中村直樹さん
教えてくれた人
なかむら・なおき/理学療法士。一般社団法人アジアNOVASTストレッチ協会代表理事。トレーナーとしてプロゴルファーの指導経験のほか、愛知・一宮市でコンディショニングサロン〈RIPS!!〉運営、運動器疾患のリハビリなども行う。
関節を取り囲む支持組織が安定した動きを生み出す
ローカル筋
ここでの主役で、深層部に存在するインナーの筋肉。1つの関節をつなぐ単関節筋で、関節包や靱帯を守る“動的な支持組織”の一面もある。関節の安定性に寄与し、運動パフォーマンスを上げ、疲れない・正しい姿勢を保つうえでも不可欠な筋肉だが、グローバル筋の緊張によって働きが妨げられやすい。
グローバル筋
2つ以上の関節をまたぐ多関節筋で、アウターマッスルと同義。カラダの大きな動きを行うときに働くが、姿勢の悪化や動きのクセなどで過剰に緊張して凝り固まりやすい。
目次
股関節の外旋筋でもある骨盤底筋群の支持基盤“内閉鎖筋”
内閉鎖筋は、大きく異なる2つの役割を持つマルチな筋肉だ。解剖の教科書的には股関節のローカル筋群「深層外旋六筋」のひとつに分類され、その名の通り、股関節を外旋させるユニットの一部として働くものと見なされている。
内閉鎖筋(ないへいさきん)の基本情報
- 起始:閉鎖膜内側3分の2、閉鎖孔の骨盤側
- 停止:大腿骨転子窩
- 神経支配:第5腰椎、第1~2仙骨の前枝
- 作用:股関節の外旋
一方で注目すべきは、これが「骨盤底筋群」の一部をなす筋肉でもあり、その支持基盤として体幹の安定に大きな役割を果たしている点だ。内閉鎖筋をその構造から見ると、坐骨の上に位置する穴(閉鎖孔)を覆って隙間の一部をカバーしているというのが理由のひとつ。
さらにこの部分が「腸骨尾骨筋」と筋膜で連結することで(より具体的には腸骨尾骨筋の起始部となって)、骨盤の働きをコントロールする“土台”としての重要な働きを担っているのだ。
仙腸関節の中間位を保ち体幹のバランスを取る
骨盤底筋群が体幹を支えるうえで、カギとなるのが「仙腸関節」。仙骨と腸骨の間にあって動かない、というのはかつての通説。実は仙骨が前後2度の範囲で傾き、これが体幹のバランスにも大きく関与すると近年の研究では明らかになっている。
ここで連携して働くのが、骨盤を前後からつなぐ腸骨尾骨筋・恥骨尾骨筋と内閉鎖筋。ゆるんで前傾した仙骨を下から引っ張り(これをカウンターニューテーションという)、仙骨をニュートラルな中間位に安定させるのだ。
骨盤底筋群が弱りやすい女性に反り腰が多いのも、この働きが低下しているのが理由のひとつ。腰痛の原因にもなるため、仙腸関節のニュートラルポジションが重要なのは男性にとっても同様だ。
必要なのは、緊張した股関節まわりのグローバル筋をゆるめ、癒着しやすい内閉鎖筋の付着部をほぐすこと。骨盤底筋群だけでなく、求心力があって安定し、スムーズに動く股関節の機能も同時に改善できる。
ローカル筋活性化エクササイズのやり方
STEP1 ゆるめる|グローバル筋ストレッチ
ローカル筋が持つ本来の機能を妨げるグローバル筋の硬さや緊張をゆるめる。ただし長時間伸ばしすぎると深層のローカル筋までが不必要にゆるんでしまうため、ストレッチは10~20秒までにとどめたい。
STEP2 活性化|ローカル筋エクササイズ
ローカル筋の働きを取り戻すエクササイズを行い、滑らかに動く体幹コントロールに必要な、筋肉の協調性が取り戻す。
STEP1 ゆるめる|グローバル筋ストレッチ
大臀筋のストレッチ
股関節の屈曲・内旋、骨盤の安定などを妨げる大臀筋の硬さをストレッチ。座って片脚を内側に曲げ、膝を両手で外から抱える。できる場合は胸に引き寄せ、10~20秒で反対側も。
中臀筋のストレッチ
硬くなると、股関節の内旋・内転、骨盤の動きなどを制限。曲げた脚をクロスして膝を立て、反対の肘で固定して上体をねじる。中臀筋の伸びを意識して10~20秒。反対側も行う。
STEP2 活性化|内閉鎖筋トレーニング
内閉鎖筋が付着している大転子(脚の付け根の側面で骨が出っ張った部分)の皮膚をつまみ、癒着をリリース。膝を伸ばし、踵を支点に足先をゆっくり左右へ動かして股関節を内外旋。20往復で反対側も。