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頭痛に悩む人の味方、鎮痛剤。病院にかかるほどではないと、市販薬を常備している人も多いだろうが、実は飲み過ぎると頭痛を誘発する原因になりうるらしい。今回はそんな「薬物乱用頭痛」のメカニズムや改善法まで徹底解説しよう。
丹羽潔先生
にわ・きよし 〈東京頭痛クリニック〉理事長、頭痛外来のある〈にわファミリークリニック〉院長。日本頭痛学会専門医、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医など。指導医として後進も育成。著書は『最新 頭痛の治し方大全』。
市販の鎮痛薬は入手しやすく、日常的に服用する人も少なくない。だが、過剰摂取で「薬物乱用頭痛(MOH)」という、本末転倒な事態が起こることがある。MOHとは、以前から慢性頭痛持ちだった人が、1種類以上の頭痛治療薬を3か月続けて乱用することにより、1か月に15日以上、片頭痛と緊張型頭痛が混在する複雑なパターンの頭痛に見舞われること。
「脳内には痛みをコントロールする“番人”のような存在があり、鎮痛薬を飲み過ぎるとこの番人が痛みに過剰反応。本来なら見過ごす些細な痛みも重大な痛みと誤認して頭痛を頻発させてしまうのです。下のチェックリストを見て、当てはまる項目が多いならMOHの危険性は高いです。早めに専門医の治療を受けてください」
不明な部分も多いが、薬の多用により、痛みを感知する神経の感受性が上がった状態。
市販の鎮痛薬について、さらに知っておこう。薬選びの重要なポイントとなるのは「効き目」だが、市販のもので鎮痛効果が一番高く、胃腸への影響が少ないとされる成分は、ロキソプロフェンやイブプロフェン。アセトアミノフェンは、効き目が穏やかだが、「即効性」において秀でているのが特徴。イソプロピルアンチピリンの鎮痛効果は、中程度とされる。
「市販薬で注意したいのは、成分を掛け合わせることで効き目を増強させる手法が多く見受けられる点。効き目が高い一方、副作用として依存性を高める危険性も」
医師が処方する鎮痛薬は単純鎮痛薬と呼ばれ、有効成分が1種類だけのもの。その場合は1か月に14日まで服用してもいいが、市販薬に多い複合鎮痛薬(有効成分が2種類以上配合)は、月に10日以上服用すると薬物乱用頭痛の症状が表れる可能性がある。
「薬を買うときは成分表を見たり、効き目と安全性のバランスがとれているかを考慮しましょう」
ロキソプロフェンナトリウム製剤(主な鎮痛成分はロキソプロフェン)
非ピリン系鎮痛薬(主な鎮痛成分はイブプロフェン、アセトアミノフェン)
ピリン系鎮痛薬(主な鎮痛成分はイソプロピルアンチピリン)
頭痛には、特に大きな病気の兆候や、危険な病気の症状である場合がある。くも膜下出血や脳腫瘍、脳動脈解離が代表的だ。
「特に、50歳以上の人が注意しなければならない頭痛が、くも膜下出血です。今まで頭痛がなかった人が50歳を越えて、初めて頭痛を感じた場合は要注意です」
専門書には、突然ピークに達する今まで経験したことのない痛みがあり、嘔吐や痙攣が伴うとある。
「ただ稀に軽い頭痛で済んだり、嘔吐や痙攣がない場合も。でも、次に血管が破裂したら助からないので、たとえ軽症でもピーク後2〜3週間頭痛が続くなら病院へ」
脳腫瘍は鈍い痛みが徐々に悪化していくのが特徴。また首への無理な圧迫やマッサージなどの物理的刺激でも起こるのが脳動脈解離。
「いずれにせよ、今まで経験したことのない痛みや高熱や吐き気を伴ったり直近1か月以内の間に悪化していく傾向があるなら、なるべく早く診察を受けるべきです」
取材・文/板倉みきこ 撮影/内田紘倫 イラストレーション/うえむらのぶこ 監修・取材協力/丹羽 潔 取材協力/頭痛ーる(提供元/ベルシステム24)
初出『Tarzan』No.879・2024年5月9日発売