電車で突然襲う腹痛。向き合うために知っておくべき、過敏性腸症候群と「腸脳相関」
脳がカラダのすべての機能を司っている、という認識は今や誤りである。とくに腸は、自律神経などを介して脳と情報を交換し合っている。ゆえにストレスを改善するのなら、腸のメンテナンスも欠かせない。慢性的な腹痛に悩まされる「過敏性腸症候群(IBS)」をはじめ、いま注目されている「脳腸相関」の仕組みを知っておこう。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/おほしんたろう 監修/水上 健(久里浜医療センター内科医)
(初出『Tarzan』No.766・2019年6月13日発売)
脳と腸は対話している。
カラダのすべての機能を司っているのは脳。この常識は今や非常識になりつつある。とくに腸に関しては脳から腸に一方的に指令が下るわけではない。自律神経やホルモンを介して腸からの情報が脳に送られることが分かっている。
腸の調子が良ければ脳はリラックスし、その逆ならストレスフルな状態に。また、脳がストレスを受けると腸に不調が生じるという具合。
便秘や過敏性腸症候群(IBS)の診断・治療のオーソリティ、水上健さんによれば、IBSの原因のひとつはまさに脳腸相関。
「最近では、腸の神経にあるセロトニンに作用して大腸の動きを抑制するイリボーといういい薬が出てきました。セロトニンは腸内で作られている脳腸相関に関わる物質。IBSの治療にはかなり有効です」。
IBSの原因はさまざまだ
水上さんによれば、男性はほとんどが下痢型のIBSで、その半分がストレスによるものだという。
「私が診ている患者さんの割合では、半分がストレスで約3割は食事を摂ることで起こる単純性下痢症、牛乳や小麦粉などフォドマップというある種の食事を摂ると下痢をするタイプは4%程度。残りが腸の変形などが原因の治療が難しいタイプ。このうち、自分で何とか対処できるのがストレス性IBSです」
アルコールや油っこいもの、コーヒーなど下痢しやすい食べ物は控えるなどの食事療法である程度の改善が見られ、イリボーが効きやすいのもこのタイプ。改善が叶いやすいということは、むしろストレス性でラッキーとも言える。
3. ストレス性IBSに陥ったら
IBSで最も典型的なのが、通勤電車に乗る度に下腹部がゴロゴロ鳴り、下痢の症状が出るというケース。
「通勤電車で漏れそうになると、それが恐怖体験になります。気にしなければ病気として成立しませんが、嫌な記憶を忘れられず恐怖心を抱くことでIBSが発症します。電車に乗るときや会議に出席するときのストレスのかわし方を覚えましょう」
IBSの薬を併用しながら、頭の中で嫌な記憶に×をつけて消去する。これを繰り返すことで改善していく患者は少なくないという。
「大切なのは朝食後にしっかり排便をすること。そして、電車でパニックになったら目を閉じる。そして深呼吸をしましょう。1分間くらい深呼吸を繰り返しているうちにリラックスできるはずです」