3つの“発酵速度”に着目した、理想の食物繊維メニュー
食物繊維は充分量確保することが第一優先。それができたら、上級者がトライしたいのが食物繊維の発酵速度を利用して、理想の朝食&夕食メニュー作り。これで一日24時間の腸内環境コントロールはバッチリだ。
取材・文/石飛カノ 撮影/吉松伸太郎 取材協力/青江誠一郎(大妻女子大学家政学部食物学科教授)、河村玲子
初出『Tarzan』No.840・2022年8月25日発売
発酵速度を活用した理想の食物繊維メニューを知ろう
腸内細菌のエサとなる発酵性食物繊維は、一律に同じ場所でエサとなるわけではない(詳しくはこちらの記事:腸活まずはここから。知るべき「食物繊維と腸」の関係8つ)。なにせ大腸の長さはおおよそ1.5m。そのあちこちに腸内細菌のお花畑は散在している。
大腸は部位によって酸素の分圧が異なる。酸素に強い乳酸菌は酸素分圧が比較的高い腸の入り口付近に、酸素に弱いビフィズス菌は酸素分圧が低い奥まった場所に棲んでいる。
こうした棲み処の違う腸内細菌にまんべんなくエサを与えることが、腸内環境を整える最上策と言えるのだ。というわけで、発酵速度が異なる食物繊維を3つ組み合わせ1回の食事を組み立てよう。
糖の鎖が短いオリゴ糖やイヌリンは、食べてから4〜6時間で発酵するので腸の入り口付近でエサになる。
より鎖が長いβ―グルカンやペクチンは、発酵に8〜10時間かかるので腸の真ん中あたりまで運ばれる。
さらに鎖の長いレジスタントスターチやアラビノキシランは、16時間程度かけて発酵するため、腸の最奥まで届けられる。
3つの食物繊維を含む食事を摂るベストなタイミングは朝。食物繊維リッチな朝食を摂ると、その日の夜まで大腸内での発酵は続く。おまけに昼食で血糖値が上がりにくいというセカンドミール効果も期待できる。
理想を言えば、同様に3つの食物繊維を含む夕食を摂れば一日24時間発酵は続く。常時有用菌を元気に維持し、さらに短鎖脂肪酸などの生成を促すことができるということ。いわば究極のこの食物繊維レシピ、次の週末にでもぜひ試してみてほしい。
朝食に…押し麦と発芽玄米の味噌雑炊
材料
- 発芽玄米と押し麦のごはん130g
- ゴボウ1/4本
- 青ネギ2本
- 鶏挽き肉50g
- 味噌大さじ1
- おろし生姜小さじ1/4
- A〔無調整豆乳50g、水50ml〕
- 好みでブラックペッパー、オリーブオイル
作り方
- ゴボウはよく洗い、ピーラーで皮ごとささがきにする。水に晒してアク抜きする。青ネギは小口切りにする。
- 熱したフライパンに、鶏挽き肉とおろし生姜を入れて炒める。
- 水気を切った1のゴボウと味噌を入れてしんなりするまで炒める。
- Aを加えて煮立ったら、発芽玄米と押し麦ごはん、青ネギを加え、さっと和える。
- 皿に盛り付け、ブラックペッパー、オリーブオイルを好みでかける。
発酵場所
- ゴボウのイヌリンが入り口で発酵
- 押し麦のβ-グルカンが中ほどで発酵
- 発芽玄米のアラビノキシランが奥で発酵
夕食に…大豆とブロッコリー入りの全粒粉パスタ
材料
- 全粒粉パスタ80g
- 鯖水煮缶1缶
- 蒸し大豆(水煮でも)30g
- ブロッコリー(冷凍)5房
- ミニトマト5個
- ニンニク1/2片
- バジル適量
- レモン(櫛切り)1切れ
- オリーブ油小さじ2
- ハーブソルト適量
作り方
- ニンニクはみじん切りにし、ブロッコリーは解凍する。ミニトマトは半分に切る。
- 全粒粉のパスタは表示通りに茹でる。
- 熱したフライパンにオリーブ油、1のニンニクを入れ、弱火で香りが出るまで炒める。
- 3にミニトマト、蒸し大豆を加えて炒めたら、鯖缶を汁ごと加える。
- 4に茹で上がったパスタ、ブロッコリーを加えて炒め合わせる。
- 火を止める直前にバジルをちぎり入れ、ハーブソルトで味を調える。火を止め、皿に盛り付けたらレモンを添える。
発酵場所
- 茹で大豆のオリゴ糖が入り口で発酵
- ブロッコリーのペクチンが中ほどで発酵
- 全粒粉パスタのアラビノキシランが奥で発酵