OWSの大会にチャレンジしてみない?
海、川、湖など自然水域での動力を使わないアクティビティであるOWS(オープンウォータースイミング)は、壮大な自然に囲まれ、絶え間なく変化する波や流れをどう攻略するかが面白さであり奥深さ。
その魅力に取り憑かれたなら、ぜひともOWSの大会にチャレンジしてみてはどうだろう。OWS元日本代表で、現在はスイムインストラクターとして活躍しながら全国の大会に出場する松下彩花さんは、魅力をこう語る。
「実は短い種目は500mからあり、気軽に参加できる競技なんです。初めての海での大会は勇気が必要ですが、その挑戦が自身の成長につながります。全国各地で開催されているので、旅行を兼ねて気楽に参加してみるのも楽しいですよ」
ちなみに、エントリーする種目の倍の距離をプールで泳げれば十分に完泳可能だとか。つまり、500mの種目なら1kmを連続して泳げればいいというわけ。思ったよりもハードルが高くないと思ったそこのあなた、ぜひとも一度参加してみては?
大会に出るなら身につけたい3つのテク
① ヘッドアップ
海にはコースロープや水底のラインもない。自分がどこを泳いでいるのか、どこに進むのかを泳ぎながら確認する必要がある。そのためのテクニックがヘッドアップだ。
呼吸と組み合わせてリズムよく、一瞬だけ顔を水面に出す。右呼吸の場合なら、前方確認のタイミングは呼吸前の左手のストローク。
通常よりも斜め前方向に浮力を生むように水をかき、右手を伸ばしながら頭を上げる。このとき、なるべく目だけを出すようにすると水の抵抗が少なくなる。
② スカーリング・バタ足
ヘッドアップの際にコースの目印となるブイが見えないと、つい焦って立ち泳ぎをしがち。しかし、そうなると再び泳ぎ出すために体力を消耗するし、使う筋肉が急に変わることで、足が痙る原因にも。
そこで、役に立つのがスカーリング・バタ足だ。カラダは水平を保ったまま、スカーリングをしながら顔を上げる。前に進む必要はなく、バタ足はカラダが沈まないように軽く打つだけでいい。落ち着いてブイを探すことができる。
大会用ヘルプサイン
大会では複数のライフガードが水上バイクや船からコースを見守ってくれているため、大会用のヘルプサインを用いることが多い。
やり方は、まず仰向けになり、腕で水面をバシャバシャと叩くというもの。人間のカラダは体積の2%しか水面に出ないため、顔が沈んでしまうような激しい動きは禁物だ。
なるべく浮いて体力を温存し、呼吸を意識しよう。仰向けに浮いているだけでも泳げていない=異常のサインとなり、ライフガードに気付いてもらえる。
厳選!おすすめの5つの大会
日本水泳連盟が後援するOWS大会『サーキットシリーズ』は、年間14戦を各都道府県で開催。短距離の種目もあるため初心者でも参加しやすい。OWS元日本代表・松下さんのオススメ大会を紹介!
岩手県釜石「釜石OWS」
リタイアも称えてくれる初心者にやさしい大会
波が穏やかで初心者でも泳ぎやすい釜石市根浜海岸が舞台。初心者向けの種目(500mと1km)があり、岸から近い場所に三角形の初心者コースが用意されている。あまり沖に出ないため、安心して泳ぐことができるはずだ。
YUUKI賞は、無理をせずに勇気を持って途中棄権した選手全員に贈られる賞。贈呈される三陸わかめ200gがリベンジへの活力に。会場のそばにあるキャンプ場に泊まって楽しむ選手も多いとか。
千葉県館山「館山OWSフェスティバル」
新宿から直通バスあり、好アクセスで手軽に参加
館山駅でバスを降りれば、会場の北条海岸までは徒歩約13分。都心からのアクセスの良さが魅力だ。遠浅で西風が吹かなければほとんど波の影響がない穏やかな海は、毎年OWS日本選手権やインカレが開催される場所でもある。
エリート選手の参加も多数あり、上級者の泳ぎを間近に見られる貴重な機会となるだろう。また、人気の大会だけあってネット上には情報も多く、初めての参加でも安心してレースに臨むことができる。
三重県尾鷲「OWS三重オープン尾鷲」
参加者が少なめでのびのびと泳げる
初心者にとって、選手同士の距離が近いのはストレスの元。参加人数が少なく、まわりに気を遣わずに泳げるというのは、地方大会ならではの大きなメリットだ。それに加え、海の透明度は抜群。池のような凪の水面が特徴となっている。
また、安全面にも力を入れており、ライフセーバー、船、水上ジェットが多めに配置されているのも魅力。また、5kmの制限タイムが2時間15分と長いため、長距離にチャレンジしたい人には特におすすめだ。
和歌山県南紀田辺「南紀田辺・扇ヶ浜OWS」
扇形のビーチは開放感が抜群!
扇ヶ浜という名前の通り、扇を広げたようななだらかなカーブが美しいビーチはとても開放的。岸に沿って平行に泳ぐコースのため、透明度の高い綺麗な海と相まってとても泳ぎやすいと評判だ。
大会前日には参加者とスタッフの交流会が開催され、地元の食も堪能できる。マリンスポーツが盛んな海水浴場でもあり、ビーチハウスにはトイレや更衣室、シャワーなどが充実。駅から徒歩約15分なので電車でアクセスすることも可能だ。
鹿児島県阿久根「阿久根OWS」
泳ぎやすいコンパクトなコース設計が魅力
会場となる脇本海水浴場は日本快水浴場百選に選ばれている白砂の浜。海は遠浅。天候が良ければ海底の砂地が綺麗に見えて快適に泳げる。コース設計がコンパクトなためターンブイが確認しやすく、初心者でも無理なく泳げるのも嬉しいポイントだ。
また、うねりがあまり入ってこず、毎年ほぼ同じ潮の流れのため、特徴を把握すれば攻略しやすい。会場では温水シャワーが使えてレース後が快適なのも嬉しい。
レースに向けた練習の一例
いざレースへの出場を決めたなら、実戦を想定した練習に取り組もう。泳ぎ込みだけに専念するのではなく、技術面の練習も必要だ。ぜひ行ってほしいのは、50m×8本を3セット、①スカーリング・バタ足と②ヘッドアップを組み合わせたメニューだ。
「1セット目はプールの床のラインを通過するときに①を行い、少しだけ止まって適当な目標物を確認する。2セット目では得意なリズムを探しながら②を。そして3セット目では、①と②の動きを交互に4回ほど切り替えます(切り替えの目安は12.5mライン)。
泳ぎながらブイを見失ってしまったときにスムーズに泳ぎを切り替えられるよう、反復して練習し、動きをカラダに染み込ませていきましょう」(松下さん)
練習メニューの例
- 50m×8本:泳ぎながらスカーリング・バタ足を行う。
- 50m×8本:泳ぎながらヘッドアップを行う。
- 50m×8本:泳ぎながらスカーリング・バタ足とヘッドアップを交互に行う。