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古武術がヒント! 日常動作を楽にするエクササイズ

古武術がヒント! 疲れないカラダの使い方

「古武術」には日本人のカラダに合った、古くから伝わる合理的かつ楽なカラダの使い方のヒントが詰まっている。そこで、今回は基本となる効率的な身体操作を学びつつ、今の自分のカラダの状態を確認していこう。

古武術がヒント! 疲れないカラダの使い方 監修者 岡田慎一郎さん岡田慎一郎さん

教えてくれた人

おかだ・しんいちろう 1972年生まれ。理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。古武術の身体運用を元にした「古武術介護」を提唱し、講演や執筆活動などを行う。

股関節をしっかり曲げて下半身を大きく使おう

最初に行うのはしゃがんだ状態で“草むしり歩き”ができるかどうかのチェック。股関節の基本的な可動域と使いこなし方が問われる動きだ。

股関節は下半身の動きの基点

股関節は下半身の動きの基点 股関節のイラスト

股関節は下半身の最重要部位で、しっかり機能すれば全方位に脚を動かすことが可能。カラダの屈曲、伸展にも大きく関わる。

「現代は椅子に座る生活に慣れ切ってしまい、股関節を90度以上曲げられない人が増えています。昔の日本は和式便所や雑巾がけといった和の生活様式において“しゃがむ”場面が多く、股関節を存分に使いこなし、全身の動きを引き出していました。

まずはきちんとしゃがめること。かつそのまま歩けるかどうか確認してみましょう」(岡田慎一郎さん)

しゃがむのはできても、歩く動作は結構難しい、と岡田さん。スムーズにこなせる人は股関節の可動域が広く、下半身の筋肉をきちんと使うことができるため、カラダにかかる負荷が軽く、結果的にさまざまな日常動作が楽になる。

うまくできなくても、しゃがむ練習から定期的に挑戦を。草むしり歩き自体が股関節のトレーニングになる。

ちゃんとしゃがんで“草むしり歩き”ができますか?

ステップ①

古武術がヒント 疲れないカラダの使い方 ちゃんとしゃがんで“草むしり歩き”ができますか?

足を肩幅程度に広げ、爪先と膝を股関節から開きながら腰をしっかり落とす。安定してしゃがむためには、股関節の可動域が120度~130度は必要となる。難しい場合、後ろに台を置き座ってみる。

ステップ②

古武術がヒント 疲れないカラダの使い方 ちゃんとしゃがんで“草むしり歩き”ができますか?

しゃがんだままの体勢で片足を踏み出し、前に進む。このとき膝ではなく股関節を使って膝を交互に倒し、膝が地面につく直前に反対の膝を立てる要領で進む。脚全体が使われることを意識する。

ステップ③

古武術がヒント 疲れないカラダの使い方 ちゃんとしゃがんで“草むしり歩き”ができますか?

しゃがんだ状態から、カラダを回転させて後ろに進んだり、左右に動いたりしてみよう。繰り返すうちに、股関節から膝を倒す動きがスムーズになってきたら、全身が連動してきた証拠。

NG ①

古武術がヒント 疲れないカラダの使い方 ちゃんとしゃがんで“草むしり歩き”ができますか?

股関節が動かしにくいので腰が高く、しゃがめない。そのため構え方も不安定で、脚力に頼った動作になりやすい。

NG ②

古武術がヒント 疲れないカラダの使い方 ちゃんとしゃがんで“草むしり歩き”ができますか?

膝の曲げ伸ばしだけで進むと太腿の前側ばかりに負荷がかかる。股関節を使ってしなやかに歩けるのが理想。

肩甲骨と背中、腕を連動させよう

「日常的にスマホやパソコンを使い、仕事も生活もあらゆる物事を手先だけで済ませる機会の多い現代人は、肩甲骨背中の筋肉が使えていないフシがあります」(岡田さん)

肩甲骨の位置関係

肩甲骨の位置関係 骨格 イラスト

肩甲骨は背中の上の左右にあり、腕と鎖骨を繫ぐ役割を持つ。肩や背中の筋肉とも繫がっており、腕や背中との連動性が高い。

手先や腕ばかりに頼る生活を続けると、手首や肘、肩などに負担がかかってしまうが、肩甲骨や背中を連動して動かせれば、腕は大きく楽に使うことができ、普段のちょっとした動作が俄然、楽になる。

日本伝統の古武術における武士の抜刀なども同様。腕だけで刀を取り扱うのと、肩甲骨や背中を使って腕を相手に突きつけるのでは稼働域がまったく異なってくるのだ。

ここでは肘回しによる腕と肩甲骨、背中の連動性チェックを行う。

両手を組んで肘を回せますか?

