“糖質過多”の何が問題か:コンディショニングのための「食と栄養」基礎知識
連載「コンディショニングのひみつ」。今回から複数回にわたり、なかでも長期的なコンディショニング戦略に不可欠な「食と栄養」を、その基礎知識とともに解説していく。初回のテーマは炭水化物について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.867・2023年10月19日発売
ご飯やパン、麺類やお菓子の食べ過ぎにくれぐれもご用心
「コンディショニング」の目的とは、筋力や持久力は言うまでもなく、日常生活においても安定した体調(=コンディション)を維持してより高いパフォーマンスを得ること。
そこで本連載では複数回にわたり、なかでも長期的なコンディショニング戦略に不可欠な「食と栄養」を、その基礎知識とともに解説していく。
初回のテーマは「炭水化物(=糖質)」について。
筋肉や脳などのエネルギーに欠かせない栄養素だが、見逃せないのが“糖質過多”の問題だ。マラソンのトレーニング中でもない限り、米や小麦粉、砂糖たっぷりの食生活が常態化しているなら要注意。
以下、問題となるメカニズムと具体的な対策を解説していこう。
体内で脂肪に変換される
食事で摂取した炭水化物は小腸から肝臓を経由し、「血糖」となって血液中に入り込む。すると膵臓から分泌されたインスリンが細胞へ血糖を取り込むように促し、これが全身のエネルギー源となるのが第1段階。
ここで使い切れなかった糖質は、インスリンの働きでグリコーゲンに変換され、肝臓や筋肉に蓄えられる。とはいえその備蓄量にも限りはあり、さらに余った糖がインスリンの作用で中性脂肪に作り替えられて、脂肪組織や筋肉、血液中などに蓄えられるのだ。
これが脂肪タプタプなメタボ体型の原因になるだけでなく、血管壁に蓄積することで動脈硬化の元凶に。また過剰な中性脂肪は、糖尿病、脂肪肝といった生活習慣病を引き起こすことでも知られている。
血糖値スパイクの問題
炭水化物のドカ食いによるリスクでもうひとつ注目すべきが、「血糖値スパイク」の問題だ。通常であればゆるやかに変動する血糖値が、こうした食事によって急上昇。インスリンが大量に分泌されて、今度は血糖値が急激に低下してしまうのだ。
血糖値スパイクに要注意
血糖値の変動を比較したイメージ。食後の血糖値が急上昇し、直後に急降下する様子がトゲのように見えるのが「血糖値スパイク」だ。通常の健診では発見されない“隠れ糖尿病”予備群にもなる。
血糖値の乱高下は食後の強い眠気やだるさを招くだけでなく、血管の内壁を傷つけて動脈硬化を進行させる。しかも血糖値スパイクがやっかいなのは、一般的な健康診断では見逃されがちなこと。
膵臓を疲弊させ、インスリンの分泌が減少して糖尿病を引き起こすほか、心筋梗塞や脳卒中など重篤な疾患のリスク因子にもなるのが怖いところだ。空きっ腹で甘いお菓子やスナックなどを食べる習慣も、この機会にぜひ見直したい。
高血糖を防ぐ食べ方
血糖値スパイクは、食べ方の工夫によって改善できる。まず意識すべきは、野菜メニューを先に食べる「ベジファースト」。食物繊維が糖の吸収をゆるやかにする効果は広く知られるところだ。
続いて、しっかり摂取したいのが肉や魚などのタンパク質。水分摂取とともに満腹感も得られる汁物もぜひ取り入れたい。
血糖値の急上昇を防ぐ食べ方
最初に野菜を食べる「ベジファースト」が基本。続いてタンパク質メニューや汁物でお腹を満たし、炭水化物は最後にしよう。食物繊維が豊富な、精白されていない玄米や全粒粉を選べるならベスト。
続く次回は、炭水化物とタンパク質、脂質の3大栄養素の適切な摂取量について解説していく。
復習クイズ
答え:中性脂肪