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【棚橋弘至・連載】第39回:筋肉とスーツは相性抜群。たどり着いたファッション観

©️新日本プロレス

新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至が綴る、大胸筋のように厚く、起立筋の溝のように深い筋肉コラム。第39回のテーマは「筋肉とファッションの関係性」について。

ファッションに目覚めた日

服が好きです。あ、帽子や靴、時計も好きなので、ファッションが好きということですね。

棚橋弘至選手

小学生の頃は、基本、家も学校も遊びも、毎日、体操服でしたね。周りの友達も同じだったので、そういうものだと思っていました。

ところがある日、ファッションに目覚めます。それは、中学生になったとき、近所に服屋さんができたのがきっかけでした。スピリッツというアメカジのお店で、デニムやTシャツ、スウェット、ミリタリー、ブーツ、キャップなど、あらゆるアイテムが揃っていました。

友達と初めてお店に行ったときの衝撃は、いまだに忘れられません。そう、それは思っていた以上に、値段が高かったのです。小学生の頃、たまに着る私服も母が買ってきてくれたものを、良し悪しも分からず着ていたため、服の相場ってものを知らずに大きくなっていたんでしょうね。デニムパンツが19800円とか、ベルト、10000円とか…。

16歳の棚橋くんは、決断を迫られました。ファッションに無頓着に生きるか?それとも、好きな服を着て気分よく生きるか? もちろん、選ばれたのは後者でした。お小遣いや、お年玉を貯めたり、ときには母にお願いして、服が増えていきました。そうして、ついに迎えたのが、ブーツデビューの日でした。

〈レッドウイング〉。それは、アメリカの老舗のブーツメーカー。同級生のイケてる友達は(当時、岐阜県大垣市の価値観で)、だいたい、〈レッドウイング〉。エンジニアブーツ派もいれば、アイリッシュセッター派も多い。そうして、僕が買ったのは、35000円のエンジニアブーツでした。

ブーツに35000円を出すという興奮。ええ、この瞬間、完全に大人の階段を登りましたね。とりあえず、部屋に飾ったのを覚えています(←履きなさい笑)。こうして、学生服にエンジニアブーツという、奇抜なファッションで、高校に自転車通学を始めたわけですが、本当のファッションに対する目覚めは、大学時代に来るのでした。

大学に進学した僕。京都の大学だったので、大阪のアメ村まで行ったり、フリーマーケットに行ったり、休みの日はとにかく、そんな感じでした。当時「ピチT」といって、ちょっと小さめのサイズのTシャツをジャストサイズに着るファッションが流行っていて、Tシャツのサイジングがとても大事でした。僕もあえてMサイズを買ったり、デザインが気に入ったものがあると、Sサイズでも無理やり着ていました(笑)。

しかし、不思議なことに、服が長持ちしません。買っても買っても着られなくなってしまうのです。え?どういうこと?と、思いますよね。その原因は、体重の増加。入学と同時に始めた、本格的なウエイトトレーニングのおかげで、メキメキ体が大きくなっていたのです。入学時、68キロだった体重は、1年後には80キロ。2年生で82キロ。3年生で85キロ。大学卒業時には90キロまで増えていました

昔、僕は「俺って物持ち悪いなー」と、思っていましたが、決して雑に扱っていたのではなく、ただ単に「体の進化のスピードに服が追いつけなかった」ということだったのです。

年を重ねて奥ゆかしく変化?

大学卒業後は、新日本プロレスに入門して、デビューまでの半年間で、90キロから102キロまで、また体重が激増。市販サイズのXLがギリ着られるかどうかという、オシャレを取るか? 筋肉を取るか? というところまで来ていたように思います(大袈裟)。

しかし、ここ数年は、体重が100キロ前後で、安定し始めたので、ようやく服には困らなくなってきました。まあ、年齢を重ねて、服の好みが変わってきたのも大きいですね。今、ファッションで重視しているのは「着ていて、体が楽かどうか」。

棚橋弘至選手

自然と大きめのサイズで、ゆったり着られるようなものを選ぶようになりましたね。今、ワンサイズ小さいTシャツで、筋肉を誇示して歩いていたら、それはもう見てられないどころか、通報されますね(笑)。

そして、今年から、新日本プロレスの代表取締役社長になり、ほぼ毎日、スーツでの生活となりました。市販のスーツはやはりなかなか合うものがなく、持っているのはオーダーメイドで仕立てた何着か。胸がパーンと張っていて、ウエストがキュッとしまっていて、スラーっと長い脚。

棚橋弘至選手

きっと、周りから見ると、こうなっているはずです(願い)。そう、スーツは、そのスタイルが決まっているため、筋肉のあるなしがそのビジュアルに大きく影響するということですね。

つまり、筋肉とスーツの相性は無茶苦茶良いのです。それに、ジャケットを脱いだとき、想像以上に太い腕が出てきたとき、どんなリアクションが待っているのか、楽しみじゃないですか?

若い頃、見せたかった筋肉が、歳を重ねて、奥ゆかしいモノになったというお話でした。

【能ある鷹は爪を隠す】=【能ある逸材は筋肉を隠す】

 皆さんも筋肉という最高のファッションアイテムを手に入れましょう!

棚橋弘至

たなはし・ひろし/1976年生まれ。新日本プロレス所属。立命館大学法学部卒業後、1999年デビュー。低迷期にあった同団体をV字回復に導き、昨今のプロレスブームをリング内外の活動で支える。

本連載『モテ筋肉でいいじゃないか』は毎月・第2金曜日に公開予定。次回は、2024年7月12日(金)に公開予定です。

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