肩関節が不安定になる「ルーズショルダー」の原因と対策
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第36回は「ルーズショルダーの原因と改善エクササイズ」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.843・2022年10月6日発売
肩関節が不安定になる ルーズショルダー
肩関節は、球状の上腕骨頭が肩甲骨の受け皿(関節窩)におさまる形で構成される。
サイズ感としては上腕骨頭が関節窩の約2倍あり、また他の関節と比べても可動域が広いため、そもそも不安定な関節と言えるが、それを補う働きを担うのが靱帯や関節包といった軟部組織だ。これらが関節の間を取り巻くことで、安定した構造が保たれているのだ。
肩関節の障害のうち、今回のテーマである「ルーズショルダー」は、この部分が損傷や機能低下によって緩くなった状態であり、「肩関節不安定症」とも呼ばれるものだ。
そのほか、肩甲骨と上腕をつなぐ筋肉の腱である腱板や、肩甲骨と肋骨の間にある肩甲胸郭関節の機能が低下することにより、肩関節が不安定になった状態を指す場合もある。
ルーズショルダーの症状と原因
症状として強烈な痛みが出ることは少ないが、肩関節がいわばグラグラした状態なので、日常的にだるさや違和感がつきまとう。また些細な運動や動作がきっかけで関節の一部に負荷がかかり、痛みやうずきを覚えるようになることも。
さらに巻き肩や猫背などの不良姿勢を伴うと肩甲骨の位置がズレて、首や肩の凝りといった他の不調を誘発・悪化させやすいのも問題といえるだろう。
ところでルーズショルダーを発症しやすいのは、実は女性の方が多いといわれている。遺伝的な要因も関与すると見られるが、男性の場合も含め、重いものを持つ、手をつくなど肩に負荷のかかる動作を長期にわたって行うことが原因としては多い。
また野球やテニス、バレーボールなど、肩関節に負荷がかかるスポーツの動作も引き金になる。ちなみに脱臼を繰り返したり、関節の位置がズレて亜脱臼になったりしやすい人の肩関節は、普段からルーズショルダーに近い状態ともいえるだろう。
まずはローテーターカフの強化を
このように弱くなった肩関節の組織を治療する手段は、基本的には手術によるほかない。しかし、それとて周辺の筋肉が弱化していれば再発の可能性が高く、万能ではないといえる。そのため、改善策としてもっとも効果的とされるのが運動療法だ。
ただしルーズショルダーの症状は、関節窩に上腕骨頭を押し付けて安定させる肩関節のインナーマッスルであるローテーターカフ(回旋筋腱板)の働きが弱化することで顕著に表れる。
この状態で外側のアウターを鍛えるトレーニングを行っても、関節を支点としたテコの原理に基づくバランスが崩れて肩関節への負担が増え、症状が余計に悪化しかねない。
そこで紹介するエクササイズ①では、まず肩関節を内旋・外旋させてローテーターカフを全体的に動かし、その動きをカラダに覚え込ませる。
さらにエクササイズ②においては、体重による負荷をかけた状態でローテーターカフを強化し、肩甲骨と上腕骨のつなぎ目を安定させるのが狙いだ。
インナーのローテーターカフが機能することで、アウターの筋群も効率よく働く。肩のスムーズな関節運動には、こうした連動性が不可欠であることを覚えておこう。
復習クイズ
答え:ローテーターカフ