膝を酷使するスポーツで発症しやすい「膝蓋軟骨軟化症」
連載「コンディショニングのひみつ」。第40回は膝を酷使することで膝蓋骨の軟骨がすり減る「膝蓋軟骨軟化症」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.847・2022年12月15日発売
「膝蓋軟骨軟化症」とは?
膝関節は、大腿骨、脛骨、膝蓋骨(膝のお皿)という3つの骨で構成される。関節の動きは単純な曲げ伸ばし(屈曲・伸展)が基本となる、代表的な蝶番関節だといえる。
膝から下の脛骨はわずかに内外旋するものの、骨の配列は構築的に弱い。そのため、周囲の筋肉や靱帯のサポートによって支持することが必要だ。
今回のテーマ「膝蓋軟骨軟化症」は、体重による負荷や外部からの衝撃によって膝関節を構成する膝蓋骨と大腿骨がこすれ合い、その摩擦によって軟骨がすり減るもの。
具体的には、膝蓋骨の後面にある硝子軟骨で覆われた大腿骨との関節面が柔らかくなって傷つき、変形が生じる障害のことをいう。
膝を酷使するスポーツで発症しやすい
原因の多くは“膝の使いすぎ”によるもの。膝を酷使するスポーツなどで発症しやすく、ランニングやジャンプ動作の繰り返しなどで膝蓋軟骨に大きな負担がかかる。スポーツ障害の一種で、いわゆる「ランナー膝」のひとつとも考えられている。
例えば階段を上るとき、膝蓋骨と大腿骨の間に加わる力は平地歩行の約7倍ともいわれる。しかも膝蓋軟骨は関節軟骨のなかで最も厚く、激しい摩擦が加わりやすい。
膝の曲げ伸ばしで膝蓋骨は大腿骨の下端の関節面を上下に動き、効率よく膝を動かしたり、筋肉の力を伝える滑車のような役割を担う。しかし、その際に膝蓋骨が上下にズレるように動くことで、摩擦や圧迫が生じるのだ。
症状は階段での痛みや、膝関節のきしみ音
症状としては、階段の上り下りや正座から立ち上がるときの瞬間的な痛み、膝蓋骨の圧痛、膝が崩れたり、膝蓋骨の後面がジョリジョリして、きしみ音が鳴るなど。
通常であれば滑らかに関節面を稼働できる軟骨組織だが、太腿の前面にある大腿四頭筋が筋力不足になったり、また関節面の柔軟性が低下したりして、こうした症状が表れるのだ。
また、特に若年層の女性に多く発症する疾患でもあり、О脚、X脚のような膝関節の変形も、負荷が均等に分散せずに局所的なストレスが痛みの原因になるとも考えられる。
予防・改善のためにできることは?
改善策としては、膝周囲の筋肉、特に太腿前側の大腿四頭筋をゆるめて柔軟に保つこと。大腿四頭筋には膝蓋骨が埋もれたような形状を持つため、大腿骨に膝蓋骨を押し付けるような状態を改善することが先決だ。
運動前のウォームアップやトレーニング後のケアはもちろん、それ以外でも日常的なケアが必要とされる。その際に役立つのが、筋膜フォームローラーだ。
太腿の前側と両側の側面を、筋の起始・停止、さらに中央の筋腹にもまんべんなく当たるように、30秒~1分ほどコロコロと転がす。体重をかけてゴリゴリすると逆に痛める可能性もあるため、イタ気持ちいい程度を目安にしよう。
下で紹介するランジも、股関節と足首・膝の連動性を高め、前腿の大腿直筋や股関節の腸腰筋をストレッチするのに有効だ。
ヒップリフトは、後ろ側の臀筋群を使うことで、前腿がゆるみやすい状態をつくる。尻はしっかり締めるように意識しよう。
予防・改善エクササイズ①|ランジ
両足は肩幅で片足を大きく前に出し、上体はまっすぐのまま真下にしゃがみ込む。尻を締め、前膝は爪先より前に出さないこと。元に戻り、両足交互に30秒~1分。
予防・改善エクササイズ②|ヒップリフト
仰向けで手のひらは上に向け、両膝を90度に曲げて胸から一直線に。足首を曲げたまま片脚を上げて下ろし、左右セットで15回。
復習クイズ
答え:腓骨