コーヒーは1日に何杯まで?「食事・栄養」の勘違い part2
抜け毛予防には海藻、イライラしたらカルシウム…。食にまつわる健康の定説があるが、栄養の研究が進んだ今、数々の事実がわかってきている。いつまでも健康でいるためにも健康常識をアップデートしよう。
取材・文/松岡真子 撮影/石原敦志(記事内)、AdobeStock(TOP画像) スタイリスト/矢口紀子 取材協力/大塚亮(おおつか医院院長)、望月理恵子(管理栄養士)、佐藤成美(サイエンスライター)
初出『Tarzan』No.842・2022年9月22日発売
勘違い① ビタミンCは摂れるだけ摂るべき
正:過剰摂取は危険を招くことも
「尿とともに排出される水溶性のため大量に摂っても支障はない、という定説が覆されつつあります」(サイエンスライター・佐藤成美さん)
合成できないから補充したいが。
「『日本人の食事摂取基準2020年版』によると成人の1日の推奨量は100mgです。過剰摂取は、下痢や吐き気、腹痛の原因に。
海外ではがん治療の妨げになる報告も。高濃度のサプリメントもあるので注意が必要です。なるべく果物などの食事から摂るようにしましょう」
勘違い② 抜け毛予防には海藻がいい
正:タンパク質が健康な頭皮を作る
丈夫な髪を育てるためにワカメをいっぱい食べても意味がない!?
「毛母細胞で生まれた髪は頭皮内で成長するため、土台である頭皮の健康状態が重要。毛の主成分であるケラチンはタンパク質なので、卵、魚、肉は積極的に口にしましょう。
血流をよくするビタミンE、頭皮の潤いを守って新陳代謝をアップさせるビタミンA、弾力をもたらすビタミンCも摂取を」(管理栄養士・望月理恵子さん)
頭皮の若さを保つにはポリフェノール。また、髪の成長を妨げる有害物質を排出するには解毒がマスト。
「パプリカ、ニンジン、トマト、サツマイモ、ブロッコリーなど色の濃い野菜や、デトックス作用の強いニンニク、タマネギがおすすめです」
勘違い③ 自然派ワインはカラダに優しい
正:品質にバラつきがあるため、ヘルシーだという科学的根拠はない
一般的な自然派ワインは有機栽培のブドウを自然酵母で発酵させたものだが、生産国によってはそうとも限らない。
各国でオーガニック認証機関は存在するが、厳密な定義はない。亜硫酸塩の添加など造り手に委ねている部分が多く品質はマチマチ。
「亜硫酸塩は古くから用いられており、ワインの酸化や有害微生物の増殖を抑える効果があります。添加をせずにおいしい一杯を生み出すのは至難のワザなのです」(佐藤さん)
醸造家のポリシーやブドウが持つ個性をほどほどに楽しむのが一番だ。
勘違い④ コーヒーは1日に何杯飲んでもいい
正 :5杯以上飲んでいるとカフェイン中毒に陥るケースも
心血管疾患リスクを下げるなど、何かとカラダによいとされるコーヒー。目覚めの一杯を皮切りに、デスクにはマグカップを常備。そして食後の眠気を払うために注入。一日をコーヒーとともに過ごしても大丈夫。
「カフェイン量が最大で400mgまでであればOK。カップに換算すると3~4杯になります。昼間は集中力とパフォーマンスアップのサポーターですが、夜に飲むと睡眠障害の原因となるので控えて。
カフェインは中毒性が高くもあるので、5杯目に手が伸びそうになったら、注意!ちなみに、エナジードリンクはカフェインを多く含みます。併用する場合は1日の摂取量を調整しましょう」(おおつか医院・大塚亮先生)
勘違い⑤ イライラしたらカルシウムを補給
正:むしろストレスで消耗するビタミンCを補給
「ムシャクシャするたびカルシウムが失われるなら、その人の骨は既にスカスカです。でもカラダはそこまでヤワじゃない」(望月さん)
いら立ちとは無関係だった。
「ストレスを感じると血中のカルシウムが脳に運ばれて興奮を抑えます。情緒の安定に欠かせない成分ですね。血中で足りなくなった分は骨に貯蔵しているカルシウムで補いますが、大量に骨から流れ出るわけではないので枯渇はしません。
一方、ビタミンCはこのとき減少してしまいます。カルシウムの働きを助け、ストレスに対抗するコルチゾールの合成も促すビタミンCを適度に補給しておくのが大切。イライラの予防の助けにはなるかもしれません」