膝痛のリスクを高める「X脚」の原因と対策
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第11回は「X脚の原因と対策」について。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.818・2021年9月9日発売
X脚のチェック方法は?
O脚に続き(O脚はこちらの記事で解説:O脚=ガニ股の改善方法は?)、今回も下腿のアライメントについて考えたい。テーマは、膝が正常位置よりも内側に入る(これを膝の外反という)「X脚」。
チェック方法は、膝蓋骨を正面に向けた状態で立ち、両膝をくっつける。このとき、左右の内くるぶし(足関節内果部)の距離がおよそ3cm以上離れている場合はX脚と判断される。内くるぶし間の距離が1.5〜3cm以内の場合は、X脚の予備軍だ。
膝が内側に入った状態で歩行、ランニング、ジャンプといった動作を繰り返し行うと、膝関節の外側には圧着ストレスがかかり、内側には離開ストレスがかかり痛みが生じる。
体重が1kg増えると膝には約3倍の負荷がかかるといわれているため、膝痛を悪化させないためには体重のコントロールも必要だ。X脚を放置すると、このように膝痛のリスクを高めたり、外反拇趾や腸脛靱帯炎などを誘発したりするケースがある。
X脚はどうして起こる?
X脚の原因は、生理的な変形と病的な変形の大きく2つに分類される。一般的に2歳までの子どもは軽いO脚であり、3歳を過ぎると徐々に外反しX脚傾向となる。このような生理的な変化は左右対称であるのが特徴であり、痛みなどの症状はない。
一方、靱帯の異常や怪我による変形といった病的な外反膝は、片側のみ変形することが多い。左右それぞれで片脚立ちをして膝を曲げた際に膝が内側に入り痛みが出るようであれば、医療機関で一度診てもらうのがいいだろう。
身近な例でいうと、不良姿勢や筋力低下もX脚の原因の一つ。X脚を招く不良姿勢でもっとも多いのが、腹筋群の筋力不足による骨盤前傾だ。骨盤が前に倒れると、大腿骨が内向きになり膝が外反しやすい。
これに伴い、大臀筋やハムストリングスの筋肉が弱くなり、反対に、太腿の外側にあたる大腿筋膜張筋、内側にあたる内転筋群が硬くなる。
姿勢が原因のX脚は骨に影響がないため、硬くなった筋肉を緩め、弱化した筋肉を鍛えれば矯正することは十分可能である。下のエクササイズとあわせて腹筋群を鍛えるエクササイズを取り入れ、骨盤のポジションをニュートラルに整えることも心がけよう。
エクササイズ例
膝下が外側に弯曲するXO脚とは?
2回にわたりX脚とO脚のコンディショニングについて考えてきたが、ここでは、2つのアライメントが組み合わさった「XO脚」についても触れておきたい。
XO脚とは、両足を揃えて直立したときに、太腿、膝、内くるぶしはくっつき、左右のふくらはぎだけが離れている状態を指す。医学用語はないが、膝から上がX、膝から下がO脚傾向であるため、XO脚と呼ばれる。
XO脚は脛の骨が外側に変形している可能性があるため、一度医療機関で調べてもらうのが望ましい。骨に異常がなければ、X脚同様、弱化した大臀筋やハムストリングスはトレーニングで筋肉をつけ、ふくらはぎと太腿の外側の筋肉は柔軟性を取り戻そう。
復習クイズ
答え:約3倍