筋肉痛にならないと意味がない?「筋トレ・運動」の勘違い part1
筋トレの効果を高めるためには、なるべくたくさん高負荷でやらないと!と意気込んでいるあなた。なんとなくの固定概念やマイルールが実は健康リスクを高めたり、効果を半減させている可能性が。トレーニングの勘違いを正して、健康的で効率的なカラダづくりを目指そう。
取材・文/黒田創 撮影/小川朋央(記事内)、AdobeStock(TOP画像) スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/音成健 取材協力/澤木一貴(SAWAKI GYM)、門間陽樹(東北大学大学院医学系研究科運動学分野講師)
初出『Tarzan』No.842・2022年9月22日発売
目次
勘違い① 筋トレはすればするほどいい
正:週130分以上の筋トレは死亡リスクを上げる
隙間時間を見つけたら、迷うことなくひたすら筋トレ! そんなあなたに賛辞を送りたい。でもその習慣、死亡リスクを高める可能性も…!?
「私どもの研究グループが、これまで公表されている研究結果を網羅的に収集および分析した結果、筋トレを行う時間が週130~140分以上になると、総死亡、心血管疾患、がんについてのリスクが、筋トレを行わない場合よりも上昇する傾向にあると分かりました」(東北大学大学院・門間陽樹先生)
『ターザン』読者には週に140分ぐらいは平気で筋トレしている人が少なくないはず。衝撃的な事実である。
「決して筋トレが悪いわけではなく、時間が週30~60分であれば総死亡、心血管疾患、がんのリスクが最も低くなり、週130~140分までは低い値を示すことも判明しました。これから世界的により詳細な研究が進められますが、筋トレのやりすぎで長期的な健康が損なわれる可能性には注意が必要かもしれません」
更なる研究が待たれるところだが、毎日ハードに追い込んでいる人は少し考えてみてもいいかもしれない。
勘違い② 負荷をかけないと筋肥大しない
正:低強度でも同等の効果は得られる
特に初心者こそ、張り切って高負荷のトレーニングに励みがち。無理にカラダを動かして、ケガをすることにもなりかねない。
「筋トレの原則は、あくまで個人に合った負荷をかけ、正しいフォームで鍛えること。そうでないと筋肉は効率的に成長しません。トレーニングの過程で重量が増えることはありますが、最初からやたらと重いウェイトを持つ必要などまったくありません。もちろん、重い負荷をかけなくてもちゃんと筋肥大できますよ」(トレーナーの澤木一貴さん)
ウェイトの重さにこだわるのはナンセンス。そんな情報は無視して、自分のできることをやろう。
勘違い③ ランニング前は準備運動不要
正:カラダが冷えた状態で走るのはNG
「これから走るんだし、ランの前に準備運動しても意味なくない?」。今日からその考えは改めよう。
「時間をかけてランニングと同じ速度でアップするのは非効率ですが、何もしないのはNG。ケガしやすい部位があればそこを重点的にストレッチして血流を促したいですし、特にこれからの寒い時期であれば、短い距離をダッシュしてカラダを温め、かつ、気になる部位はAIS(詳しくはこちらの記事:安全&効果的。いいとこ取りストレッチ 「AIS」って?)を行うなど、短い時間で効率的に温めましょう。
公園などで走る場合は、家からウェアを着込んで筋温をキープするのも大事。最近は部位ごとに選べるウォームウェアなどを着用するアスリートが多いですよ」(澤木さん)
勘違い④ 筋トレの回数は10回×3セットが定番
正:初心者は軽い負荷の15回×2セットでいい
筋トレの定番といえば「10回×3セット」。でも、必ずこの回数を守る必要はない、と澤木さん。
「特に初心者の方は、負荷を軽くして15、または20回×2セットでOK。負荷が少ない分回数を多くして、同じ動作を何度も反復することで、初心者でも正しい動作が早く習得できる。これがポイントです」
定番の10回×3セットというのは、あくまで「10回はできる」または「10回上げられるウェイト」が原則。例えばウェイトの場合、それなりの重さがあると力んでしまったり、フォームが崩れて正しい負荷をかけられないことがある。ならば、負荷を軽くして、正しいフォームで15回×2セット行う方が効率的だ。
勘違い⑤ 運動すると脂肪は筋肉に変わる
正:変わらない。脂肪が減って筋肉がつく
これも昔からよくいわれている説。澤木さんはキッパリ否定する。
「そもそも脂肪と筋肉はまったく別の組織なので、脂肪が筋肉に変わることは絶対にあり得ません。運動するとそのエネルギー源として脂肪が使われて減少する。一方の筋肉は運動によって動かされるため、成長ホルモンが分泌されて肥大化する。これが正しいメカニズムです」
同じように、筋肉が脂肪に変わることもない。もしあなたが「最近運動していないから筋肉が脂肪に変わっちゃったな」と感じたとしたら、それは不摂生によって使わない筋肉が衰え、同時にカラダの代謝が落ちたために脂肪がつきやすくなっただけのこと。勘違いしないように。
勘違い⑥ 筋肉痛にならないと意味がない
正:トレーニング次第では筋肉痛が起きない場合も
「筋肉痛を感じると鍛えている実感が湧くんだよね」。トレーニーがしたり顔で言いそうなセリフだ。
「筋肥大を起こす要因に物理的ストレスと化学的ストレスがあります。前者は普通の筋トレで起こるもの。負荷をかけて筋線維を壊した際に発生するもので、筋肉痛が起きやすい。
一方、後者は筋肉が長期的に力を出し続け、乳酸などを蓄積させた際に発生する。スロートレーニングや加圧トレーニングなどが該当しますが、化学的ストレスは慣れると筋肉痛にならない特徴も。けれどちゃんと筋肉は発達しますよ」(澤木さん)
要は鍛え方次第で筋肉痛のあるなしは変わるということ。痛みなしでも筋肉は成長しているのでご安心を。