シラフこそクール!広がる“ソバー”という選択肢
アメリカやヨーロッパの若者の間で広がり認知されるようになった「ソバーキュリアス」=通称“ソバー”という言葉。日本の酒類業界でも一つの大きなトピックとして注目されるノンアルコールカルチャーについて学ぼう。
取材・文/編集部 撮影/藤井由衣、上野留加 取材協力/葉石かおり(酒ジャーナリスト)
初出『Tarzan』No.870・2023年12月14日発売
自由にお酒との付き合い方を選べる時代に
一日の終わりにプハーッと一杯。ストレス解消や楽しみに酒は絶対欠かせない…と考える人もいる一方で、“飲めるけれどあえて飲まない”というスタイルも広がっている。
「Sober(しらふ)とCurious(好奇心)を組み合わせた造語で“ソバーキュリアス”と呼ばれています。2018〜19年ごろに欧米で流行し始め、日本ではコロナ感染拡大期に知られるようになりました」(酒ジャーナリストの葉石かおりさん)
21年に〈アサヒ〉が行った調査では20歳から59歳の男女1万人のうち「飲まない派」が45%。そのうち「体質的に飲めるが飲まない」=ソバーキュリアスを取り入れている人は全体の13・7%に上った。大手飲料各社はノンアルコール飲料の開発にフォーカスし始め、都内を中心にモクテル(ノンアルコールカクテルのこと)を扱う店もひっそりと増えている。みんながポジティブに、楽しく、自由に、お酒との付き合い方を選べるようになってきている。
セレブリティもソバーキュリアス
Z世代だけではない。ダニエル・ラドクリフ、ブラッドリー・クーパー、アン・ハサウェイといったセレブも飲酒しないことを明言。健康やメンタル面への影響を気にかけてアルコール摂取量を減らす人もいる。
広く知られるきっかけになった本
“ソバーキュリアス”という言葉が認知されるきっかけとなったルビー・ウォリントンによる著書。日本では2021年に翻訳版が発売された。『飲まない生き方 ソバーキュリアス』(方丈社)1,760円。
SNSでも盛り上がる”ソバー”なシーン
パンデミック以降、TikTokやInstagramではノンアルカクテルのレシピ映像が人気に。インフルエンサーの@mocktailgirlieはフルーツを使ったモクテルの作り方を紹介。どれも華やかで美味しそうなものばかり。
モクテルを楽しもう!
お酒を飲めないからといってバーを避ける必要はない。前述の通りノンアルコールのお酒を提供する場所は増えており、オリジナルの“モクテル”(ノンアルコールカクテルのこと)を飲みに行くことが一つのムーブメントに。
銀座の〈BAR 5517〉ではロックダウンの酒類提供自粛に伴ってモクテルの提供をスタート。客層は幅広く新規客も多い。アットホームな店内では“人生初”のバー体験を楽しむ人も。「バーはハードルが高いと思われがちですが、お酒の苦手な方にもぜひ雰囲気を味わっていただきたいです」とはチーフバーテンダーの湯浅和希さんの言葉。飲まない、飲めない、でも楽しみたい。そんな人たちを支えている。
BAR 5517
- 住所:東京都中央区銀座5-5-17 三笠会館本店B1
- TEL:050-3134-5673
- 営業時間:15:00〜23:00(L.O.22:30)
- 定休日:日・祝・月曜、年末年始
買えるノンアル
新しい音楽との出合いを求めてレコード屋巡りを欠かさないように、世界中のノンアル飲料にアンテナを張り巡らせて日本中に届ける場所がある。東京・学芸大学の〈Cafe MARUKU〉だ。作家の顔を持つ店主の桜井鈴茂さんと、パートナーの髙橋のぶ子さんはどちらもソバー。
「お店を開く前までは毎日際限なく飲んでいました(笑)。健康のことを考えた時に、ドイツのノンアルビールを飲んでみたらとても美味しくて。酒を飲まないからというネガティブな理由ではなく、単に“ノンアル”という種類の酒にシフトチェンジしたという感覚です」(桜井さん)
Cafe MARUKU
- 住所:東京都目黒区鷹番3-20-2
- TEL:03-6451-0944
- 営業時間:火〜金曜18:00〜23:30、土・日・祝日17:00〜23:30
- 定休日:月曜
- ECサイトでは数十種類のノンアル飲料を発売中。
「お店を開く前までは毎日際限なく飲んでいました(笑)。健康のことを考えた時に、ドイツのノンアルビールを飲んでみたらとても美味しくて。酒を飲まないからというネガティブな理由ではなく、単に“ノンアル”という種類の酒にシフトチェンジしたという感覚です」(桜井さん)
店には多くのノンアルメニューが並ぶ。その一部をお見せしよう。
1.ローアルコール(9%)の《シャルドネ》(グラス825円)。
2.アルコールゼロのスパークリングワイン《ピエール・ゼロ・ブラン・ド・ブラン シャルドネ》(1,045円)。
3.新潟のクラフトジン《YASO GIN》(グラス935円)もアルコールゼロ。
4.メルボルンのブルワリーが造った0.5%ビール《モリーローズ》(990円)。
5.ビール好きにお馴染み《エルディンガー》もアルコールフリーに(715円)。
6.店舗オリジナルビール《マルク アルコールフリー スタウト》(715円)。
7.日本初、ノンアル専門醸造所生産のビール《シラフィティ サワー エール》(880円)。
8.20mgのCBDを使用した《ブラバス ウォールCBD スパークリング ホップウォーター》(990円)。
9.洋梨の一番搾りストレート果汁のみを使用したスパークリング《ラシャス・ジュドポワレペティアン》(1,045円)。
10.酸味の効いた《ペピネル・フラワー・シードル》(1,045円)。
11. スコットランド発のクラフトノンアル《ブルーロ》(880円)。
12.ノンアルコールのティーシャンパン《ラルチザンデュテ・ホワイトティ・スパークリング》(1,100円)。
13.アルコールフリーの《タンカレー》(グラス990円)。
14.オーガニックのノンアルコールワイン《ルッソリー》(グラス880円)。
ノンアル飲料はお店で飲めることはもちろん、購入して持ち帰ることも可能だ。