新常識:ベジファーストより、カーボラスト|血糖値コントロールの8ルール ④
さまざま病気のリスクとなる「食後高血糖」を回避するために、血糖値コントロールの基本的なルールを会得しよう。キーワードは北里研究所病院の山田悟先生が提唱する「ロカボ®」。緩やかな糖質制限で健康的に続けられる食事法だ。今回は8つのルールのうちの④、「食事の食べ順」について。
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子(モデル) 料理製作・スタイリング・栄養監修/田村つぼみ 取材協力/山田悟(北里大学北里研究所病院糖尿病センター長)
初出『Tarzan』No.822・2021年11月11日発売
食べ順はファーストよりラストが重要
食べ順的にはベジファーストがいいらしい。野菜に含まれる食物繊維が血糖値の上昇を緩やかにしてくれるという。これは「野菜→白米」の順番で食べたグループが「白米→野菜」の順番で食べたグループより血糖値が上がらなかったという実験から導き出された説。
じゃあ野菜さえ先に食べておけばオッケーってことね、と多くの人がベジファーストを実践した。でも、これ実験の一面だけが強調された話。その後、行われた別の実験がある。
- パン→鶏肉のグリルと野菜
- 鶏肉のグリルと野菜→パン
- 鶏肉のグリルと野菜のサンドイッチ
上記の3パターンの食べ方を比較したところ、2のパンを最後に食べた場合が血糖値の上昇が最も緩やかだったという結果になった。
この実験では野菜の食べ順云々には言及していない。つまり、これまでの実験ではっきりしていることは、必ずしもベジファーストが重要なのではなく、カーボラストが重要ということなのだ。
カーボラストは血糖値上昇を抑える
目の前に定食があるとしよう。なにも野菜からでなくてもいい。おかずと汁をすべて完食してから少量のごはんをいただくべし。ごはんを減らしてもらう代わり、小鉢1品追加して満腹感を得ることを忘れずに。
スローな食事でホルモンを有効利用
食事をして消化管に栄養素が流れ込むと、血糖値を低下させるインスリン分泌を促すホルモンが作用する。代表的なものに小腸から分泌されるGLP-1、GIPといったホルモンがあり、これらの総称をインクレチンという。インクレチンがきっちり働いてくれれば、食後高血糖のリスクを軽減できるというわけ。
実は前の項で紹介した実験は10分かけてパンまたはおかずを食べ、10分の休憩を挟んで、その後10分でおかずまたはパンを食べるというタイムスケジュールで行われた。
いきなりパンを口にした場合、インクレチンの分泌が間に合わず、血糖値が急上昇。一方、おかずを口にしてから20分後にパンを口にした場合はインクレチンが働いて血糖値の上昇が緩やかになったと考えられる。そう、定食を食べ始めてからごはんに至るまでは最低でも20分かける必要があるのだ。
炭水化物は食事開始から20分後に
ちなみに、同じ消化管ホルモンでも胃から分泌され食欲増進を促すグレリンというホルモンは、カーボラストで最も食後の分泌が抑制されている。つまり満腹感が長続き。
カーボラストは満腹感も維持できる
いずれにしてもワシワシ一気食いはNG。食事はスペイン人のごとくゆったりと。