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スギ花粉が大量に飛散する年は経済が悪化!? 意外と知らない花粉症の現在地

花粉症

写真/毎日新聞社/アフロ

もはや、花粉症はただの季節性アレルギーでは片付けられない。対策にいよいよ国が本腰を入れて動き出した。経済に与える影響は? 具体的な対策は? そして最新の治療法はどうなっている?

教えてくれた人:大久保公裕さん

おおくぼ・きみひろ/日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学分野教授、同付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長。WHOおよび日本政府の推奨治療法である舌下免疫療法の開発者にして免疫アレルギー性疾患、花粉症治療のエキスパート。

もはや国民病。日本人の4〜5割はスギ花粉症!

日本で初めて花粉症が診断されたのは1961年で、アレルゲンはブタクサ。その3年後の1964年にはスギ花粉症が報告された。以来、スギ花粉症を筆頭に花粉症はどんどん増え続け、現在では日本国民の4割以上、一説には5割近くが花粉症

ちなみに、ヨーロッパではイネ科の植物、アメリカではブタクサ、日本ではスギとその土地固有の植物による花粉症の罹患者が増える傾向にあるという。花粉症治療の第一人者、大久保公裕先生によれば、

「ひとつのものを毎日摂取していると、人間に備わった監視機構がその安全性を疑うようになります。猫と毎日接していれば猫アレルギー、スギ花粉を毎日浴びていればスギ花粉症のリスクが高まります」

まさにスギ花粉真っ盛り。これからデビューする人も少なくないかも。

花粉症の有病率の推移

花粉症 花粉症の有病率の推移 グラフ

1998年から10年ごとに実施されている全国疫学調査によると、スギ花粉症を含む花粉症の有病率は約10%ずつ増加している。2019年の段階で全花粉症は4割超え。

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会のデータより作成

1〜3月は経済効率も低下している

スギ花粉が大量に飛散する年は経済が悪化する。第一生命経済研究所が2023年にこんな報告を行った。過去のデータから7〜9月の平均気温が前年より高いほど家計の消費支出が減る傾向があるという。

夏場の気温が高いとその翌年の1〜3月、スギ花粉の飛散量が増える。すると人々は外出を控え、外食や娯楽、ファッションなどにかける支出が減り、一方で薬やマスクにかける保険医療費、おこもり生活での水道光熱費などが増える。2023年の1〜3月の実質家計消費は平年より3800億円減という試算が出た。

さらに花粉症による労働生産性の低下で生じる経済損失は1人当たり年間20万円弱という別の試算も。仮に就労人口約6700万人の4割がスギ花粉症なら、20万円×2680万人=5兆3600億円の損失だ。

1〜3月期家計消費と前年7-9月期気温の関係

花粉症 1-3月期家計消費と前年7-9月期気温の関係 グラフ

第一生命経済研究所首席エコノミスト・長濱利廣氏のレポート。過去の気象と内閣府データから1〜3月の家計消費と前年の7〜9月の気温差の関係を割り出したもの。前年より気温が高い年ほど消費率は低くなる

岸田首相「花粉症対策は社会問題、3本柱で結果出す」

毎年春には一般消費が減り、生産性はだだ下がり。これはまさしく国家の危機。というわけで、2023年4月の国会で岸田首相が花粉症対策について言及した。要旨は「もはや日本の社会問題」「関係閣僚会議を開催し、情報共有や効果的な対策の組み合わせに取り組んでいる」「ぜひ結果を出したい」。効果的な対策の組み合わせとは、冒頭に示したような「3本柱」。その内訳は次の通り。

  1. 発症等対策…対症療法、免疫療法などの推奨。
  2. 発生源対策…2033年までにスギ人工林の減少と伐採、植え替えの加速を推進。
  3. 飛散対策…民間事業者が行うスギ花粉飛散量の予測精度向上を支援。

ひとつは発症対策で、診療ガイドラインの整備、免疫療法などの周知、治療薬の増産など。ふたつ目は発生源対策。日本の花粉症の多くはスギによるものなので、伐採したり花粉の少ないスギに植え替えるなどして10年後にはスギの人工林を今より約2割減らし、30年後には半減させることを目標に掲げた。3つ目の飛散対策としては、民間事業者が行っているスギの飛散予測の精度をアップデートさせること。

いずれも環境省、国土交通省、厚生労働省、気象庁、林野庁といった多くの省庁が横断的に関わることになる。うまく交通整理を行って結果を出してほしいもの。

花粉症発生源のスギ人工林

花粉症 花粉症発生源のスギ人工林 グラフ

花粉症の発生源となるのは植林されてから20年以上のスギ。現状は棒グラフで51〜55年生がピーク。10年後には黄色いラインへの減少を目指す。

花粉症対策の全体像(案)資料1より

2020年からスギ花粉症薬《オマリズマブ》が解禁

2020年に重症のスギ花粉症治療薬として世界で初めて《オマリズマブ》という薬が保険適用となった。毎年春に花粉症に悩まされてきたニッポン人にとって、これは朗報。とはいえ、この薬自体は古くから存在していたものだという。

「90年代にアメリカの製薬会社が作った薬で、世界中で臨床試験が行われ、重症の気管支炎や蕁麻疹など命に関わる病気には保険適用になっていました。ただ花粉症に関してはどこの国でも認められていなかったのが、3年前に日本で初めて認められたということです」

オマリズマブは花粉が体内に入って作られる抗体の働きの邪魔をしてアレルギー反応を抑える。投与は注射によるもので、花粉の飛散開始後から数週間に一回の頻度で数回注射を打つ。ただし、1回の注射につき1万円以上と高額な薬品なので重症者のみの適用。花粉症デビューしたてという人が予防的には使えないというのが現状だ。

取材・文/石飛カノ 監修・取材協力/大久保公裕(医師、日本医科大学大学院医学研究科教授)

初出『Tarzan』No.875・2024年3月7日発売

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