肩関節周辺の炎症「四十肩・五十肩」は2段階プロセスで改善
連載「コンディショニングのひみつ」。第34回は「四十肩・五十肩」について。改善を目指すには、アウターの緊張を緩め、インナーには適度な刺激を与える2段階のプロセスが有効だ。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.841・2022年9月8日発売
四十肩・五十肩はなぜ起こる?
今回からは、肩関節とその周辺に起きる障害を5回にわたって紹介していこう。初回は、普段から耳にすることが多い「四十肩・五十肩」について。実はこれら2つは名称だけの違いで、また正式な病名というわけでもない。中高年に多い肩関節周辺の炎症を指す、いわゆる俗称である。
肩を上げる、腕を水平に保つ、また背中に手を回すといった動作が困難となり、激痛を伴う場合もある。痛む箇所は肩の前上あたりが多いが、それも個々で異なり、発生部位は特定しづらいのが実際のところだ。
そこで役立つのが、コンディショニング的な視点から見た原因へのアプローチ。肩関節のこうした加齢現象は、頭部や首・肩、胸まわりのアウターマッスル、筋膜、さらに皮膚や脂肪組織なども含む表層部が過度に緊張し、張りが強くなることが引き金となる。
その結果、肩関節のインナーマッスル(総称してローテーターカフと呼ばれる)がスムーズに動かず、肩が上がりにくくなるといった現象が起きるのだ。
そもそも肩関節は、上腕骨頭が肩甲骨にはまり、滑らかな球運動をすることで多方向への動きを繰り出している。ところが前述のような加齢現象によって動きにひっかかりが生じることで、やがて特定部位の炎症へとつながるというわけだ。
改善を目指すには、アウターの緊張を緩め、インナーには適度な刺激を与える2段階のプロセスが有効だ。以下に解説していこう。
① アウターのリラクセーション
腰痛対策のコンディショニングでもたびたび推奨してきた円柱形のツール《ストレッチポール®》が、ここでも効果を発揮する。とはいえ、仰向けになって深く呼吸をするだけ、と方法はいたって簡単だ。
頭部や首、肩まわりが重力から解放され、普段から頑張りすぎて緊張を強いられたアウターマッスルを、効果的に緩めることができる。
自分に鞭打ってエクササイズをする必要もなく、何よりそのリラックス感が気持ちいい。朝晩、そのほかにも疲れやストレスを感じたときなど、いつでも気軽な習慣にしよう。続けるうちに周辺組織が本来あるべき状態に戻り、肩関節の滑らかな動きを取り戻せるようになる。
② インナーの活性化
肩関節の内旋・外旋運動を行うことで、ローテーターカフを活性化する。コツは、肩から肘を垂直に保ち、肘を支点として動かすこと。痛みを感じるところがあれば、そこが弱いポイントでもある。
ただし症状の緩和においては、痛みのない範囲から始めるのが基本となるため、無理に動かそうとせず、痛みの手前で止めておくこと。続けるうちに徐々に動かせる範囲が広がり、動き自体もやりやすく、スムーズになるはずだ。
これら2段階のコンディショニングで、肩関節周辺の過緊張が取れ、やがてその可動域も取り戻せる。肩に違和感を感じたときの予防としても、ぜひ早くから実践しておきたい。
復習クイズ
答え:鎖骨