プロが教えてくれた正しいサプリの選び方、買い方(後編)
魚にもお肉にも野菜にも果物にも共通するもの。そこには目利きがいて、いいものとそうでないものを分けている。サプリだってそう。選ぶ基準があるから、その道のプロにいいサプリの選び方を教えてもらおう。
取材・文/石飛カノ 撮影/幸喜ひかり イラストレーション/Shu-Thang Grafix 取材協力/田村忠司(ヘルシーパス)
初出『Tarzan』No.877・2024年4月4日発売
エナジードリンクの使い方を間違えない。
気合を入れたいときにエナジードリンクをぐびぐびっと飲んで、仕事や勉強のノルマに取りかかる。カフェインが交感神経を活性化させ、大量に含まれている糖質で血糖値が急激に上がり、確かに一瞬、気力が漲る感覚に。でも、場合によってはその気力が長続きしない。”日本一サプリメントを真面目に考える男”こと田村忠司さんいわく、
「糖質の代謝を促すビタミンB群が十分に配合されていないと、血糖値の急上昇と急降下が起こり、眠気を催すこともあります。カフェインや糖質がたっぷり配合されているタイプのエナジードリンクは仕事や勉強の前に飲むのではなく、エネルギーを必要とする激しい運動の前に飲んで糖質を有効活用することをおすすめします」
GMP認証を見る。
東京都が行った「令和4年健康食品試買調査」によると、健康食品売り場で購入した製品の42品目中24品目、インターネットで購入した製品の83品目中79品目に不適正な表示や広告が見られたという話。 サプリの半数以上が問題ありとは由々しきこと。
そこで、まっとうなサプリを見極める目安となるのが「GMP(Good Manufacturing Practice)規格」。これは原材料、製造、出荷に至るまで製品を安全に作り、一定品質を保つための規格。このマークが表示されている製品は安全かつ品質が保証済み。日本だけでなくアメリカでもGMP規格はあるので、認定マークをサプリ選択の基準にしてみるのも手。
トクホより機能性表示に注目かも!?
特定保健用食品=トクホと機能性表示食品。15ページで述べた通り、前者は保健機能の表示、後者は科学的根拠を基にした機能性が表示された食品のこと。田村さんによれば、近年このふたつの食品のパワーバランスが変わってきているという。
「最近はトクホがどんどん減ってきています。というのもトクホは国の”認可”で機能性表示食品は”届出”。前者の責任は政府に、後者はメーカーにあります。届出の方が手続きが楽なので今はこちらの方が人気なんです。
また、機能性表示食品は消費者庁のサイトでエビデンスがオープンにされているのでいつでもチェックできる。とても画期的なルールだと思います」 消費者にとっては機能性が分かりやすく表示されていれば選択の目安になるし、購入する前に科学的根拠も確認できる。メーカーにとっては届出の手続きが国の厳しい審査を受けるトクホよりはるかに楽。どちらにとっても旨みがあるシステムというわけだ。
痛みの解消でサプリを頼らない。
膝の関節に痛みを感じたので「関節をサポートする」というサプリを飲み始めた。ところが半年、1年経っても痛みが改善せず、医師のもとを訪れたところ重度の変形性膝関節症と診断されてしまった。あと半年早ければ打つ手もあったという、そんなケースも珍しくないらしい。
「軟骨がすり減ったことが痛みの原因だとしたら、軟骨成分を摂って回復することもあるかもしれません。でも、痛みの原因が本当にそうかは分かりませんよね。私も以前膝が痛くなって知り合いの柔道整復師さんに相談したところ、軟骨ではなく太腿の筋肉が衰えていることが原因、と言われました。処方箋は筋トレだったんです」
サプリはあくまで食品。痛みを感じたら医師のもとへ、が正解。
国の定める微量栄養素の必要量を確認する。
ラベルの表示をチェックすることがサプリ選びの基本であることは分かったが、自分が欲しい栄養素が十分に含まれているかどうかを判断する方法が分からない。
その方法のひとつは厚生労働省が定めている日本人の1日に必要な栄養素の平均的数値、「栄養素等表示基準値」を参考にすること。それによると、たとえばビタミンB1は1.2mg、ビタミンDは5.5ug、カルシウムは680mg。
「栄養素等表示基準値はこれくらいの量が入っていれば健康補助食品としては十分ですよという目安になります。ビタミンB1だったら1.2mgでも十分ですが2mg配合している良心的なメーカーさんもあります」
神経症状などが出ている人に処方される医薬品としてのビタミンB1には5mg、もっと言うと10mg相当のものも存在するが、健康な人間が健康維持のために飲むサプリなら、1.2mg配合されていれば上等、と判断してよし。これがチェックできたらかなりのサプリ上級者。
ネットで栄養療法のドクターを探す。
最後は真の上級編。本当に自分にぴったりのサプリメントを探したいのであれば、栄養療法に詳しいドクターのもとを訪れ、サプリのアドバイスをもらうこと。
「予防医療の分野のドクターだけでなく、どこにいるドクターでも栄養の知識は必要です。たとえば私たちの取引先のドクターには歯医者さんがすごく多い。歯医者に来る人は口の中にトラブルがあって物を嚙むのがうまくいかない人たちですよね。だから肉や野菜の摂取量が激減するんです。そういう人に栄養をちゃんと摂ってもらうにはサプリが治療の強力なツールになります。“栄養療法”“サプリメント”“クリニック”といったワードで検索をかけてドクターを探してみてください」
たとえば下のふたつの検査結果は過去に『ターザン』編集部スタッフが予防医療クリニックで受けた血液および尿検査の結果。ミトコンドリア回路が不全なスタッフは現在回路の代謝を促すCoQ10、重金属がどっさり蓄積しているスタッフはキレートサプリメントの補給を続け、健康を保っている。