PFCバランスってなに?:コンディショニングのための「食と栄養」基礎知識
連載「コンディショニングのひみつ」。長期的なコンディショニング戦略に不可欠な「食と栄養」を、その基礎知識とともに複数回にわたって解説していく。今回は「PFCバランス」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.868・2023年11月2日発売
PFC=カラダの各組織を作り、エネルギー源となる3つの栄養素
トレーニングではもちろん、仕事などの日常生活においても、体調をコントロールするうえでは長期的な視点に基づく「食と栄養」の知識が欠かせない。
前回(TarzanWebの記事:“糖質過多”の何が問題か)は、旧来“3大栄養素”と呼ばれ、カラダが必要とする「エネルギー産生栄養素」のうち、ご飯やパンなど「炭水化物(=糖質)」の摂りすぎによる問題を提起した。
これを受け、今回は食事の摂り方で知っておくべき「PFCバランス」について解説しよう。
PFCとは、カラダの各組織を作り、エネルギー源となる3つの栄養素「タンパク質(Protein)」「脂質(Fat)」「炭水化物(Carbohydrate)」それぞれの頭文字からなる言葉。
エネルギー産生栄養素のバランスが重要
日頃の食生活では、タンパク質(Protein)・脂質(Fat)・炭水化物(Carbohydrate)のバランスを意識することが重要。それぞれの所要量は、1日に必要とする総エネルギー量から算出できる。
まず1つ目のタンパク質は、筋肉や血管、皮膚や髪といったカラダの各組織を構成する主成分だ。また脂質は、細胞膜やホルモンの材料として、またエネルギーを蓄えたり、体温を保つなどの役割を持つ。
そして筋肉、また脳にとっては唯一のエネルギーとなるのが炭水化物。これら3つのバランスを意識することで、それぞれが目指す健康的なカラダづくりを実現できるというわけだ。
なお、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」以後、この名称を「エネルギー産生栄養素バランス」に変更したが、ここでは一般的に広く知られる「PFCバランス」の表記で説明を進めていく。
理想的なPFCバランスは運動量にも左右される
一般的な日本人におけるPFCバランスの平均は、かつてはP=15%、F=25%、C=60%ほどといわれてきた。だが食生活が多様化・欧米化した現代では、P=15~20%、F=30~35%、C=50%といった具合に変化したとされている。
さらに理想のPFCバランスは、日頃の運動量にも左右されるものだ。継続したトレーニングを行う場合などはタンパク質の割合を増やし、P=25%、F=25%、C=50%程度を目安にするといいだろう。
一方、炭水化物をごく低値に抑えるのが、いわゆる「糖質制限」と呼ばれる食事法だ。ストイックに行う場合は10%程度が目安とされるが、カラダに蓄えられ、糖質に代わって働くケトン体をエネルギー源として使えるようになるまでには相応の時間がかかる。
低血糖によるフラつき、代謝や筋肉量の低下、ダイエットではリバウンドのリスクなども伴うため、極端なPFCバランスを長期間続ける食生活には注意したい。
具体的な所要量(摂取量)は総エネルギーから算出
さて、PFCバランスに基づくエネルギー産生栄養素の具体的な所要量は、1日で摂取すべき総カロリーから算出できる。覚えておきたいのは、1g当たりのエネルギー量が各栄養素で異なること。タンパク質と炭水化物は4キロカロリー/1g、脂質は9キロカロリー/1gとなる。
例えば30~49歳の男性で生活活動レベルが中程度の場合、厚生労働省が定めたエネルギー所要量は1日当たりで2700キロカロリーだ。
そこでPFCバランスを25%:25%:50%と定めた場合、炭水化物で占めるエネルギー量は1350キロカロリー。これを1g当たりのエネルギー量で割ると、摂取すべき炭水化物量は約338gとなる。
同様の算出法で、タンパク質が約169g、脂質で75gといった具合だ。食事の材料やメニューを選ぶ際には、ぜひ参考にしたい。続く次回はPとF、つまりタンパク質と脂質の賢い選び方について解説していこう。
復習クイズ
答え:9キロカロリー