これを食べれば疲れにくいカラダへ。東洋医学&栄養学から考えるスタミナアップ食

医食同源という言葉があるように疲れにくい心身を育むためには、食養生が欠かせない。東洋医学の考えや栄養学から導き出す、スタミナを養う食生活とは。おすすめ食材とともに食養生のコツをお伝えしよう。

取材・文/井上健二 撮影/黒川ひろみ

初出『Tarzan』No.884・2024年7月18日発売

教えてくれた人:石原新菜さん

いしはら・にいな/医師。イシハラクリニック副院長、ヒポクラティック・サナトリウム副施設長。西洋医学だけではなく、東洋医学、自然療法、食事療法に詳しい。日本東洋医学会会員。

東洋医学的なアプローチで「気」を巡らす

漢方に代表される東洋医学では、人体には気・血・水という要素があると考えており、それらがバランスよくスムーズに流れるように導く。気は生命エネルギーや免疫力、血は血液とその循環、水は血液以外の体液に相当している。

なかでもスタミナと関連するのが気。

気の乱れには、気が足りない「気虚」、気が停滞する「気滞」、上から下へという循環が狂って下から上へ向かう「気逆」という3タイプがある。

東洋医学・栄養学

まずは気をチャージしてその乱れを正すと、血と水も滞りなく循環できるようになり、スタミナもアップ。

「疲れやすくてスタミナがない人には、気虚が多い。医食同源。気虚には、気を補う食べ物を積極的に摂り入れる日々の“食養生”が欠かせません」(イシハラクリニックの石原新菜副院長)

気を整える食養生のポイントは、根菜、未精製食品、全粒穀物、発酵食品だ。

気虚を改善する食べ物

未精製食品:精製していくほど、食べ物が本来持っている気が奪われてしまう。白砂糖よりも黒砂糖、精製塩よりも自然塩(天然塩)を選ぶべき。

根菜:自然薯、大和芋、生姜、ラッキョウのように地中で育つ根菜を食べると、大地の気が摂り込める。ことに生姜、ラッキョウは夏が旬。

全粒穀物:主食である穀物は、精製度が低く丸ごと食べられるものがベター。白米よりも玄米や雑穀米、食パンよりも全粒粉パンを食べよう。

発酵食品:納豆やキムチといった発酵食品には生きた善玉菌が含まれており、気を高める。腸内環境も整い、脳腸相関でストレス緩和にも期待。

身近な食材から摂れるスタミナ切れを防ぐ栄養素とは?

ダイエットが求められるくらいカロリーを摂り過ぎているのに、肝心の栄養素が十分摂れていない人は案外多い。

「その理由は、現代にはインスタント食品やスナック菓子のように、食べ過ぎるとたちまちオーバーカロリーになるくせに、代謝などに必要な栄養素をほとんど含まない“エンプティカロリー”が溢れているからです」(石原先生)

ここでの“エンプティ”とは、カロリーではなく、栄養が“空っぽ”という意味。そうした食品はなるべく控えよう。太っているだけでもスタミナは落ちやすいのに(詳しくはこちらの記事:疲れにくいカラダは作れる。スタミナを上げる、超実践的な14のアドバイス)、そのうえ栄養素が足りないと「疲れないチカラ」も「ラクに動けるチカラ」も養えない。

そこで、スタミナを落とさないために必ず摂っておきたい栄養素を4種類、厳選してピックアップ。いずれもエンプティカロリーには含まれておらず、油断すると欠乏しやすいものばかりだ。

トレーニングと同じで食事も三日坊主では意味がない。栄養摂取のポイントを学んだら、できるものから日々の食生活に持続可能な形で取り入れたい。

イミダペプチドを摂る

東洋医学・栄養学

低温調理した鶏胸肉のサラダ

疲れを軽減してスタミナを高めるエビデンスがもっとも充実しているのが、イミダゾールジペプチド(イミダペプチド)。鶏胸肉に多く含まれる。

イミダペプチドは抗酸化作用があり、摂取し続けると筋肉に蓄積して持久力を高める。加えて脳にある自律神経の中枢にも働きかけて脳疲労も防ぐ。鶏胸肉はコンビニのサラダチキンが便利だが、炊飯器などを使って自宅で低温調理しても。抗酸化力に優れる緑黄色野菜を添えて。

イミダペプチドを含む食材

鶏ささみ、豚ロース肉、カツオ、鮭

ビタミンB1+アリインで超回復

東洋医学・栄養学

豚肉とニラのレンチン蒸し

カラダの基礎エネルギーは糖質。糖質の代謝に必須なのがビタミンB1だ。B1が足りない人は多く、水溶性で摂り溜めできないので毎日摂るべき。手軽にB1を補うなら豚肉がお薦め。

ニンニクやネギ類のアリインは空気に触れるとアリシンに変化し、B1の吸収効率を高め、体内で長く働けるようにする。豚肉とニンニク、ニラやタマネギなどのネギ類は相性抜群。皿に盛り一緒にレンジ加熱すれば栄養素の損失が抑えられる。

ビタミンB1を含む食材

豚肉、大豆、全粒穀物

アリインを含む食材

ニンニク、ニラ、タマネギ

鉄を補給する

東洋医学・栄養学

プルーンとナッツをのせたヨーグルト

筋肉などの細胞は、酸素なしには継続してエネルギーを生み出せない。この酸素を運ぶのが、血液に流れる赤血球内のヘモグロビン。タンパク質と鉄が合体したものだ。

鉄は所要量を満たしにくいミネラル。鉄が足りない鉄欠乏性貧血に陥ると、酸欠で持てる力が出せない。プルーンやナッツなどから摂ろう。ヨーグルトにトッピングすればタンパク質も補えるし、間食にすると腹持ちが良くて、スナック菓子などの過食も避けられる。

鉄を含む食材

プルーン、ナッツ、レバー、牛肉、マイワシ

毎朝タンパク質を忘れない

東洋医学・栄養学

プロテイン入りグリーンスムージー

筋肉はタンパク質からなる。タンパク質不足だと筋肉は衰えやすく、下半身が弱体化するとフィジカルなスタミナがダウン。さらに筋肉の伸縮で血液を循環させて疲労回復を促すミルキングアクションも疎かに。

夜間は絶食しているため、朝は筋肉のタンパク質が分解されやすい。朝食こそタンパク質リッチに。時間がない朝は、グリーンスムージーにプロテインをスプーン2〜3杯入れるだけで、1食分のタンパク質が補給できる。

朝におすすめのタンパク質を含む食材

豆乳、卵、ツナ