膝軟骨がすり減り、痛む「変形性膝関節症」原因と対策は?
連載「コンディショニングのひみつ」、第39回からは「膝関節に数多く起きる障害」を複数回にわたって解説していこう。今回は膝関節の軟骨がすり減って加齢とともに進行する「変形性膝関節症」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.846・2022年11月24日発売
軟骨がすり減って起こる「変形性膝関節症」
人体における関節のうち、体重を支える膝は特に痛みを生じやすい部位として知られる。今回からは膝関節に数多く起きる障害について、複数回にわたって解説していこう。
そもそも膝関節を痛めやすい原因は、その構造と位置関係にある。
全方位的に動く足首と股関節の中間にあって、膝が行うのは曲げ・伸ばしの動きのみ。そのため足首や股関節の可動域が少しでも制限されると、間に位置する“中間関節”の膝がねじれて負担がかかりやすいのだ。
今回のテーマ「変形性膝関節症」は原因によって2種の分類があるが、このうち大多数を占める「一次性」の変形性膝関節症は、こうした回旋ストレスによる障害の最たるもの。
もともと歪みを生じやすい膝関節に加齢や過体重などの要因が加わり、軟骨がすり減って起きるものだ。
発症は女性に多く、徐々に進行する
中高年になると膝の痛みを訴える人が急増するが、その9割以上が変形性膝関節症という報告もある。一方、「二次性」のものは外傷や先天性の疾患が要因となり、股関節のそれに比べると少数派だ。
さらに、発症するのは圧倒的に女性が多い。脚の長さのわりに骨盤の幅が広く、股関節がねじれてО脚・X脚になりやすいのが推測される理由のひとつだ。
中高年以降、骨や筋肉の健康を保つ女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少することも、引き金になると考えられている。
また変形性膝関節症の症状は一気に表れるのでなく、何年にもわたって少しずつ進行していくのも特徴だ。初期には動き始めに鈍い痛みや違和感を感じるが、しばらく動くと自然に治まり、あまり気にならない場合が多い。
だが、やがて正座や階段の上り下りなどの動作で痛みが顕著になり、炎症が進行すると関節の内部に水(=分泌液)が溜まるなどで膝関節の変形が進行し、可動域が制限されていく。
さらに末期になると関節軟骨がほとんどなくなり、骨同士が直接ぶつかる激しい痛みで、歩行すら困難になってしまうのだ。
予防・改善のためにできることは?
不安定になりがちな膝関節に対しては、肥満の予防とともに、周辺の筋力を強化して負担を軽減することが必要。特に股関節まわりを柔軟にすることで、結果的に膝関節の可動域も確保することができる。その方法を解説しよう。
① 大腿四頭筋のストレッチ
前腿にあるこの抗重力筋は、加齢によって加速度的に衰えが進行する。膝の伸展=コンセントリック(等尺性)収縮、屈曲=エキセントリック(伸張性)収縮を行うが、筋が硬くなると骨盤の前傾が起きやすくなるため、反り腰にならないように意識して行うことが重要となる。
② ルーマニアンデッドリフト
股関節を支える大臀筋とハムストリングスを強化。上体を起こす動きでコンセントリック収縮、倒す動きでエキセントリック収縮を繰り返す。負荷を減らしたければ、自体重だけで行ってもいい。これらすべての筋肉が協調しながら、膝関節を安定して支えていることを覚えておこう。
復習クイズ
答え:ジョギング