老化スピードが変わる!長寿遺伝子を活性化する食事術
老化を引き起こす酸化や糖化の一因になったり改善策となるのは食事が占めるウェイトがとても大きい。つまり、食べ方を変えることで、老化のスピードは変えられるということだ。今回は近年研究が進んでいるサーチュイン遺伝子と食事との関係を深堀り。キーワードは「腹八分目」。おいしいからといって毎回満腹まで食べている場合じゃない。休眠中?の長寿遺伝子をドライブさせよう。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/yamasaki nao 取材協力/根来秀行(ハーバード大学医学部客員教授) 栄養監修/河村玲子
初出『Tarzan』No.880・2024年5月23日発売
教えてくれた人:根来秀行
ねごろ・ひでゆき/ハーバード大学医学部客員教授、ソルボンヌ大学医学部客員教授など国内外の大学で教鞭を執る。専門は内科学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたる。新型コロナの治療メカニズムを解明し、話題となった。
お腹いっぱい食べると長寿遺伝子は働かない
うまく活性化させれば寿命を延ばすことができるかもしれないサーチュイン遺伝子。でもほとんどの場合、普段そのスイッチはオフモード。
「食事量に関して個人差はあるにしろ、現代人の多くは1日3度の食事を満腹になるまで口にしていますよね。そういう場合、サーチュイン遺伝子はオフになっています」
と、根来秀行先生。飽食時代、お腹いっぱいランチを食べて、午後のまったり時間に舟を漕ぐ。そんなライフスタイルでは、長寿のスイッチは切れたまま。
糖質制限はNG、栄養はバランスよく
お腹いっぱい食べちゃダメというのなら、減らすべきはやっぱり主食の炭水化物? 糖質制限をすれば減量にもなるし一石二鳥。でもこれはNGだ。
「極端な糖質オフをすると肝臓が糖質に代わるケトン体という物質を作ります。この仕組みを利用したのがケトダイエットですが、本来非常用で肝臓に大きな負担をかけます。また、ケトン体は酸性なので血液が酸性に傾き、健康を害することに」
健康的に長寿を目指すなら、糖質は多すぎてもダメ、少なすぎてもダメということ。
普段食べている量の2割減、腹八分目が目安
では、どうしたらサーチュイン遺伝子を活性化できるのか?答えは「腹八分目」。
「動物実験などによる論文では食事を普段の量の7割に減らすとサーチュイン遺伝子が完璧に活性化することが報告されています。でも8割程度でも効果が得られる可能性はあります」
20〜40代男性の1日の推定エネルギー必要量は2300キロカロリー、その8割として1840キロカロリー。イラストのように1食当たり600キロカロリー強となる。あまり厳密に考えず、腹八分目で箸を置こう。
腹八分目の食事例
週末だけ腹八分食、そんな手もありだ
毎日毎日、8掛けの食事コントロールを続けていく自信がない。そんな人は期間限定で「腹八分食」を取り入れよう。
「たとえば年末年始に食べ過ぎてしまったとき、1月の後半、または2月の1か月間は腹八分を徹底する。そういうリセットの仕方もありますね。もう少し短いスパンなら週末だけ8割の食事を取り入れることにも意味はあると思います」
サーチュイン遺伝子は思っている以上に素早く反応してくれる。この週末はグーグーお腹を鳴らす生活をしてみては。
お酒を飲む機会では赤ワインを選択する
食事の量を控えめにすること以外に食卓でサーチュイン遺伝子を活性化する方法。そのひとつが赤ワインをいただくこと。
「赤ワインに含まれるレスベラトロールという物質がサーチュイン遺伝子を活性化させることはだいぶ前から分かっていて、NMN(詳しくはこちらの記事:40歳が別れ道!? 10分でキャッチアップするアンチエイジングの最新事情)より長く研究されています。ただしサーチュインをオンにする量を摂るとなるとボトル1、2本飲む必要があります」
それだけ飲んだら逆にカラダに悪いので、ワインの選択肢があったら白より赤を優先するという知恵だけ持っておこう。