ステップ①

両手を組んで肘を回せますか? チェック イラスト

まっすぐ立ち、肩の正面に腕を伸ばして手を組む。このとき肘は真横を向き、左右の肩甲骨が広がった状態であることをチェック。

ステップ②

両手を組んで肘を回せますか? チェック イラスト

の姿勢から、左右の肘を外側に向けてクルッと回す。このとき肘は下を向くが、左右の肩甲骨が内側に寄っていれば腕と肩甲骨がしっかり連動している証拠。うまくできなければ下のエクササイズへ。

できなかった人は下のエクササイズで肘回しとあわせて肩甲骨を動かすイメージを摑もう。肩甲骨を使い、背中から腕を動かす感覚を磨いてほしい。

肩甲骨エクササイズ

ステップ①

肩甲骨エクササイズのやり方

胸の前で手を組んで肘を軽く曲げ、お腹を引っ込めて背中を丸める。続けて股関節と膝を軽く曲げていき、顔を下に向けると左右の肩甲骨が広がっていくのを感じる。このとき肘は横を向いているはず。

ステップ②

肩甲骨エクササイズのやり方

①の姿勢から、股関節と膝、腕を徐々に伸ばし、しっかり胸を張り、顔を上げていく。すると開いていた肩甲骨は寄っていき、肘は下を向く。①と②を繰り返して肘の向きと肩甲骨の開閉の感覚を摑もう。

正しい前傾姿勢を意識しよう

日常動作で最も腰を痛めやすいのは中腰で前傾した姿勢といわれている。何も意識せずに曲げるとつい腹から曲げてしまうが、これが腰に負荷を集中させるのだ。

股関節と骨盤、腰骨の位置関係

前傾姿勢の際、股関節を曲げても骨盤や腰骨は反らしたり丸めたりしないのが、腰に負担をかけずに上肢と下肢を繫ぐ鍵。

荷物運び、赤ん坊の抱っこ、ダンベルを持ったとき…。何気なく前傾姿勢をとって、アイタタタ! これ、結構怖い。

「前傾姿勢はあらゆる動作の初動の基本です。昔の武士が正座の状態から素早く抜刀した動きは、正座からの礼がベースになっています。つまり正確な前傾動作を日常の中で育んでいたのです。現代社会においてもその重要性は変わらず、正確なカラダの使い方で姿勢を作れば、その後のアクションはスムーズになり、カラダも楽に動かせます」(岡田さん)

前傾姿勢を正確に行うためのポイントは、必ず股関節から曲げ、骨盤と腰骨はまっすぐの状態を保つこと。ここではそのためのチェック方法と、勘違いしやすいNG動作、そして楽に前傾姿勢をとるための実践的日常動作を紹介する。

股関節を曲げて前傾姿勢がとれますか?

正しい前傾姿勢

股関節を曲げて前傾姿勢がとれますか?

まっすぐ立ち、足を肩幅に開いて両手を脚の付け根に。手が腹と太腿に挟まれるよう意識しながら股関節を曲げ、カラダを前傾。同時に膝も曲げていき、骨盤と腰骨はまっすぐ。これが正確な前傾姿勢だ。

NG

股関節を曲げて前傾姿勢がとれますか?

前傾姿勢のつもりでも、これではただお腹と背中を丸めただけ。この姿勢のままいろんな動作を行うと、腰ばかりに負担がかかってしまう。お腹に1~2本横線が入っている人は普段腹と腰を曲げて前傾姿勢をとっている可能性大。腰痛防止のためにも、股関節から曲げる癖をつけよう。

日常動作でラクを実感

床の物を拾う時の正しい前傾姿勢

古武術がヒント 疲れないカラダの使い方

NG

古武術がヒント 疲れないカラダの使い方 NG 姿勢

床の物を拾おうとするときは、爪先と膝を広げながら、股関節が緩んだ状態で骨盤から上体を前傾させるようにする。すると、腰に負担がかからず、上半身と下半身が連動し、全身が使いやすくなる。

立ち姿勢から脚を揃えた状態で拾おうとすると、腰と腹を曲げた前傾姿勢になるので×。腰に負荷がかかるし、全身を使いこなしにくくなる。日常で頻出の前傾姿勢。股関節から曲げる意識で、腰痛、疲労感とサヨナラしよう。

取材・文/黒田 創 撮影/安田光優 イラストレーション/村林タカノブ 監修/岡田慎一郎(理学療法士、介護福祉士)

初出『Tarzan』No.831・2022年4月7日発売

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