ランニングを始めたい人へ。健康的に走り続けるために大切なこと
ランニングを始めようと思っても、わからないことが多すぎて、初めの一歩を踏み出せない。そんなあなたのお悩みをすっきり解決! シューズ、ウェアの選び方、練習方法、怪我予防、継続のコツ、ストレッチ…健康的に走るためのコツを教えます。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/イマイヤスフミ(vision track) 取材協力/齊藤太郎(ランニングコーチ、ニッポンランナーズ代表) 編集/阿部優子
初出『Tarzan』No.874・2024年2月22日発売
目次
- Q.運動経験はありませんが走ってみたいです。何から始めればいいですか?
- Q.太っているので、走ると膝に負担がかかりますか?
- Q.ラン用シューズを買うのは初めて。安いモデルをネットで買ってもいい?
- Q.学生時代は体育会系でしたが、10年運動していません。昔のように走っても大丈夫でしょうか
- Q.外に走りに行くのがツラいので冬場はサボってしまいがちです
- Q.レースを目指しているのではないのでウェアはスウェットで十分ですか?
- Q.冬場はとくに喉が渇きません。水分補給は必要ですか?
- Q. 食べてから走る? 走ってから食べる? 食事のタイミングが知りたいです
- 忙しくて走る時間があまり取れません。続けるためのコツは?
- Q.せっかちなのですぐに走り出し、さっさと終わりたいです
Q.運動経験はありませんが走ってみたいです。何から始めればいいですか?
まずは立つ時間を増やしましょう
普段の生活ではデスクワークで座りっぱなし、ランニングするときだけアクティブモードというのはナンセンス。理由は、走るという行為の負荷がかなり高いからです。ピラミッドにたとえると、「寝る」が最低負荷で、その上に「座る」、さらにその上に「歩く」、そして最上段が「走る」というイメージ。
なので、「座る」と「走る」の間にある「歩く」という土台づくりから始めましょう。これを省いていきなり走り出すと、膝や腰などのケガに繫がることもあります。まずは普段から立つ時間を増やし、最低でも1時間くらいは続けて歩く習慣をつけてください。楽に歩けるようになったらランニングの準備は完了です。
Q.太っているので、走ると膝に負担がかかりますか?
土の上を走るのがおすすめです
走るときの着地の衝撃は体重の約3倍。当然、体重が重い人ほど衝撃は大きく、その多くは膝の関節や周辺の筋肉にかかってきます。この負担を軽くするためにおすすめなのが、土の上を走ること。
アスファルトの路面は硬くフラットなため偏った部位ばかりに衝撃がかかります。その点、土や砂の上など軟らかく不安定な場所では一歩一歩脳が修正をかけながら走るので、細かい筋肉に負荷が分散します。また、しっかり路面を捉えて走ろうという意識も芽生えるのでビギナーにはおすすめです。長く走れるようになれば体重も落ちてきて膝への負担も減ります。それまではできるだけ不整地を走りましょう。
Q.ラン用シューズを買うのは初めて。安いモデルをネットで買ってもいい?
必ず実店舗に足を運び、試し履きを
今は実店舗でシューズを買う人は少数派かもしれません。ネットで気軽にシューズを買うのは確かに便利ですが、サイズが微妙に合わなかったり自分のレベルに適さないモデルを買ってしまうこともあります。
また、カラダの進歩よりシューズの進歩が勝ってしまって、指の張力なしでも勝手に前に行ってしまうようなモデルもあります。でもそれは必ずしも初心者が安全に走り続けられるシューズではないので、せっかく買っても使いこなせないことがほとんど。やはり実店舗に行って店員さんに相談しながら試着して、できれば実際に走ってみるのが最善策です。
ちなみにシューズと一緒に足をしっかりサポートしてくれるラン用のソックスも揃えておくと、より安心です。
Q.学生時代は体育会系でしたが、10年運動していません。昔のように走っても大丈夫でしょうか
苦しいと感じない脈拍数を目安に
半年くらい受験勉強に専念して、久しぶりに部活に顔を出して運動中に心臓発作を起こす。そんな学生の事故のニュースがときどき報じられます。現役で部活をやっていたときは心拍数がある程度上がってもそれに耐えられる心肺機能があったと思います。でもしばらくぶりの運動でいきなり心拍数を160、170と上げてしまうと心臓が追いつきません。
それと同じことで、学生時代に体育会に所属していた人は、つい楽しさが勝って運動強度を上げすぎる傾向があるので危険です。最初は必ず心拍数120〜130程度の強度から始めてください。
運動強度と1分間当たりの脈拍数の目安
強度の感じ方(Borg Scale) | きつい〜かなりきつい | ややきつい | 楽である |
---|---|---|---|
評価 | × | ○ | ○ |
60歳代 | 135 | 125 | 120 |
50歳代 | 145 | 135 | 125 |
40歳代 | 150 | 140 | 130 |
30歳代 | 165 | 145 | 135 |
20歳代 | 170 | 150 | 135 |
Q.外に走りに行くのがツラいので冬場はサボってしまいがちです
室内でカラダを温めてから外に出ましょう
朝にしろ夜にしろ、とにかくこの時期は寒くて走り出すまでがひと苦労です。レースに出場するくらいのランナーの場合は、ウォームアップのときは1枚多く羽織って、メイン練習に移るときに脱ぐ、ということをしますが、一般的なファンランナーの場合はそこまでする必要はないと思います。
かといって寒いからとたくさん着込んでしまうと、今度は走っている最中に暑くなってしまいます。普段のランニングウェアのまま室内でストレッチやラジオ体操的な運動でカラダを温め、その後すぐに走りに出ていくという方法を試してみてください。
Q.レースを目指しているのではないのでウェアはスウェットで十分ですか?
