本当にカラダが欲している食材は?「味覚迷子」を脱する4つの方法(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)

「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「味覚迷子」について。

「味覚迷子」を脱する4つの方法

漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。漢方の魅力を現代に合わせて発信しています。

本当に今、自分が食べたいものは何か

あまりに暑すぎた今年の夏、11月に入っても夏日を記録するなどその尾も長く、心身ともに夏バテしそうな手ごわいシーズンとなりました。季節を意識した恒例の企画やイベントが現実にフィットしないことも多く、翻弄された方もいらっしゃったことでしょう。

月末になってようやく、暦と体感する気候のギャップが埋まってきた気がします。店頭に並ぶ旬の食材も秋冬を感じさせるものが増えましたね。牡蠣、サンマ、白菜、蓮根、みかん、りんご、などなど。

こうして列挙した食材に「これ食べたい!」とピンとくるものはあるでしょうか。好きなものを食べるのは養生のとても重要なポイントです。ただし、本当に自分が今食べたいものは何か、これを感じ取ることが何より大事なんです。

生活習慣の乱れで起こる「味覚迷子」

食卓

カラダは本来、自分に必要なものを素直に求めます。酸味でストレスを逃がしたり、苦味で熱を冷ましたり、薬膳の効果はこの冴えた味覚があってこそ十分に発揮されます。

ところが、普段から味付けの濃いものばかり食べていたり寝不足などで感覚が鈍ってしまうと、自分の好きなものが分からない「味覚迷子」に陥ってしまいます。

自分の今のカラダに必要なものがわからないと、本来食事で得られる回復力や老廃物の排出、代謝といったいい巡りを自ら手放すことになります。

「味覚迷子」から脱却するには?

貝のスープ

今食べたいものがわからないとき、冴えた味覚やこれが食べたいという欲求を取り戻す方法がいくつかあります。

まず一つ目は加工食品を避けること。加工食品に含まれる食品添加物には、そもそも味覚をコントロールしてしまうものがあります。

加工食品の日常的な摂取から塩分過多になるのは、正常な味覚が奪われ、行き過ぎた塩味をも美味しく感じるようになってしまうからです。食品添加物でマスクされなければ、私たちのカラダは濃すぎる味付けを避けるものです。

二つ目は素材の味を味わえるスープをいただくこと。鰹節などはおだしの代表ですが、他にもきのこや貝からも美味しいスープが作れます。

ところで味覚には腸内環境が関わっていることをご存知でしょうか。腸内細菌たちは宿主であるヒトの好みをコントロールして、自分たちが生きるためにいいエサをヒトに食べてもらおうとします。脳腸相関の面白い例ですね。

せっかく作るカラダのためのスープは、きのこやごぼうなど、味が出てかつ腸活にも繋がる素材を選ぶのも一手です。

三つ目はよく噛むこと。味わうことは味覚を鍛える基本ですね。痩せている人、太っている人、中肉中背の人、体型に関わらず現代人はこれが苦手のようです。

噛まなくても飲み込める食べ物が増えたのか、タイムパフォーマンス重視で食事に時間をかけられないのか、理由はいろいろ考えられますが、噛むことで唾液の力をしっかりと使えれば、あらゆるパフォーマンスの向上が期待できます。

唾液は消化力だけでなく免疫力を高める働きもあります。また消化で節約できたエネルギーは他の代謝反応に分配できることになり、自己治癒力や睡眠の質の向上にも繋がります。何としても改善、獲得したい習慣ですね。

四つ目は、食べるのを休む。食べたい感覚がないとき、お腹がすいていないとき、食事を一回飛ばしてリセットすることも有効です。

カラダに耳を傾けるのが養生の第一歩

こんな体質にはこの味覚、と相性のいい組み合わせはある程度知られていますが、私たちのカラダは毎日同じではありませんよね。

季節によって、その時の体調によって、ここぞというときほど素直なカラダの声をキャッチできるように、普段から冴えた味覚を維持しておきましょう。自分のカラダがよくわかるようになると養生が自然と上手くなります。