【入江陵介さん直伝】バタフライを楽に泳ぐためのコツ

バタフライをラクに泳ぐためのコツを入江陵介さんに聞いてみた。ポイントは基礎に忠実に手足の動きを合わせて泳ぐこと。「最初はゆったりでいいので、ストロークとキックをシンクロさせることに注意を払うようにしてみてください」。ここでは、何とか泳げているけれど、目に見えない壁にぶつかって停滞しているスイマーを想定。6つのQ&A形式でコツを解き明かしていく。

取材・文/井上健二 撮影/中村博之、西川隼矢 スタイリスト/笠島康平 ヘア&メイク/近藤志保 撮影協力/AQiT

初出『Tarzan』No.883・2024年7月4日発売

Q1, しんどくて長く泳げない

「4大泳法でもっともパワーが求められる泳ぎですが、それを気にしすぎて力が入ると長続きしない。だからこそ、パワーよりタイミングに重きを置くべきです。

バタフライでは1ストロークでキックを2回打ちます。通常は両腕の入水時に最初のキックを打ち、水を搔き切ったフィニッシュの時にもう1回打つ感じですが、それをうまく連動させて腕だけの動き、脚だけの動きにならないようにしましょう。

初めから欲張ってトップスピードで泳がず、ゆったりしたストロークとキックでベストなタイミングを見つけ、それをカラダに覚え込ませてください」

Q2, 腕がすぐに疲れてしまう

「バタフライでは両腕が水面上に完全に出る瞬間があります。その際、水をカラダの後ろまでプッシュし終わった後、腕だけの力に頼って前方までリカバリーしようとすると、腕が疲れやすくなります。

腕の付け根の肩甲骨から腕を前に持っていくようにすれば、肩まわりや背中の大きな筋肉が使えます。

普段から猫背気味で肩甲骨が固まったままだと、水中で肩甲骨を動かそうとしても動かない。陸上で肩甲骨がスムーズに動けるように整えておくと、水中でも肩甲骨から腕が使えます。肩甲骨の柔軟性を出すため、チューブトレをする選手もいます」

Q3, しっかり水が搔けない

「水泳では、ワンストロークでどれだけ水を捉えて進むかが大切。とくにバタフライでは、ワンストロークごとに丁寧に遠くの水を捉え続けることが求められます。

そこで肝心なのも、やっぱり肩甲骨からリラックスして腕を使うこと。肩がガチガチで腕が伸び伸びと動けないとリーチは短くなり、ストロークも小さくなる。

腕を長く伸ばすイメージで肩甲骨から腕を前に持っていくとリーチが長くなり、ワンストロークごとにしっかり搔けるのです。速く進もうと焦りすぎると力んで肩甲骨が動きにくくなり、腕だけの泳ぎになりやすい。指先までリラックスしましょう」

腕は肩甲骨からダイナミックに動かす

腕の付け根は、肩ではなく肩甲骨。肩甲骨をしなやかに動かし、リラックスして指先まで使ってより遠くの水を捉えれば、後ろに強く搔けて推進力に変えられる。

Q4, 頑張っているのになかなか進まない

「水泳ではスピードが上がるところと減速するポイントが必ずあります。バタフライでは、ストロークのフィニッシュとセカンドキックのところでスピードが乗る。

そこで力をぐっと進行方向へ持っていくためには、背泳ぎと同じように進行方向を頭に入れておくことが大事。

バタフライでは浮き上がって呼吸しようという意識が強すぎると、ベクトルが進行方向ではなく上へ上へとズレてしまう。

それだと腰が反って落ちてしまい、抵抗も増えるので、十分な推進力が得られない恐れがあります。進行方向への意識は、どの泳法でも上達するために欠かせません」

Q5, 後半息苦しくなる

「バタフライで浮き上がって呼吸する時間はほんの一瞬。そんなに長くはありません。浮き上がってから息を吐いて吸おうとすると間に合わなくなり、酸素が足りなくなって息苦しさにつながります。

力のいるバタフライで呼吸が不十分だと、それこそ致命的。後半の失速は必至です。

息は水中である程度吐き、浮き上がったら吸うだけにしておくと、短時間で効率的に呼吸できます。息を吐いて肺を空っぽにしておけば、空気は自然と入ってくるもの。

水中では無意識に息を止めちゃう人が案外多いと思うので、水中の時間を有効活用して呼吸してください」

Q6, ストリームラインが保てない

「水泳では抵抗の少ないフラットなストリームラインを取りたいものですが、バタフライは4大泳法でもっとも動きがダイナミックな分だけ、ストリームラインが守りにくいという難点がある。上体が浮き上がったり、腰が反ったりしやすいのです。

バタフライを得意とする選手たちにとっても、レース後半にきつくなったとき、どれだけストリームラインが保てているかは大きな課題です。

それを解決するためには、やはり陸トレが不可欠。体幹をちゃんと鍛えて、きつくなってきてもカラダが浮いたり反ったりしないようにキープし続けることが求められます」

後半までストリームラインが保てる体幹トレ

両肘、両膝をついて四つん這いになる。肘は肩の真下につき、膝から頭までを一直線に並べてストリームラインに近いポジションを取る。その姿勢を崩さずに、片腕を床と平行に伸ばしたら、元に戻す。左右各10回×1〜2セット。