筋肉と腸が影響し合う「筋腸相関」
ストレスを受けるとお腹が痛くなるように、脳が腸に影響を及ぼす「脳腸相関」は知られているが、近年新たに筋肉と腸が影響し合う「筋腸相関」の仕組みが解明されつつある。
研究の最前線に立つ京都府立大学大学院の青井渉准教授に聞いた。
「筋肉から分泌される生理活性物質の総称をマイオカインと呼びますが、運動すると分泌される善玉マイオカインが骨や血管、脳や腸といった全身の臓器に良い影響を与えることがわかってきました。
40種類以上あるマイオカインのうち、SPARCというものが大腸がんの前がん病変細胞を消滅させていることも判明しています。
筋トレでも有酸素運動でも、筋肉を使うことでその成長に繫がるのはもちろん、腸の状態も改善できる可能性が高いのです」
SPARCが大腸がんを抑える
マウスにSPARCを投与すると、SPARCの量が多いほど大腸がん病変の形成が抑制された。
さらに青井先生は、腸で吸収された食べ物が筋肉に影響を及ぼすメカニズムについても研究を進めている。
「食品添加物や高脂肪・高糖質食を長年摂り続けると腸バリア機能が低下。炎症物質が筋肉に達して慢性炎症状態となり、持久力ダウンや疲労感をもたらします。
逆に腸内環境に良い成分を摂れば筋肉量やエネルギー代謝量のアップにも繫がります」
つまり筋肉を増やしたければ乳酸菌や食物繊維を積極的に摂り腸内フローラを整えることも必要だ。
また京野菜のカツラウリやアスタキサンチン、βカロテンなどの抗酸化成分を組み合わせて摂ることでも筋肉の働きを高めることが分かったという。
筋肉から腸へ
2021年のがん死亡数の内訳を見ると、大腸がんは女性1位、男性2位。年間5万人以上が大腸がんで亡くなっている。運動でリスクが減らせるなら、今からカラダをしっかり動かしたい。
腸から筋肉へ
腸から吸収されることで、筋肥大やエネルギー代謝アップに繫がる栄養素や食材はさまざま。青井先生は、今後運動の効果を底上げする機能性食材の開発にも取り組みたいと語っている。