運動後のカラダのケア。漢方的には「流す・伸ばす」に注目(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。連載も今回で最終回、テーマは「巡りの良いカラダを作る秘訣」について。
漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
例年より遅れてやってきた桜のシーズンも過ぎ、半袖になる機会もちらほら。暖かくなってくるとアクティブになりますね。さて、思いっきりカラダを動かした後、どんなケアをしていますか? 今回はケアのお話。
“故障”はアスリートだけじゃない
「アスリートが故障した」となると、競技からの長期離脱、ときに選手生命に関わることもあり、メディアで大きく取り上げられたりします。「これからなのに!」「いま動けないなんて!」と、ファンなら動揺せずにはいられません。この故障という現象、トップ選手だけに起こることでしょうか。
いいえ、決してそうではありません。故障というとちょっと大げさな感じもしてしまいますが、ケガや疲労、局所的な痛みによって日常に支障が出る事態と言い換えたら、ピンとくる人は多いと思います。
一般の人は競技に生活が懸かっているわけではありませんが、趣味程度にフィジカルアクティビティを楽しんでいるときだって故障は避けたいもの。トップ選手ほどの運動量ではないとしても、また必ずしも運動らしい運動を伴わないアクティビティでも、一般の方でも意識してほしい、ケガ、疲労、痛み予防方法があります。
それは、やわらかい筋肉とやわらかい関節をつくることです。
漢方的にも“詰まる”は良くない状態
硬い筋肉や関節は、回復に必要なエネルギーも栄養も届きにくいだけでなく、老廃物を排出したり潤滑剤を供給することもできないので、より硬さが助長される負のスパイラルに陥ります。
力こぶやふくらはぎがパンと張っていたり、首や肩が凝っている、股関節が開かない、そんなカラダになっていませんか? この時に必要なのは、あるべき流れを取り戻すことです。
エネルギー、栄養、潤滑剤と述べましたが、漢方では気血水(きけつすい)という言葉で表します。これらが順調に巡らない状態はいわば病態とみなされ、解決するための治療法や養生法は昔からよく伝わっています。
本来、運動などのアクティブな行為はカラダの巡りをよくするものです。ですがケアを怠ると、逆に巡りの悪い部分を生んでしまうことにつながります。
気血水を「流す・伸ばす」で整える
漢方の原則で言えば大事なのは巡らせること。つまり「流す」こと。運動後のセルフケアとして、押したり揉んだりしながらマッサージされている方は多いと思います。ですが「流す」は意識しているでしょうか。
マッサージするのであれば、部分的にぐいぐい力を加えるよりも、心地よいと感じられるカラダの流れをたどって優しく流してあげましょう。詰まりを解消して気血水の通り道を復旧させることが狙いです。
指や手のひら、専用のローラーやボールを使うのもいいですね。
また、触れてケアすることが難しい場所は良く「伸ばす」こと。硬くて動きの悪い関節も引っ張るように伸ばすことで、気血水の流れを整えることができます。もちろん、無理のない範囲で。
ちょっと意外かもしれませんが、デスクワークなどで同じ姿勢をとり続けたときも運動をしたと見なすことができます。肩や首など、部分的に筋肉を酷使したととらえれば、運動と同じこと。流す・伸ばすのケアが有効です。
生理痛や片頭痛にも効果的
ケガ、疲労、痛みは巡りの悪いところにやってきます。アクティビティの後にはカラダのケアをすることまで、予めプランに入れておきましょう。やわらかい筋肉や関節が養われていると、運動に伴う故障から身を守れるだけでなく、意外にも生理痛や片頭痛などの悩みからも解放されることがあります。
繰り返しになりますが、運動は巡りの悪さを生んでしまうことがあります。きちんとケアすることを覚えておいてくださいね。予防できるトラブルはしっかり予防して、これからの季節を思いっきり楽しんでほしいと思います!
さて、「漢方で作るヘルシーボディ」も、今回が最終稿となりました。拙い文章にもかかわらず読んでくださった読者の方々に、心より御礼申し上げます。
どうもありがとうございました。