脚がもたつくので軽量ウェアがおすすめです
もちろん最初は着慣れたスウェットの上下で走っても構いません。ただ、走る距離や時間が延びてくると、ウェアもランの効率を上げるものに切り替えた方がベターです。
スウェット素材のウェアは保温性や吸湿性が備わっていないので、汗をかくとカラダが冷えてしまいます。また、ボトムスがスウェットだと脚がもたつくので、薄くて風を通さないナイロン素材のような軽量ウェアがおすすめです。
Q.冬場はとくに喉が渇きません。水分補給は必要ですか?
30分以上走るなら必要です
30分程度のランニングなら水分補給の必要はとくにありません。もしそれ以上走るなら、たとえ喉が渇いていなくてもパフォーマンスの低下や脱水症状を防ぐために水分補給は必要です。
周回コースを走るのなら、起点にペットボトルを置いておく、走っている途中、または走った後にコンビニに寄って水分補給をする、10mL強の乳酸菌飲料の容器を再利用して水を入れ、ポケットに入れて走るという手もあります。
Q. 食べてから走る? 走ってから食べる? 食事のタイミングが知りたいです
走ってから食べる、が基本です
当たり前のことですが、食事をした直後には走れませんよね。食後に走るなら食べ終えてから3時間くらい経ってからにするのが妥当です。
また、走る時間帯によっても食事のタイミングは異なると思います。朝だったら水分補給だけして走り、その後に食事。夜遅くだったら夕方におにぎりなど主食系の軽食を食べてから走り、その後におかずだけ食べる。
基本的に走ればカラダに負荷がかかるので、いろいろな組織がそれなりに破壊されます。その修復のために栄養を補給しないとカラダは疲弊していきます。走った後は何かしら口にするのが鉄則です。
忙しくて走る時間があまり取れません。続けるためのコツは?
日常の移動時間をランニング時間に
忙しくて走るためのまとまった時間が取れない。それが原因で長続きしないケースは少なくありません。
仕事が多忙な人は、無理にまとまった時間を取ろうとせず、自宅とオフィスの行き帰りで小走りしたり、できるだけ階段を使ったり、昼休みに15分だけ汗をかかない程度のジョギングをしたりと、日常生活での移動時間を利用して、走る機会を確保してみましょう。
今は普段着で運動できるジムが受け入れられている時代です。スーツ姿でちょこちょこ走る習慣をつければ、1日合計30分程度はランの時間を稼げるはず。その結果、心がけやカラダのモードもアクティブな方向に変わってきます。小さな隙間を利用することから始めてください。
Q.せっかちなのですぐに走り出し、さっさと終わりたいです
ウォーミングアップとクールダウンは取り入れた方がベターです
突然走り出して走り終わったらシャワーに直行。もちろん、それでも走れることは走れます。でも、イメージ通りの走りができなかったり、腰や膝などのケガのリスクが高くなる可能性もあります。
骨盤、肩甲骨、背骨が連動し、体幹がしなることで、きれいなフォームで痛みなく走ることができます。そのために、普段のデスクワークで固まった肩甲骨を動的ストレッチでほぐし、骨盤との連動性を高めることをおすすめします。走る前にカラダに刺激を入れ、ランニングを始めたら刺激した部分が自然と機能するように準備することが大切です。
また、走った後は着地の衝撃で負荷のかかった脚や腰まわりを静的ストレッチでしっかり伸ばして疲労抜きをしましょう。いかにせっかちでも準備とアフターケアは忘れずに。
走る前に
肩上げランジ
両足を大きく前後に開いたランジの姿勢をとり、後ろ足側の腕を半円を描くように上げる。そのまま二の腕を耳の後ろに寄せるイメージで肩を上げる。15回行ったら逆側で15回。
肩甲骨ストレッチ
まっすぐに立ち、息を吐きながら両手を内側に捻りつつ両腕を前方に伸ばす。両膝は軽く曲げる。次に息を吸いながら膝を伸ばして肘を曲げて手前に引き寄せる。15回行う。
走った後に
肩入れストレッチ
両足を大きく左右に開いて中腰になる。腕を伸ばして両手を膝に当て、左右の肩を交互に内側に押し込むようにして上体を捻る。タオルを絞るイメージ。20秒キープしたら逆も。
お尻&腿裏ストレッチ
段差に片足の踵をつけ、太腿の付け根に両手を当てて膝を伸ばす。上体を前傾させて体重をかけながらお尻と太腿裏の筋肉を伸ばす。20秒キープしたら逆脚も20秒。