膝を曲げるとパキッ音や違和感…。それ「タナ障害」かも
連載「コンディショニングのひみつ」第42回。膝関節の障害と、そのコンディショニングについて解説するシリーズの4回目は「タナ障害」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.849・2023年1月26日発売
膝に痛みや違和感を感じる「タナ障害」
普段、耳慣れない部位ではあるが、「タナ」とは膝関節を覆う関節包の内側にある滑膜がヒダ状になったもの。これが膝の皿(膝蓋骨)と大腿骨の間に棚のように張り出して見えるため、この名が付けられている。
この滑膜ヒダ、ヒトが母胎にいる胎生期に関節包が作られる過程において一時的に作られるもので、本来は生後、成長するとともに消失していく。しかし日本人の約5~6割は大人になっても残るとされ、これがタナ障害の原因となるものだ。
ただしタナがあっても障害は必ずしも起きるわけでなく、大きく厚みがある、膝蓋骨の内縁に近い位置にあるなど、個々におけるタナの器質的な形状も大きく影響する。これが膝の屈曲によって膝蓋骨と大腿骨の間に挟まったり、こすれたりして、傷や炎症が引き起こされるのだ。
そのため、膝の曲げ伸ばしやひねりの動きを繰り返すスポーツや動作などはきっかけにはなるものの、普通の日常生活の活動レベルでも障害は起こり得る。
また発症は10~20代の若い世代や、また男性よりも女性の割合が高いともいわれている。これらの点からも、タナ障害は他のスポーツ障害とは性質の異なる膝関節の疾患といえるだろう。
タナ障害の症状の特徴は?
初期の症状としては、膝の内側に引っかかる感覚や、何か挟まるような重苦しい違和感があったり、またしゃがむときに“パキッ・コキッ”と音が鳴るケースも多い。
膝蓋骨の内側を親指で押さえ、膝を屈伸させるとこうしたクリック音がしたり痛みを自覚するときは、タナ障害を疑ってみてもいいだろう。
症状は、やがて進行すると、膝をスムーズに動かせなくなったり、強い痛みを感じたりする。
ちなみにこの痛みは半月板損傷と似た部位に発生しやすく、痛みが出て初めて医療機関を受診すると、X線検査などで半月板に所見が見られないためにタナ障害が疑われるというケースも多いようだ。
手術が必要な場合は、関節用の内視鏡を用いた関節鏡手術で滑膜ヒダの切除を行うのが一般的だ。
治療の第一の選択肢は保存療法
とはいえ、治療でまず第一の選択肢となるのは保存療法。
特に太腿の前後から大腿骨と脛骨をつなぎ、膝関節の動きを支える筋肉が硬くなると、関節の隙間が狭くなってタナが挟まりやすい。運動する場合はもちろん、日頃からもこれらのストレッチ&リリースをぜひ意識しよう。
なかでも重要なのは、膝の屈伸で主に働く前腿の大腿四頭筋。ここへは、なぞるだけのソフトな刺激で筋肉の緊張をほぐすマッサージローラースティックの使用を推奨したい。
腿裏で硬くなりがちなハムストリングスとともに、筋肉の張りを感じたらいつでもこまめにケアしよう。
予防・改善エクササイズ①
マッサージローラースティックを両手で持ち、前腿の大腿四頭筋が走行する鼠蹊部から膝までを縦・横に満遍なく、気持ちいい範囲でほぐす。1日3回程度を推奨。
予防・改善エクササイズ②
腿裏のハムストリングスは筋膜フォームローラーでほぐそう。太腿を乗せて両手でカラダを支え、尻から膝裏までを前後に往復。
また、同じ姿勢を取り続けるのも大腿四頭筋を硬くする大きな要因だ。もし座りすぎの生活習慣があるなら、タナ障害をはじめとした膝の疾患を防ぐためにもぜひ、見直しをしたい。
復習クイズ
答え:大腿四頭筋