目次
1. 3つの泳法ができれば、海で十分楽しめる
自然の水域を楽しむために、なにも特別なスキルは必要ない。
「クロール、平泳ぎ、背泳ぎの3泳法が身についていれば、安全に泳ぐことができます」とは、海だけでなく川や湖の安全管理と魅力を知る日本ライフセービング協会の田村憲章さん。
「それぞれの泳法には、身の安全に繫がる役割があります。クロールは前に進むこと。平泳ぎは楽に泳げるのに加え、顔が前に向くので周囲の確認に。背泳ぎは顔が空に向くので疲れた時にたくさん空気を吸えますし、足がつかない場所でゴーグルを直すときなどにも有効です。状況に合わせて泳ぎ分けることで、より安全に海を楽しめます」
2. 立ち泳ぎ& ヘルプサインも覚えておこう
波がある海のような場所では、疲れたりパニックになるような場面でも落ち着いて行動できるよう、覚えておきたいテクニックもある。
「まず、顔を水面に出して止まる”立ち泳ぎ”。これができると周囲の確認、呼吸、ゴーグルを直すなど、ひと通りのことができるので非常に有効です。
“スカーリング”が身につくと、手で水を搔くことで水中の姿勢をコントロール可能に。水面から顔を出したり、背面に浮きながら呼吸できるようになり、パニックになりそうなときにも心を落ち着かせることができます。
“ヘルプサイン”も足がつったりして助けを求める際に欠かせません」(田村さん)
3. 泳ぐ場所は「海水浴場」が基本
プールと違い、海には環境の差がある。波が穏やかで、海底に岩が少ない安全な場所を選ぶ必要がある。
「海水浴場は、そうした条件が揃っていますし、夏のシーズン中はライフセーバーも常駐しているので理想的。シーズン以外でも、なるべく夏に海水浴場になる海を選ぶと危険が少ないでしょう。また波打ち際から深い海、反対に遠浅の海など、海水浴場によっても個性があるので、目的に合わせて選択を」(田村さん)
加えて重要なのは、決してひとりで泳ぎに出かけないこと。必ず複数人で訪れ、浜から見守る人を残して順番に泳ごう。そうすることで万が一の時も早く察知することができる。
4. 泳ぐときは、例えばこんな格好を
オープンウォーターで着る水着は、泳ぎやすさはもちろん、安全面も考えて選ぶ必要がある。海では岩場で肌を傷つけたり、クラゲや微生物に刺される心配があるし、川でも同じように怪我の危険があるからだ。
「なるべく肌を直接水に晒さないよう、ラッシュガードやウェットスーツ、岩場近くではマリンシューズが時には必要です。安全のため、泳力を気にせず楽しみたい場合はライフジャケット着用が理想」(大貫さん)
さらに、なるべく派手で目立つ色を選ぶことも大切だという。視認性の高いウェアを着ることで、他のマリンアクティビティをしている人やライフセーバーから発見されやすいのだ。海にはカラフルで出かけよう。
5. 入水時に「状況確認」を忘れない
「海に来たからといって、すぐに泳ぎ出してはいけません。自分が入る場所の環境や状況、目印になる建物などの観察が必要です」(田村さん)
海であれば、離岸流など流れの有無や波の高さ、水温、監視塔の位置。入水後は水深、水底の様子などを確認。また、海の表情は常に変化するものであることも頭に入れておこう。
「さらに大切なのが、陸に目印となる建物を2つ見つけ、その位置関係を把握しておくことです。海では知らず知らずのうちに流されてしまうことがありますが、2つ目印があると、建物の位置関係から自分がどちらに流されてしまったのかも認識しやすくなりますよ」(田村さん)
6. 岸と平行に泳げば、安心安全
初めて海で泳ぐときには、流されないか、急に深くなったりしないかと不安も多いだろう。少しでも不安を減らすためには、岸に対して平行に泳ぐことを覚えておこう。
「沖に向かうのに対して横移動は比較的安全。ただし深さは変わることがあるので、心の準備を。足のつく浅瀬で岸と平行に泳げば、すぐ岸に上がれるので安心です」(大貫さん)
その際、水底に目印があるプールと違い、海で真っ直ぐ泳ぐのは難しいということを覚えておこう。
「他人に見てもらい、曲がりやすい方向を把握することが大切。クセを知り、真っ直ぐを意識し、景色をチェックする余裕を持ちましょう」
7. 出かける前にWEBで風速もチェック
「波は風が作り出していますから、風速はとても重要な指標。海へ出かける際には、晴雨だけでなく、風も事前に必ずチェックし、できれば入水前にも再度確認を。注意したいのは6m以上の風が吹く場合。小さなゴミなどが飛ぶレベルで、カラダにも風を感じます。8mでは白波が立つようになり、浮き輪などを使っていると確実に流されます。強風注意報が出ている場合には海に入らないようにしましょう」(田村さん)
また、雷注意報が出ていないかも調べておきたい。発表=即中止ではないが、もしものときの行動を左右するため、事前に頭に入れておこう。特に夏は発表の頻度が高い。
8. 落ち着いて対処すれば、離岸流は怖くない
プールとの大きな違いに、海浜流の有無がある。なかでも離岸流は知らずに流されてしまうとパニックになりやすく、たしかに危険度は高い。
「ただし、海浜流を正しく知り、落ち着いて対処をすれば極端に恐れることはありません。砂浜に打ち寄せた波(水)が戻るエネルギーによって生まれる離岸流の幅は10〜30m程度。岸と平行に泳げば流れから脱出することができます」(田村さん)
巻き込まれないためには、入水前に海の様子を確認すること。離岸流は、波が砕けていない、一見穏やかそうに見える場所にできやすい。そのほか、海岸の人工物の周囲にも発生しやすいため、よく観察しよう。