン依存症に陥っているから。依存症を自力で治すのは難しいので、禁煙外来で専門家の手を借りよう。
一定の条件を満たすと、禁煙外来では保険が適用される。治療期間は通常12週間。この間に診察を合計5回受ける。最後までメゲずにコンプリートすると約半数(47.2%)が禁煙に成功できるという。
NG行動その4|ハードな有酸素運動でカラダに高負荷を与える。
心肺機能を高めてスタミナ(全身持久力)を上げるには、ランニングなどの有酸素運動が有益とされる。
しかし、息がすぐ上がるなど肺が強くない自覚があるなら、ハードな有酸素運動は控えた方が無難。
「有酸素運動で高まるのは、心肺機能というより“心機能”。肺が弱い人が有酸素をやりすぎるのは、むしろマイナスです」(宮崎医師)
心臓は心筋という筋肉の塊。他の筋肉と同じように強めの負荷で鍛えると逞しくなる。一方、肺は筋肉で作られているわけではなく、肺という臓器自体を鍛えるのは難しい。
肺の働きはどうしても加齢で落ちていくから、落ち込みをミニマムにするために、使いすぎをセーブしていたわるのが正解なのである。
「有酸素には減量などプラスの作用がありますから、肺を守るためとはいえ完全にやめる必要はない。口呼吸には多くの弊害があるので、鼻呼吸で続けられる軽めのペースで1回30分以内に留めましょう」(宮崎医師)
とくに冬場に屋外で走る際には、調子に乗り追い込みすぎて口呼吸に陥らないように。冬の冷たく乾燥した空気が口から直接入ると、気管支を刺激して喘息を起こすこともある。冬場も温度&湿度が適切に保たれたジムならより安全に走れる。