【専門医監修】目を衰えさせないための正しいメンテナンス法

40代、50代になり、老眼、聞こえにくさ、声の出しづらさ、虫歯の増加といった悩みが出てきたという人もいるのではないだろうか。人生100年時代と考えれば、折り返しに差し掛かったばかり。機能を長く維持するためにも、衰えが激しくなる前に、正しいメンテナンス習慣を身につけたい! 今回は目の健康を保つためのメンテナンス法を紹介。

取材・文/神津文人 撮影/森山将人 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾

初出『Tarzan』No.880・2024年5月23日発売

教えてくれた人:平松 類 先生

ひらまつ・るい/眼科専門医。二本松眼科病院副院長。目の健康と病気について解説しているYouTubeチャンネル『眼科医平松類』は24万人以上の登録者数。著書に『名医が教える 新しい目のトリセツ』などがある。

毎日同じ場所からカレンダーを眺める

「見え方の定点観測をすることが、白内障や緑内障、黄斑変性といった目の病気の早期発見に繫がり、大きな問題になる前に処置することで、目の老化を遅らせることができます」と、眼科専門医の平松類先生。

定点観測の方法は、毎日、同じ位置からカレンダー(日めくりではなく1か月表示)を見ること。まずは片目で、カレンダー中央の日付を見て、視力低下がないかを確認。

今度は中央から目を動かさずに全体像を見て、視野が欠けていないかをチェックする。

最後に両目で真っ直ぐ真ん中を見て、視野がどの程度あるか、欠けている部分がないかを確認する。違和感があったら眼科医に相談しよう。

最優先の栄養素、「ルテイン」を摂る

網膜の中心に黄斑部と呼ばれる部位がある。ここにルテインが溜まることで、目を紫外線から守っているのだという。

「ルテインは天然のサングラスと呼ばれています。若い頃は黄斑部に豊富にルテインが溜まっているのですが、40歳を過ぎた頃から、減少することがわかっています。そのため、ルテインを積極的に摂取しないと、目は紫外線のダメージを受けやすくなってしまうのです」

ルテインは、白内障や緑内障、黄斑変性などの目の病気予防に効果があると認められている。日々の食事の中に、ルテインを含む食材を盛り込もう!

ルテインを多く含むおもな野菜(100g中の含有量)
  • ケール:22.0mg
  • モロヘイヤ:13.6mg
  • ヨモギ:11.3mg
  • 小松菜:7.6mg
  • ホウレンソウ:4.5mg

※ルテインの含有量には個体差があります。

「まずは1日10mgを目標に毎日摂取するのがおすすめ。1〜2週間継続したら、週に2、3回1日10mg摂取を習慣にしましょう」(平松先生)

視力向上ウォーキング。遠くを眺めて歩く

スマホ、テレビ、パソコン…。一日の大半を近くのものばかり見て過ごしている現代人。

目の衰えを防ぐためには、遠くを見る時間を意識的に増やすことが大切。そこでおすすめになるのが、目の運動をしながらのウォーキングだ。

「山や建築物、標識など、なるべく遠くにあるものにピントを合わせることを意識しながら、景色を楽しんでウォーキングをしましょう。遠くのものであれば、自然物である必要はありません。

有酸素運動には眼圧を下げ、緑内障の予防や進行を防ぐ効果があることもわかっています。週3回、1日30分の有酸素運動が効果的だといわれています」

目のためにも有酸素運動は必須なのだ。

1回5分でいいから、寝る前に目を温める

長時間のパソコン作業、スマホ操作で現代人の多くが目を酷使している。目の疲れやドライアイからのリカバリー、日々の目のケアに有効なのが、目を温めること。

「目の表面は脂を含んだ水(涙)に覆われています。まぶたを温めると、血流が促進され、まぶたにある脂分泌腺から脂が出て、目の疲れやドライアイが回復します。寝る前に5分ほど、濡れたタオルを電子レンジで温めたものをまぶたの上に置いて一日の疲れを取りましょう」

まぶたを温めるのは、市販のホットアイマスクを利用してもいいし、入浴中にお湯で温めたタオルを活用してもOK。習慣化しやすいものを選ぼう。

目に痒みがあるとき、まぶたに腫れがあるときは、痒みや腫れが強くなる場合があるので、温めは避けるべし。

外出時はUVカットの伊達メガネを

白内障や翼状片といった病気の原因になる紫外線は、目にとってなるべく避けるべきものの一つ。白内障については、赤道に近い地域・国ほど発症率が高いという統計が出ているほど、紫外線の影響は強い。

「視力がいい人でも紫外線が強い季節・時間帯はUVカット機能のあるメガネやサングラスを着用するといいでしょう。100円ショップで売っているような安いサングラスにはUVカット機能のないものがありますが、それでは意味がありません。

また色の濃いサングラスをしていると、瞳孔が開き、より多くの光を取り入れようとして、サングラスの外からの反射光が目に入りやすいというデメリットもあります。サングラスをするなら薄い色のUVカット機能付きがおすすめです」

ツバ付きの帽子を被ると、より紫外線から目を守れる。

機能を低下させるかも?やりがちNG行動

目が疲れたから押して揉んでマッサージ

長時間のパソコン作業を終えたとき、ついつい目をマッサージしたくなるが、まぶたの上からでも押したり揉んだりすると、網膜剝離や白内障の原因になる。同じように目をゴシゴシとかくのも好ましくない。目が疲れたときは、蒸しタオルを使って温めよう。

目薬を差した後に目をパチパチさせる

目薬の成分を浸透させられるかと思いきや、パチパチと瞬きをすると涙の分泌によって、目から鼻へと流れていってしまう。とてももったいない行為なのだ。目薬を差したら目を閉じて1分キープ。目頭を押さえておくとベターだ。また、雑菌がつくのを防ぐため目薬の蓋は必ず口を上に向けて清潔な場所に置き、点眼時は容器の先がまつ毛やまぶたに触れないように注意すること。

コンタクトレンズのケースを長く使う

2週間や1か月の使い捨てコンタクトレンズを使っている人で、ケースをずっと替えてないという人はいないだろうか。レンズケースに付着した菌が原因で、感染症に罹患することがあるので要注意。ケースも最長1か月を目安に新しいものに切り替えよう。

目のために暗い部屋でテレビを観ない

暗い部屋でテレビを観るのは目に悪そうな印象があるが、実は暗くしてテレビを観ると目が悪くなるというデータはない。問題になるのは部屋が明るいか暗いかではなく、対象物との距離。明るい部屋での読書も長時間続ければ、視力低下の原因になる。

パソコンのディスプレイはなるべく大きいものにする、動画視聴はスマホやタブレットではなく、大きなモニターやテレビ画面を利用するといった工夫をして、観る対象物からの距離を取ろう。