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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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連載「コンディショニングのひみつ」。第41回は膝関節のコンディショニングについて、スポーツ障害の一種ともいわれる「鵞足炎(がそくえん)」をテーマに、その原因と対策を解説する。
まず“鵞足(がそく)”とは、膝の内側・前面で、膝から5~7cmほど下にある脛骨の内側に位置する部分を指す。
ここには、それぞれ骨盤からつながる細長い3本の筋肉(縫工筋・薄筋・半腱様筋)の腱が脛骨に付着し、その名は見た目がガチョウの足に似ていることに由来するという。
この鵞足、3つの筋肉がまとまって付着するだけあって、構造的に動作の負荷が集中しやすい。
特に膝の屈曲、股関節の内転動作といったオーバーユースによって、骨と軟部組織の間で摩擦を軽減するクッションの役割を担う滑液包に繰り返し負担がかかる。その結果、鵞足の滑液包に炎症が生じてしまうのだ。
鵞足炎を発症する原因として多いのが、ランニングやジャンプ、水泳の平泳ぎなど、膝の曲げ伸ばしを繰り返し行うスポーツ。またアスリート以外においては、高齢者の変形性膝関節症に伴って生じやすい疾患としても知られている。
さらに鵞足炎で特筆すべきは、サッカーやバスケットボールなどのスポーツで、細かな方向転換を頻繁に行う動作が大きな要因になるという点だ。
より具体的に言えば、こうした動作において問題となるのは、爪先に対して膝が内側に入る「ニーイン」という状態が繰り返し起きたとき。足裏が地面にいわばベタッと固定されたままターンして膝が内側にねじれることで、鵞足に大きな負担がかかってしまうのだ。
ニーインを生じやすい構造的な問題としては、以下の2つが挙げられる。まず、爪先と膝にそもそもねじれがある場合。さらに内くるぶしが内側に倒れ込んで土踏まずのアーチがつぶれることで(この状態を「オーバープロネーション」と呼ぶ)、膝が内側に入りやすくなる場合だ。
オーバープロネーションが単純な扁平足と異なるのは、片脚立ちになった瞬間に足裏で支え切れず、アーチが落ちてしまうこと。
幼少期も含め、捻挫を繰り返すなどで足首が不安定になることが原因として多く、オーバープロネーションがある人のほとんどは鵞足炎になりやすい、というリスク要因も覚えておこう。
ターンを頻繁に行うスポーツ競技者の鵞足炎予防トレーニングとして有効なのは、まず立位でのピボットドリル。大きな目的は、爪先と膝の向きを常に揃えたターンの動きをクセづけることだ。
踵を上げ、爪先を軸にして素早く方向転換を行うことで膝下のねじれを防ぎ、これを競技中も実践することが重要となる。
両足を広めに開き、踵を浮かせて爪先と膝を右へ、続いて左へと、リズミカルに方向転換しながら動かす。左右合わせて30回。
続いて行いたいのが、土踏まずから脛の後面に続く後脛骨筋のトレーニング。
片足の先に短めのゴムチューブをかけ、反対側の足を上から交差させてチューブの端を固定。足首を内側に倒してチューブを引っ張り、戻して繰り返す。左右各20回。
後脛骨筋は土踏まずの内側縦アーチを形成する筋肉でもあり、アーチがつぶれて膝が内側に入るのを予防する効果がある。
行う際は下腿をしっかり固定して代償動作によるロスを防ぎ、足首だけを動かすように意識することがポイントだ。
答え:後脛骨筋
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.848・2023年1月4日発売