プロが教えてくれた正しいサプリの選び方、買い方(前編)
魚にもお肉にも野菜にも果物にも共通するもの。そこには目利きがいて、いいものとそうでないものを分けている。サプリだってそう。選ぶ基準があるから、その道のプロにいいサプリの選び方を教えてもらおう。
取材・文/石飛カノ 撮影/幸喜ひかり イラストレーション/Shu-Thang Grafix 取材協力/田村忠司(ヘルシーパス)
初出『Tarzan』No.877・2024年4月4日発売
表示をチェック
市販されているサプリメントは残念ながらすべてが優良とは言えないのが現状。自分の望みを叶える最適のサプリに辿り着くためには選択眼を磨くことが必須。その基本の「キ」が表示ラベルのチェックだ。
ここで〝日本一サプリメントを真面目に考える男”、田村忠司さんにご登場いただこう。
「サプリメントは表に書いてあることより裏のラベルに書いていることの方が重要です。ここから原材料や栄養素・成分の配合量、天然原料由来か化学合成原料かといったことなどが読み取れます」
一般的な加工食品と同様、原材料の表示は含有量の多いもの順に記載されている。目当ての栄養素の表示が一番最後、ほんの気持ち程度にしか含まれていないケースもあるので要注意。
「ただ、葉酸やビタミンB12、ビタミンDなど1日の摂取量がμg単位でどうしても最後の方に表示されてしまう超微量栄養素もあります。その場合は、つなぎの添加物に注目してください。たとえば、つなぎに乳糖が使われていたら牛乳が苦手な乳糖不耐症の人は避けた方がいいですね」
決して安くないお金を支払うのだ。億劫がらず、まずは表示をガン見。中高年は老眼鏡を忘れずに。
上記のような表示が必ずパッケージ裏面にはある。サプリによってはHP上で原材料が何かわかるものも。せっかく買うのだから吟味して選んでみよう。
価格を調べる
サプリ選びの重要な条件が価格。野菜や果物から抽出された天然原料に比べて化学的に作られた合成原料は低いコストで作ることができる。ただし、生成過程でよく似た化学構造の不純物ができてしまうので、この不純物を取り除く手間をかけるほど価格は高くなるという。
原材料名が「大豆」や「トウモロコシ」などの食品ではなく「ビタミンC」など栄養素名の場合は化学合成原料。そして、あまりにも安価な場合は不純物が十分に取り除かれていない可能性がある。
「サプリメントの価格の目安は第3類医薬品のビタミン剤などを参考にするといいと思います。医薬品用に集めた原料で作られているものなので、真面目にサプリを作ればそれくらいの値段になるはず。たとえばマルチビタミン&ミネラルなら1か月で3000円程度が妥当です」
サプリはあくまで健康投資。「激安」という言葉に釣られるべからず。
ブームになっている成分は老舗メーカーから選ぶ
彗星の如く現れ大ブレイクした栄養素は、短期間のうちに同名サプリがズラリと棚に並び、消費者はすっかり迷子。そうした流行の栄養素は玉石混淆。つい最近も高配合を謳ったNMNサプリを検査したところ、一部製品でNMN成分が検出されなかったことが報道された。
「NMNも原料だけで10種類くらいあります。原料のコストの幅はかなり大きくて、一番安い原料を使って新規参入するメーカーや、安い原料でも逆に高価な値段をつけるところも存在すると思います。だからこそ流行の栄養素サプリはきちんとしたブランドを持っている老舗メーカーさんのものを選ぶ方が安心です」
個人の体験談に終始するサプリは選ばない
「なんの我慢もせずにこんなにお腹が凹みました!」「みんなに元気だねって言われるのは毎日これを飲んでいるからです!」「頑固な便秘がウソみたいにスッキリ!」 などなど、有名無名を問わず、サプリを飲んだ結果どうなったかという体験談を披露するあの人この人。
ドキュメンタリー仕立てで体験談がしみじみ語られることもあり、見ているうちに思わずボクも私も、とポチりたくなるのが通販番組のすごいところ。
でもむろん、「テレビでサプリを買うのは絶対やってはいけない行為。テレビやインターネット通販で原材料が表示されるケースはなかなかありません。最も大事な情報源、パッケージの表示を確認できない状態でサプリを買うのは目隠しして歩くようなものです」。 言われてみれば確かにそう。原価ギリギリの価格でサプリを販売している良心的なメーカーもないわけではないが、それも通販番組では確認しようがない。イメージだけでポチる前にリアル検証を。
つなぎの成分をチェック
すでに述べた通り、葉酸やビタミンB12、ビタミンDなどの超微量栄養素の配合量はほんのちょっぴり。そのわずかな栄養素をサプリという形にするためにはさまざまな添加物がどうしても必要になる。
「量産しやすいタブレット形状にするためにはデキストリンや乳糖、麦芽糖などが使われます。また、製造過程で粉の流動性を上げて原料を均一に混ぜ、機械の中で詰まりにくくするためにショ糖脂肪酸エステルといった添加物が使われたり、カプセル素材としてゼラチンやグリセリン、プルランやHPMCという植物性物質などが使われることもあります」
下に示したような添加物はサプリの形を整えるためには必要不可欠かつ健康に害のない物質。牛乳アレルギー体質ではない人にとっては乳糖もノープロブレム。 問題はこれ以外の添加物。たとえばケミカルな着色料や甘味料、香料などは極端に言えばなくてもいい物質。
いらないものが極力排除されたサプリの方がカラダへの負荷は低いと考えられる。表示ラベルをチェックの際は有効成分だけでなく、添加物を確認することも忘れずに。
サプリ製造に最低限必要な添加物
・原料を均一に混ざりやすくするもの
……ショ糖脂肪酸エステル、微粒二酸化ケイ素など
・粉を固めるもの
……デキストリン、乳糖、麦芽糖など
・カプセルの材料になるもの
……ゼラチン、グリセリン、セルロース、プルラン、HPMCなど
輸入サプリを過信しない
サプリ先進国のアメリカ直輸入と聞くだけで、国産品よりなんだか御利益がありそう。とくにカラダ作りに関係するサプリを飲めば、みるみるマッチョになっちゃうんじゃね?というノリで輸入サプリを積極的に取り入れているサプリ上級者は少なくない。
確かに、日本ではまだ周知されていない玄人ウケするサプリも多いので魅力的。ただ、一般論として気をつけるべき点もある。 ひとつは設計が日本人に合っていないケースがあること。海産物を食べる機会が少ないアメリカではサプリにヨウ素が含まれていることがあるが、海洋国家の日本では海藻から十分すぎるほど摂っているので過剰摂取になる可能性が高い。
そもそもカラダの大きいアメリカ人向けのサプリは栄養素が高配合で粒も大きめ。飲みにくいうえに栄養素の過剰摂取に繫がることも。 初心者は自己判断で輸入サプリに手を出さない方が無難。興味があるなら栄養療法の専門家のアドバイスに基づいて取り入れるべし。