“内耳トレーニング”で自律神経を整える。
スマホなどのデジタル刺激が内耳に負担をかけ、聴覚過敏や平衡感覚の乱れ、起立性調節障害などの不調を招く可能性がある。見過ごせない現代人のトラブルをトレーニングで解決しよう。
取材・文/板倉みきこ イラストレーション/ハニュウミキ 監修/藤本 靖(ボディワーカー)
初出『Tarzan』No.900・2025年4月3日発売

教えてくれた人
藤本靖(ふじもと・やすし)/ボディワーカー。〈環境神経学研究所〉代表。教育機関、医療機関、民間企業とともに、自律神経や脳神経に関わる研究開発に取り組む。
耳と神経を脅かす、内耳への過剰な刺激。
聴覚過敏や乗り物酔いしやすい若者が増えてきたことに着目し、産学連携の研究を続けている、ボディワーカーの藤本靖さん。
「研究の中で、聴覚過敏と平衡感覚の障害、起立性調節障害に相関関係を見出しています」
起立性調節障害とは、自律神経が乱れることで、立ちくらみや失神、頭痛などのさまざまな症状を引き起こしてしまう病気。成長期特有のものとされていたが、20代以降にもその傾向が見られる。
「原因として考えられるのが、スマホなどの過剰なデジタル刺激による、内耳機能の衰えです」
耳は外側から外耳、中耳、内耳の3部位で成り立ち、聴覚や平衡感覚を司る重要な場所が内耳。
「内耳は脳の神経と直接つながっているので、衰えたまま放置すると自律神経の乱れが増す可能性が。スマホの刺激から定期的に耳を遠ざけ、内耳機能を蘇らせるトレーニングを取り入れましょう」

内耳は、三半規管、前庭、蝸牛で構成される。三半規管は前後左右、前庭は上下の動きからカラダのバランスを調整。蝸牛は平衡感覚と、音の情報を電気信号に変え、脳に伝える役割がある。
内耳機能の衰えが生む、トラブルトライアングル。
藤本さんたちの研究によれば、聴覚過敏、平衡感覚の乱れ、起立性調節障害には相関関係が見られ、それらが脳の疲労を生み、自律神経の乱れを助長すると想定している。聴覚過敏や抑鬱傾向にある人は、スマホへの依存度が高い、という注目すべきデータもある。
毎日やろう! 内耳トレーニング。
- 壁の前に立ち、視線の高さにポイントを決める。
- 親指を耳の前に、残りの指は後ろを持ち、両耳を軽くつまむ。
- 耳をつまんだままスクワット。しゃがむ時も立ち上がる時も視線はポイントを見続けて行う。