「しゃっくり」は未病のサイン? 原因と効果的な漢方薬(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「しゃっくりの原因と対策」について。
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。漢方の魅力を現代に合わせて発信しています。
しゃっくりが出るきっかけ、原因とは?
あれよあれよと年末です。コンサートや忘年会、クリスマスパーティーなどなど、規模の大小を問わずなにかとイベントの多い時期です。かつてのような賑やかな12月がようやく戻ってきて、ワクワク感もひとしおですね。
さて、そんな12月によく見られる未病のサインに「しゃっくり」があります。しゃっくりは横隔膜の痙攣と説明されますが、そもそもしゃっくりが出るきっかけ、原因は何でしょう。
一番に思い浮かぶものとしてお酒の飲みすぎがありますね。千鳥足の酔っ払いが「ヒック」なんて赤い顔をしているシーンはよくある描写です。12月はイベントも多く飲酒の機会が増えますから、こんな人に出くわすこともあるでしょう。
一方ノンアルコールなのに、同じくパーティーの席などでしゃっくりが出てしまう方もいらっしゃいます。こちらは暴飲暴食や急な食事(宴席に遅れたので急いで食べたなど)によって横隔膜が刺激されたことが主な原因と考えられます。
12月がしゃっくりの季節というのには、こうした飲酒や食事の機会が増えることに加えて、もう一つ理由があります。胃腸の冷えです。
意外に思われるかもしれませんが、胃腸が冷えている人はしゃっくりが出ます。連日冷たい飲み物を飲んでいる、生ものや砂糖たっぷりの甘いものを口にする機会が多い、屋外または寒い部屋で過ごすことが増えているなど、いずれも胃腸を冷やすリスクが高い方々です。
しゃっくりは漢方薬でもアプローチできる
胃腸などの消化器官は生き物としてとても基本的な部分で、ここが健全であることは全身の健康の要とも言えます。
胃腸の冷えからしゃっくりが出る方には「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」という漢方薬がよく効きます。
4種類の生薬からなる呉茱萸湯ですが、主薬(ブレンドされた生薬の中で最も特徴的で効果を期待されるもの)である呉茱萸はミカン科植物の未成熟な果実です。
この呉茱萸には「温中散寒」の作用があります。温中散寒とは、カラダの中心である胃腸をあたためて、冷えを小さくバラバラにして消し去る、そんなイメージです。
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は知名度からするとそれほどメジャーな処方ではありませんが、頭痛に効く漢方薬として処方されることがありますので、頭痛持ちの方はお世話になったことがあるかもしれません。
やはり胃腸に冷えを持っている方の頭痛に著効を示します。別の言い方をすると、胃腸に冷えを持っていると頭痛を引き起こすことがあるということです。
もちろんそれだけではなく、胃腸の冷えが吐き気や、さらには生理のトラブルなどに発展する体質をつくることは珍しくありません。しゃっくりはまさに、未病のサインなのです。
未病のうちに対策を
しゃっくりは他にも、薬の副作用やストレスなどでも惹起されます。原因がわかっていれば心配しすぎることもありませんし、対策も取りようがあります。“たかがしゃっくり”と侮らず、カラダからのサインと受け止めて対策されるとよいでしょう。
飲食に注意するのはもちろん、着脱しやすい服装にしたり汗の始末にも気を配るなど、外からの対策も有効です。イベントと寒さの重なる12月、養生を忘れず楽しくお過ごしください。